米投資会社カーライル・グループと京セラは21日、DDIポケットの買収について同社の親会社であるKDDIと最終合意したと発表した。買収金額は2200億円となる。買収後の出資比率は、カーライルが60%、京セラが30%となり、KDDIも引き続き10%の株式を保有する。
DDIポケットは、同社の全事業をカーライルと京セラ、KDDIの出資するコンソーシアムの保有する受け皿会社に吸収分割し、同コンソーシアムから現金2200億円を受け取る。DDIポケットのクロージング時点で有する有利子負債全額の返済等にあてられた後に残った現金が、最終的に同社の既存株主に支払われ、その後同社は清算されることになる。同社全事業の吸収分割および新会社としての事業開始は、10月1日を予定している。
左からKDDI代表取締役社長 小野寺正氏、カーライル・グループ マネージングディレクター日本代表 安達保氏、京セラ代表取締役社長 西口泰夫氏、DDIポケット代表取締役社長 山下孟男氏 |
カーライルと京セラによるDDIポケットの買収は、5月27日に交渉中であるとのコメントが各社より発表されていた。同社買収の理由についてカーライル・グループ マネージングディレクター日本代表の安達保氏は、「カーライルの投資事業のなかでも通信分野への投資は30%を占めており、わが社が最も得意とする分野だ。カーライルではかねてよりPHS事業に注目しており、PHSの創始期よりDDIポケットとともに同事業を手がけていた京セラも評価していた。DDIポケットのAirH”事業は業績が順調に推移しており、特に法人向けモバイルデータ通信市場において今後も高い競争優位性が見込めると判断した」と述べている。
一方、現在DDIポケット株式の81%を保有しているKDDIでは、事業の選択と集中の観点からDDIポケット事業の最良のあり方を検討していたという。KDDI代表取締役社長の小野寺正氏は、「複数の売却先を検討したが、カーライルがテレコム分野で業績を積んでいたことと、さらに中長期的にDDIを育ててくれる企業としてカーライルが最適だと考え、今回の選択に至った」としている。KDDIでは同事業の売却で、携帯電話事業を強化することに資源を集中させる。
なお、今回の買収は現経営陣の続投を前提としており、DDIポケット現経営陣をはじめとする同社のスタッフの雇用調整については「一切想定していない」(安達氏)としている。また、現経営陣および従業員が新会社の事業拡大に携わっていくことから、「今回の取引がDDIポケットの既存の顧客や取引先に悪影響を及ぼすことはない」(同氏)という。
新会社での事業計画については、「今後経営陣と相談のうえ決定する」(安達氏)としているが、「定額の常時接続モバイルサービスであるAirH”は、差別化できる商品だ。市場でも幅広く受け入れられており、同サービスを特に強化していきたい」としている。また安達氏は、音声サービスに関して、「PHSは品質も良く電磁波の影響も少ないものだ。さらにPHSはマイクロセル(1つの基地局がカバーする区域が数十メートルごとに分割されていること)を採用しており、コスト効率の良い投資ができるのも特徴だ。こういった特性を生かし、主に法人向けサービスを中心に強化したい」と述べた。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス