フジテレビジョンは2月10日、現在行っているニッポン放送株式の公開買い付け(TOB)の条件などを変更したと発表し、ライブドアに徹底抗戦するかまえだ。
2月21日までだったTOBの実施期限を3月2日までに延長したたほか、買い付け株式数の下限を発行済み株式の50%超から25%超に引き下げた。これは、フジテレビがニッポン放送の子会社化を目指して1月18日からTOBを開始した後、2月8日にニッポン放送株の同35%をライブドアグループが取得したことを受けたものだ。フジテレビではライブドアからの提携の申し出を拒否しており、「TOBを確実に成功させるための条件変更であり、1月17日に発表した『公開買い付けの目的はニッポン放送の経営権を取得すること』など、方針についてはまったく変更していない」としている。
ただし、条件の変更と共に「公開買い付けの目的」における「今後のグループ資本戦略および財務戦略」については、以下のとおり文章が付け加えられた。「特に外部企業との事業提携については今後の放送と通信の融合の時代への転換を展望し、ブロードバンド・モバイル関連分野において積極的に推進していく」として、「フジサンケイグループとしての今後のインターネット戦略を基軸にしつつ、提携候補先のもつ事業ノウハウや技術開発力、営業インフラ、人材などに加えて、グループとの親和性や相乗効果を勘案して主体的に決定していく」とした。今後の「インターネット戦略」がどんなものか、「提携候補先」とはどこをさすのか不明だが、いまのところライブドアと協力する気がないことはたしかだ。
こうしたニッポン放送をめぐる動きの中で、2月9日にゴールドマンサックス証券のアナリストである瓜生 憲氏は、フジテレビの投資格付けを引き下げている。その理由は、(1)ライブドアがニッポン放送株式の35%を取得したために、フジテレビが当初の目標どおりニッポン放送株の過半数を第三者から取得しても、拒否権をもつライブドアの同意なしではニッポン放送が保有するフジテレビ株式を取り込めなくなったことや、(2)仮にライブドアが同意したとしても、ニッポン放送株の取得費用が当初予定よりも大幅に高くなる可能性が高いことなどを挙げた。
この一方で、フジテレビは今回の報復とも受け取られかねない行動にも出ている。ライブドアの社長兼CEOである堀江貴文氏がレギュラーを務めるバラエティー番組について、2月13日分の放送を「編成上の都合」により休止した。
これに対して堀江氏は、自身のブログ「社長日記」で次のように書き記している。「ちなみに、日曜日の私がレギュラー出演している、平成教育2005予備校は中止にされてしまったようだ。うーん、凄いことやるなあ。そんなのってあり?ありえねーとか思ってしまった。視聴率取れると思うんだけどなあ」と批判し、「他局が激しく報道しているのに、フジテレビではほとんど報道されなかったらしいし。これじゃあ政治家に番組内容を歪曲されてしまう、某国営放送と同じじゃないのか。まさかとは思ったが残念である。資本力にあまり影響されるべきではない、報道やら番組構成やらを自ら歪曲してはいけないだろう」と続けている。
そのライブドアは、2月10日までにニッポン放送株式の買い増しを行い、グループでの持ち株比率は36%近くまでになった。時間外取引を通じて2月8日に取得した際の購入株価は、1株あたり6050〜6100円(フジテレビのTOB価格は5950円に変化なし)だったことが明らかになっているが、その後の取得金額は不明だ。しかし、ニッポン放送の株価は2月9日の終値が7800円、同10日が7840円と高騰しているため、取得コストは単純に約30%跳ね上がったと言える。
また、同社はラジオやテレビメディアに続いて出版界への本格進出も狙う。2月10日に同社は、子会社の幻冬舎ルネッサンスと共同出資して「ライブドアパブリッシング」を2月中に設立すると発表した。新会社は、ブログを始めとするインターネットコンテンツの紙媒体化を核として、ライブドア・レーベルによる出版物の企画から制作、書店流通事業までを展開していく。
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