ワシントン発--今日、量子コンピュータは研究所の中にしか存在していない。だが米国政府は、これを海外へ持ち出すことを法律で禁止しようと、策を巡らせている。
連邦諮問委員会は、米国時間9日に会合を開いてIBMから量子コンピュータの進展状況に関する話を聞き、政府の規制対象とするほど実用化が進むのはいつ頃なのか検討した。
IBMで量子コンピューティングの研究に携わるDavid DiVincenzoは、「トランジスタが開発された1947年にタイムスリップしたようなものだ」と、委員会に対して語っている。
現在存在している量子コンピュータは、まだ初歩的なプロトタイプに過ぎない。しかし、大規模なモデルが作られるようになれば、インターネット上の情報や、金融機関および政府機関が扱う情報にスクランブルをかけるコードを破ることが理論的に可能になるという。
ある種の暗号化アルゴリズムは、膨大な数の因数分解をごく短い時間で行うのはほぼ不可能だという前提で、安全性を確保している。ところが量子コンピュータは、少なくとも名目上は、従来のマイクロプロセッサとは比較にならないくらいの速度で計算ができるのである。
DiVincenzoは量子コンピューティング研究について、「非常に有望な前途があることは明らかだ」と述べている。「基礎研究のレベルで、また開発コミュニティの進化という点で、実に多くのことが成し遂げられてきた」(DiVincenzo)
冷戦下で生まれ、その後は大統領命令で更新されている政府の輸出規制に、テクノロジー業界は長きにわたって悩まされてきた。1990年代半ばに顕著だった厳格な規制方針は緩和されたものの、「高パフォーマンス」コンピュータの輸出は暗号化ソフトウェアと同様、今も複数の規制の影響を受けている。
連邦政府が今後どのような施策をとるのかはまだ明らかになっておらず、今回の会合に先立って何らかの提案が示された形跡もない。「Information Systems Technical Advisory Committee」と呼ばれる同委員会の綱領には、委員会が商務省に対して、輸出規制および現在利用可能な技術に関する「助言」を行うことが規定されている。
量子コンピュータの実用化はまだ遠い先の話だが、一部の商用技術では量子力学の理論がすでに利用され始めた。例えば、量子暗号として知られる技術は、理論上解読不能な暗号化が可能だとされている。ただしその価格は、まだ驚くほど高い。
連邦諮問委員会は、公開討議の場では量子暗号について発言していない。非公開審議は米国時間10日に開かれる予定だ。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力