ネットワーク機器最大手のCisco Systemsは、これまで貪欲に企業買収を続けてきたが、そうした歴史が手がかりになるとすれば、同社が家電市場への進出を進めるなかで今後多数の企業を買収する可能性が高い。
Ciscoは先にケーブルテレビ用セットトップボックス(STB)メーカーのScientific-Atlantaを69億ドルで買収する計画を発表した。今後数カ月以内に完了するこの買収は、Ciscoが消費者向け製品の分野で行った3つめの大規模な買収となる。
そこでいま問題になっているのは、「Ciscoが次に買収するのはどこか」という点だ。同社が検討する可能性のある候補としては、デジタルビデオレコーダー(DVR)メーカーのTiVo(経営的に苦しいが、知名度は高い)や、ビデオゲーム機メーカーの任天堂、そして新興企業のSling Media(ブロードバンド接続機能を搭載するノートPCや携帯端末からケーブルテレビの視聴を可能にする技術を開発)などの企業が考えられる。
Cisco幹部が買収を検討している企業の名を明かすことは絶対ないが、同社が提携を検討している家電分野の企業についてはいくつかのヒントがある。
CiscoとTiVoの事情に詳しい情報筋によると、両社の間で「興味深い提携」の話が出る可能性はあるという。TiVoはすでに多くの提携候補先と話し合いの場を持っていると、この情報筋は述べている。
CiscoがTiVoの買収を検討している徴候は全くなく、潜在的な提携に関する詳細も乏しい。しかし、Ciscoがここ最近発表した買収は、同社がリビングルームの主役になることに相当真剣であることを示している。そして、TiVoは消費者向けDVRの有名ブランドとして大きな影響力を持っている。同時に、TiVoは衛星放送プロバイダーのDirecTVとの長年の提携を解消したことで、流通に関する影響力を失ったが、Ciscoの力を借りることはこの影響力を取り戻す上でも役に立つ可能性がある。
CiscoおよびTiVoの関係者は、噂に関してはコメントしないと口をそろえている。
Ciscoは長年、新市場への素早い参入と自社製品の品揃え拡充のための手段として、企業買収を利用してきた。過去20年間に同社が買収した企業の数は100社を超えている。
Ciscoは2003年に家庭用Wi-Fi機器メーカーのLinksysmを買収し、初めてコンシューマー市場に進出した。そして、2年後にはKiss Technologyという欧州の小さなDVD/DVRプレイヤーメーカーを買収したが、このときに同社のホームエンターテイメント戦略が初めて見えてきた。
さらに、2005年11月にはSTB分野で第2位のScientific-Atlantaを買収すると発表し、リビングルーム進出に向けた大きな一歩を踏み出した。この買収により、数百万の家庭がただちにCiscoの製品を利用することになる。
もし、Ciscoが法人向けの事業と同じような形で消費者向けのビジネスを構築していくとすれば、同社は製品のすき間を埋め、既存技術を改善するために、さらに複数の企業買収を進めることになりそうだ。
Ciscoの計画にうまく合致する企業の筆頭としては、ビデオ専用の小型Wi-Fiアダプタを開発した新興企業、Ruckus Wirelessが挙げられる。同社のアダプタは、ワイヤレスルータや各種の家電製品に内蔵可能であり、複数のアンテナを使うことで障害を避けて無線信号を飛ばすことができる。
またRuckusには、トラフィック管理用のソフトウェアもある。このソフトウェアを利用すれば、サービスプロバイダーはリモートからサービスの品質を監視/管理することが可能になる。この技術は既存のハードウェアに簡単に組み込めるため、CiscoはこれをScientific-AtlantaのSTBに搭載したり、Kiss DVR製品に採用することもできる。
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