Steve Jobsは米国時間24日に、同氏の経営するPixar Animation StudiosがDisneyと合併すると発表した際、ついに両社が「それぞれの株主や抱える課題の違い」を乗り越えて前へ進めることになったと語った。
だがこの買収には、実は3つの企業が関わっている。Jobsはもう1つの企業--Apple ComputerのCEO(最高経営責任者)という立場にあり、そのこととDisneyの取締役という新しい役割とのバランスをどうとっていくかという点は、合併の祝賀ムードの陰に隠れて言及されていなかった。
AppleがDisneyのコンテンツを最初の呼び物にしてビデオ配信分野に参入したことで、両社の関係は以前にも増して緊密なものとなっている。だが、コーポレートガバナンスに関する専門家のなかには、そうした両社の関係からJobsがかなり微妙な立場に置かれており、特にDisneyやPixarのつくる映画をAppleやライバル各社がオンラインで配信しようとしているなかで、これが切実な問題になると指摘する者もいる。
ダートマス大学ビジネススクールのB. Espen Eckbo(コーポレートガバナンスセンター、ディレクター)は、「交渉の際にテーブルの両側に座っているようなものだ」と言う。「利害が衝突する可能性は明らかで、唯一の問題はその度合いが危険を認識できるほど甚だしいかどうかだ」(Eckbo)
この種の関係が複雑に絡み合った取締役会は決して珍しくはないが、しかし企業改革を求める人々はいまでもこうした状態に深刻な懸念を抱いている。これらの人々は、2000年代のはじめにEnronやWorldComなどの企業が崩壊し、大きな被害をもたらして以来、その影響力を強めている。
もちろん、経営陣が詐欺罪で起訴されたこれらの企業と、JobsやDisney、Appleとを同類と見なす意見は一切ない。だが、まもなくDisneyの筆頭株主となるJobsは、Appleの株式を1%保有する同社のCEOでもある。そういう立場にあるJobsが、常に利害が一致するとは限らない両社の株主を代表するという難しい課題に取り組もうとしていることが不安の種になっている。
最も明らかな火種は、AppleがiTunesでのビデオ販売ビジネスを今後どう展開していくかという点だろう。Jobsは、昨年10月に行われたイベントでこの新サービスを発表したが、その際にはDisneyのCEO、Bob Igerもステージに登場し、Disney傘下のABCテレビが保有する「Desperate Housewives」や「Lost」などのコンテンツをiTunesで販売すると発表していた。
iTunesでのビデオ配信サービスについて、Appleは今後の計画を明らかにしていないが、同社がこのサービスをさらに拡大し、テレビ番組やミュージックビデオに加えて長編映画も提供しようしていると、多くの人々が予想している。昔のDisney作品やPixarの映画を、今後投入していくビデオ対応iPodなどの端末に配信できるようになることは、Appleにとって大きな勝利を意味する。
Piper Jaffrayのアナリスト、Gene Munsterは「明らかにAppleは2007年にリビングルーム進出を狙って攻勢をかけてくるだろう。だが、そこで成果を上げるためには販売するコンテンツの量を増やす必要がある」と述べている。
実際に、Jobsは24日の記者会見のなかで、AppleあるいはiPodという具体名こそ口にしなかったものの、Pixar買収後のDisneyが自社のコンテンツを新たな端末向けに配信することについて楽観的な考えを示した。
「テレビでも、その他さまざまな端末でも、これらの映画を観る機会はかなり多い。文化に大きな影響を与える素晴らしいアニメーション映画を製作できれば、さまざまな場所で、おそらくいろいろな種類の端末を使って、そうした映画を何度も繰り返して観たい、という強い要求が子どもたちから出てくるだろう」(Jobs)
また、JobsがMicrosoftなどの競合各社に関する情報を知り得る立場に就く可能性もある。Microsoftはこれまで、デジタル著作権管理やデジタルコンテンツ配信などの関連で、断続的ながらDisneyと密接な協力関係にあった。
さらに、DisneyはHewlett-Packard(HP)と長期にわたる技術関連の契約を結んでおり、HPからさまざまなハードウェアを購入している。両社はまた、HPがCompaq Computerを買収した際に引き継いだ契約の一環として、大規模なマーケティング活動も行っている。HPは2003年にDisneyとの提携を10年延長している。
Disneyによると、Jobsは当面このように微妙な問題をめぐる一連の議論への参加を自粛する可能性があるという。
Disneyの広報担当、David Caouetteは「取締役会がAppleとの業務について検討するような場合は、確実に利害の衝突を避けるために、適切な手続きがとられることになるだろう」と述べている。
Appleの関係者からこの問題に関するコメントを得ることはできなかった。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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