欧州委員会(EC)は現地時間18日、論議を呼んでいる、欧州連合(EU)のソフトウェア特許指令の修正案を承認した。この指令は、欧州でソフトウェア特許を普及させるための道筋をつけるものだ。
欧州議会(EP)は昨年、特許取得が可能なソフトウェアプログラムの範囲を制限する修正案を提案したが、指令の修正を支持する英通商産業省(DTI)の広報担当によると、今回の採決では、EPの修正案の多くが除外されたという。
「承認された修正案はECの原案に非常に近い」とDTIの広報担当は語るが、DTIはまだ最終的な修正案を見ていないという。
指令はこの後、EPで再び審議され、秋に採決が行われる。オブザーバーらはオープンソース団体や開発者団体が盛んなロビー活動を展開すると予想しているが、IT企業家や開発者らの権利を促進する非営利団体FFII(Foundation for a Free Information Infrastructure)のJames Healdは、ECの採決を覆すのは容易ではないと指摘する。
「EPにとっての問題点は、仮にEPが依然としてソフトウェア特許を気に入らない場合、欧州議会議員(MEP)の過半数の賛成を得なければEP独自の修正案を提案できない点だ。つまり、議会で2対1あるいは3対1の過半数が必要ということだ」(Heald)
仮にEPの修正案が可決されれば、指令はECに戻され再び審議される。そこでECがEP案に同意しなければ、この案件は「一度限り」の苦情処理委員会に持ち込まれ、同委員会は6週間以内に問題の解決を図る。
アイルランド大統領は、ソフトウェア特許指令の新しい草案が議論されることなく、17日にすんなり承認されることを望んでいた。しかし、ルクセンブルクが草案に反対したことで、18日に再び審議されることとなった。しかし、これは採決の結果にほとんど影響しなかったと見られる。
この指令は、最良の慣例に基づき、欧州の特許システムの調和を図る目的で作成された。しかし、この指令に批判的なソフト開発者、経済学者、コンピュータ科学者、小規模企業などは、EPの司法問題委員会が作成した指令には致命的な欠陥があると主張した。
批判者らは、草案の文言はあまりに曖昧で、ソフトウェア特許を正当化するものであり、これでは大手企業が特許戦争で独り勝ちを収めるという、米国のソフトウェア業界がすでに陥っている状況になりかねないと指摘する。この大変説得力のある主張を受け、EPの議員らは昨年暮れに指令を承認する前にいくつかの重要な修正案を提案した。
しかし、EUの全加盟国を代表するECは、EPの修正案を外部の専門家団体に送り、それを作成し直させた。しかし開発者ら(その多くはオープンソースコミュニティのメンバー)によると、新草案ではEP議員が昨年作成した修正案が除外されており、現在の形のまま立法化されれば、原案がそのまま立法化された場合よりも、さらに大きな損害を与えることになるだろう、と指摘している。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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