Googleが、Time Warner傘下のAmerica Online(AOL)に10億ドルを出資し、AOL株式の5%を取得することになった。これにより、両社はこれまでの検索広告関連の提携をさらに拡大し、広告やインスタントメッセージ(IM)、ビデオの各分野でも協力を進めていく。
Googleはまた、AOLに対して3億ドル相当の与信を供与し、AOLがGoogleからキーワード関連広告を購入できるようにすると、両社は米国時間20日に発表した。
両社の声明によると、今回の合意でGoogleはTime Warner以外で唯一のAOL株主となり、「少数株主に与えられる特定の権利」を保有することになるという。この権利のなかには、AOLの将来の売上や株式公開に関連するものも含まれる。
新たな提携はグローバルな広告市場を対象にしたものとなるが、この提携の下でAOLは、検索広告やバナー、ディスプレイ広告など、あらゆるタイプの広告をGoogleの広告ネットワーク全体に配信できるようになると、Googleの検索製品&ユーザーエクスペリエンス担当バイスプレジデントMarissa Mayerは述べている。Googleの広告ネットワークには同社のウェブサイトだけでなく、Googleの広告を表示する提携先サイトも含まれる。Googleのホームページや中核となる検索結果には、今後もテキスト広告だけが表示されるが、同社のビデオ/画像検索サイトには、グラフィック(を使ったディスプレイ)広告が表示される可能性もあると、同氏は述べている。
Mayerによると、AOLは3億ドルの与信を使って、Googleの「AdWords」から検索関連広告を購入したり、他のプロモーション活動を行っていくという。また、この提携では「Googleの広告技術を利用した『AOL Marketplace』」の設立も求められていることから、AOLは自社の運営する各サイトで広告主に検索広告を直接販売できるようになる。
また、Googleは「AOLの各サイトのウェブマスターに働きかけて、コンテンツの設計を最適化させ、それらがGoogleのウェブクローラーで最大限にとらえられるようにしていく」が、ただしそのためにプロプライエタリな情報を交換することはまったくないという。Mayerは、この契約が発表される前に「AOLとGoogleが提携すれば、Googleの検索結果にバイアスがかかる可能性がある」との懸念が生じていたことに触れて、次のように述べた。「われわれは、この契約が核となる検索アルゴリズムに影響を及ぼす可能性は全くないという点を、契約内容のなかに盛り込んでいる」(Mayer)
両社はまた、オンラインでのビデオ検索で協力を進めるほか、「Google Video」のなかでAOLのプレミアムビデオサービスを提供していく。さらに、両社のインスタントメッセージ(IM)サービス--「Google Talk」と「AIM」のユーザー間でメッセージのやりとりをできるようにしていく。
「われわれは、膨大な数のユーザーを擁するAOLの潜在力を引き出すという公約を掲げているが、この契約はそれを実現するための鍵を握るものだ」とTime WarnerのCEO、Dick Parsonsは声明のなかで述べている。「この戦略的提携では、われわれの保有するコンテンツが非常に重要な部分となるが、われわれはこのコンテンツをGoogleユーザーがもっと利用しやすいようにしていく」(Parsons)
GoogleのCEO、Eric Schmidtは次のように述べている。「本日発表した提携の狙いは、両社の技術を活用しながら、世界中のGoogleユーザーにたくさんの新しいコンテンツを提供することだ。またわれわれは、AOL Marketplaceを利用する広告主が、AOLのネットワーク全体に配信される検索関連広告を簡単に購入/掲載できるようにする方法をつくり出した。この提携は両社にとって重要な次の一歩といえる」(Schmidt)
一部のアナリストは、両社の提携を評価しており、とくにGoogleにとってはこれが大きなプラスになると述べている。
Piper JaffrayアナリストのSafa Rashtchyは、「これが戦略的に重要な提携だとは思わない。むしろ、とくに対Microsoftを想定して、戦術的な優位性の獲得を狙ったものだと見ている」と述べている。「この提携で、Googleは広告関連の新しいアイデアを試す実験の場を手に入れることになる。GoogleやMicrosoftにとって、AOLのネットワークには特に戦略的な価値はない」(Rashtchy)
JupiterResearchのアナリスト、Todd Chankoは、GoogleとAOLは互いに補完し合えると言う。「Googleは検索広告の分野をがっちり押さえており、そしてAOLはディスプレイ広告やバナー広告など(検索関連以外の)分野で非常に検討している」(Chanko)
Googleは3年前にAOLと提携し、現在同社に検索広告を提供しているが、この売上は今年の第3四半期までで約4億ドルに上り、同社の収入全体のおよそ10%を占めている。
今回の提携については、先週、身元不明の情報筋の話としてその詳細が伝えられていたが、数カ月前からAOLの検索ビジネスをめぐってTime Warnerと交渉を続けてきていたMicrosoftにとって、この話は寝耳に水ともいえるものだった。MicrosoftとTime Warnerとの交渉は提携寸前まで進んでいたという。
Googleが10億ドルを出資してAOLの株式5%を取得することから、AOLの評価額は200億ドルとなる。この提携発表を受け、Time Warnerの株価は同日17ドル74セントで退け、同社の時価総額は827億ドルとなった。一方、Google株の終値は429ドル74セントで、同社の時価総額は1270億ドルを上回っている。なお、Nielsen/NetRatingsの調査では、10月の検索広告市場における各社のシェアはGoogleが48%、Yahooが22%、MicrosoftのMSNが11%、そしてAOLが7.2%となっていた。
Time Warnerの株主で億万長者のCarl Icahnは、同社株式の3%をコントロールしているが、そのIcahnはAOLのスピンオフを希望して、委任状争奪線を展開してきている。同氏は19日に、Time Warnerの取締役会に対して、Googleとの提携を拡大すればAOLが他の企業と合併するなどの選択肢が失われることから、「悲惨な結果を招く、目先だけの判断」を下さぬよう警告していた。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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