米カリフォルニア大学バークレー校の生体工学の研究者らが、昆虫の複眼をモデルにした人工複眼を開発した。将来、この技術を用いた魚眼レンズ以上に視野の広いカメラやレンズが開発される可能性がある、と同研究者らは指摘する。
同校の生体工学教授Luke Lee氏によると、向こう数年以内に、この技術を利用した超薄型携帯電話向け広角カメラが開発される可能性があるという。
最近、科学研究者の間で、ハイテクや産業界の効率化を図るためのヒントを自然界から得ようとする取り組みがなされており、今回の人工複眼の研究もその一例と言える。また別の例としては、ある研究者らが感度の高いコオロギの体毛を再現した。この技術は、将来、聴覚障害者向けの次世代型埋め込み技術の開発につながる可能性がある。
人工複眼研究チームの責任者を務めるLee氏は、イエバエの眼が持つハチの巣構造と大きさを真似た人工合成ポリマー製の光学系を作り出した。
同氏は、その光学系を作る際、従来の2次元マイクロ加工技術(微細な部品を作る際に用いられる技術)は用いず、代わりにマイクロレンズアレイを使用した。マイクロレンズアレイとは、ピンの頭ほどの大きさの三次元の半球体上に数千枚の小さなレンズを並べて敷き詰めたものだ。ポリマー樹脂で作られたその光学系には、光を導くためのチャネルがあり、光線が当たると形状や方向が与えられる。
その人工個眼(人工複眼を形成している1つ1つの眼)は、それぞれ微妙に異なる角度に向いており、昆虫の眼と同じ方法で光に焦点を合わせたり、光を導いたりする。
「これまで、(複数のレンズで)1つの角度のみを映し出すのは絶対に不可能と言われてきたが、今やわれわれはそれを可能にする人工眼を作り出し、それらの眼に画像処理機能や化学センサを取り込もうとしている」とLee氏は語る。
昆虫の複眼の中の1つ1つの個眼は、光信号を視神経に送る光受容細胞につながっている。Lee氏は、人口複眼の中の個々の眼をCCDフォトダイオードにつなごうと考えている。CCDフォトダイオードとは、デジタルカメラやビデオカメラに使用されている光を捕えるための装置だ。
Lee氏の研究チームは、この技術は最終的に、監視、高速動作検知、環境センサ、さらにカメラが必要な医療処置に応用可能と考えている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。 海外CNET Networksの記事へ
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