NTTと総務省に募らせる不信感
このように主軸を変えたため、顧客獲得ターゲットも変えた。従来の目標では、2005年9月末までに「Yahoo! BBを600回線獲得する」としてきたが、「Yahoo! BBとおとくラインを合計して650万回線(2005年1月現在483万回線)獲得する」とした。
ここでひとつ懸念されるのが、立ち上がりが一見順調なおとくラインだ。実は「86万回線を受注しているが、このうち半分ぐらいはキャンセルされる見込みだ」(孫氏)と言う。新規ターゲット数はこれを見込んだ上での数値だ。
半分もキャンセルが見込まれるのは、「おとくラインを受注したあと、NTTに接続を依頼するのだが、電話回線を一番最初に契約したときの名義人に了承を得ないと開通できないなどのルールがあるようで、場合によってNTTから拒否されるケースが多々あるためだ」(同)としている。既に亡くなった人が名義人として登録されたままだったり、住所変更の届け出を長年忘れたままだったりして、NTTのデータベースに登録されている電話回線の名義人名や住所などが申し込んだ際の情報と少しでも異なると、開通させてくれないと主張する。孫氏は「顧客がNTTに届け出ている情報を忘れてしまっていることは多い。しかし、確認のやり取りを2、3回すれば面倒になってキャンセルしてしまう。法人の場合では、『株式会社』が社名の前に付くのか後につくのかという違いだけで拒否されるナンセンスな話もある。ルールだから仕方がないが、NTTさんには顧客の立場になって手続きをしてほしい」と切望した。
このほか、決算以外の話題にも話がおよんだ。総務省は2月8日に、携帯電話用周波数である800MHz帯の再編問題に関して、新規参入事業者、つまり免許を申請しているソフトバンクへの割り当てを行わない方針を正式に決定した。
これについて孫氏は、「まだ正式に認可されないと決まったわけではないが、総務省の決定には理解に苦しむ」と不快感をあらわにした。孫氏も毎回出席した公聴会においては「事業者も有識者も意見が分かれ“両論併記”と私は認識している」とした上で、「2004年秋に募集されたパブリックコメントでは、寄せられた3万2000通強の意見書の中で98%が総務省原案に反対している。このことを総務省自信が発表しているのに、あくまでも原案を通そうとする総務省の行動は不可解と言わざるを得ない」と声を荒げた。
今後について孫氏は「最終的にどうなるかはわからないが、認可されなかった場合はいつかどこかでかならず何らかの形で携帯電話事業へ参入する」と固い意志は持っている。ツーカーを買収するのではないかという憶測も一部にはあるが、「自らが免許を取得して事業を展開するのが一番良いと考えているが、他の可能性を一切否定するわけではない」とやや含みを持たせた。
テレビ朝日から学んだことまた、光ファイバー事業については「現在1日数百件の申し込みがあり、徐々に開通している状態だ。マーケティング戦略をどのように展開するか、最適な接続機器はどれがいいかなど、まだテストを行っている最中なので手探りの状態にある」と述べて、あくまでも当面はおとくラインに力を注ぐことを強調した。
最後に、孫氏はライブドアがニッポン放送株を取得したことにも触れた。「他社様のことなのでコメントする立場にはない」と述べた上で、「我々は昔、ルパード・マードック氏と組んでテレビ朝日の株主になったことがある。その体験から学んだことは『相手が十分にその気になっていないのに株主になってもあまりうまくいかない』ということだった」として、現時点でソフトバンクが新聞社やラジオ、テレビなどのメディアを買収する意向がないことを示した。
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