ナノサイズの自動車が近い将来に公道を走ることはなさそうだが、米ライス大学が開発したナノカーはナノモーターを搭載しており、自力で進む世界最小の車両と言えそうだ。
このナノカーは可動部を備えた複雑な分子で、電場や磁場に導かれて物質の表面を移動できる。1つの分子だけで構成されていながら、車軸に連結された車輪のような部分が回転することによって進む。こうしたナノカーに、大規模で複雑な化学反応を助ける役目をさせられるのではないかと、研究が進められている。
ライス大学で開発されたナノカーの大部分は、電荷を与えた薄い金箔を「道路」として、その上を走行する。
搭載されているナノモーターは、オランダのグローニンゲン大学の教授Ben Feringa氏が開発したもので、車輪の部分は光が当たると1方向に回転を始め、ナノカーを前進させる。
8年がかりで開発されたこれらの車両は長さが数ナノメートルしかなく、厚みは人間のDNAよりも薄い(1ナノメートルは10億分の1メートル)。いちばん小さい車両は長さがわずか2ナノメートルだ。
化学反応において道具として使える分子を開発すれば、将来マイクロプロセッサなど電子部品の製造に役立つはずだという発想から始まった研究だ、とナノカーの研究を率いてきたライス大学教授James Tour氏は言う。たとえば、カーボンナノチューブの端をナノカーを使って移動させ、回路を構成するといった使い方も考えられる。
おおざっぱに言えば、ナノカーは産業用の酵素のような働きをする、とTour氏は説明する。生物の体内にある酵素は食物などの物質を分解し、できた物質を次のプロセスを担う分子のところまで運んでいく。たとえば、ヘモグロビンは酸素を運ぶ。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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