サンフランシスコ発--特許オークションは、Gary氏にすばらしい幸運をもたらすかに見えた。
Gary氏は発明家かつ技術者で、クリーブランドで会社(構成員は同氏と事業パートナーの2人だけ)を経営する企業家だ。Gary氏は米国時間4月6日、サンフランシスコで開催された米Ocean Tomo主催の特許オークションに、自動車エンジンのバルブの開閉タイミングを変える技術に関する一連の特許を出品した。オークション前夜、Gary氏は何年も前からこの発明を商用化する道を探ってきたと語った。同氏はFord Motorからデトロイトでのミーティングの誘いを受けたが、その後の進展はなかった。また、別の企業と交渉するためにイギリスまで出向いたが、こちらもライセンス契約は成立しなかった。
「(この特許を)売却することについては、複雑な思いがある。なにしろ、人生の6、7年をかけて取り組んできたのだ」とGary氏は話す。同氏は匿名のままでいたいので名字を公にしないよう要請している。
入札直後、Gary氏の特許の価格はみるみる上がっていった。イギリス人の競売人Charles Ross氏が競り値を叫ぶ。「110万ドル入りました」。「次は130万ドル」。「140万ドル。150万ドルはありませんか?」
だがここで、このオークションでは数多く見られたと思われる光景が、またもや繰り広げられた。入札がぱたりと途絶えたのだ。最後に付いた140万ドルも最低落札価格を下回っていた。出品は取り下げられた。競売不成立だ。
オークション後にGary氏は「われわれの特許には出品された中でも2番目に高い値が付いた」と語った。Gary氏は前向きで、今後も事業パートナーとともに特許の売却先を探し続けると話した。
今回のオークションは前宣伝こそ盛大だったが、買い手と売り手の双方にとって成功とは言い難いものに終わった。74点の特許がオークションにかけられたが、落札したのはわずか25点ほどだ。大半の特許が、売り手の設定した希望最低落札価格に届かず、取り下げられる結果となった。
とはいえ、なかには劇的な展開で落札された特許もあった。発明家のDouglas J. Ballantyne氏が出品したテレビ配信用の映像圧縮技術に関する特許の場合、入札は30万ドルから始まった。「45万ドル出ました。50万ドル」。Ross氏が次々と入札価格をコールしていく。続いて65万ドルまで上がり、そこでいったん入札は止まった。ところが、その後競り値はじりじりと上がり始め、90万ドルにまで達した。
競り値が100万ドルを超えると、残る入札者は2人だけになった。入札価格が110万ドルになり、120万ドルになり、そして130万ドルに達する。300人以上が詰めかけたオークション会場は静まりかえった。Ross氏が入札者の1人をじっと見つめる。時間が刻々と過ぎていく。Ross氏はにこりともせず、表情を変えないまま、もう1人の入札者に目を移した。
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