ボーダフォンホールディングスおよびボーダフォンは、元ドコモエンジニアリング代表取締役社長の津田志郎氏を2004年12月1日より新社長として迎えると発表した。津田氏はNTTドコモ設立に携わり、1997年のパケット通信サービスや、1999年のiモードサービス立ち上げに深く関与した人物。今年6月にドコモエンジニアリングの代表取締役社長に就任してから、わずか2カ月後にNTTドコモの最大のライバル会社に社長候補として入社することになる。
12月にボーダフォン社長に就任する津田志郎氏(左)と暫定代表執行役社長のJ. ブライアン・クラーク氏 |
正式に社長として就任するのは12月で、それまでの期間はボーダフォンの暫定代表執行役社長であるJ. ブライアン・クラーク氏とともに現在のボーダフォンの事業内容について学んでいくという。クラーク氏は「かねてより、ボーダフォンの新社長として『日本の市場に深い洞察を持ち、経験豊かで第3世代携帯の技術に精通している人物』を求めていた」と述べ、津田氏の実績を全面的に評価。一方の津田氏も、ボーダフォンへの入社を決めた理由として、「経営陣が移動体通信業に対して熱意を持っていること。これまでの私の実績を評価してくれたこと。そして、自分もボーダフォンでこれまでの実績、知識を活かせると考えたこと」と答える。
クラーク氏からアプローチがあったのは6月下旬のことだという。「ボーダフォンの経営陣は何年も前から、社長候補として津田氏に注目していた」(クラーク氏)
実際に津田氏がドコモエンジニアリングに辞表を提出したのは8月12日のことで、13日にはNTTドコモ社長の中村維夫氏に面会して退社の意思を伝え、週明けの16日にこの発表となった。
津田氏は、現NTTドコモ取締役相談役である立川敬ニ氏の社長退任時に、同社の社長候補として名前が挙がったことがある。このとき、実際に社長に就任したのが中村氏だ。今回の津田氏のボーダフォン移籍について、記者の中からは「この人事が大きく関与しているのではないか」という質問がいくつも飛んだ。これらの問いに対して津田氏は「断じてそういうわけではない」と述べ、「私はもともと技術畑の人間だが、この業界で会社を経営するのは技術知識が不可欠。そのため経営者、技術者の2つの視点をバランスよく持つことが必要であり、これが社長としての私の最大のメリットになると考えている。その点をボーダフォンは高く評価してくれた。私自身もその期待に応えたい」と抱負を語った。
一方、ボーダフォンの事業自体は決して安泰というわけではない。今年7月には加入者数が純減し、破竹の勢いで加入者数を伸ばしていた時期からやや後退した感がある。これについて津田氏は「現在は、第2世代から第3世代への切り替えという過渡期なため、厳しい数値が出たのではないか」とコメント。続けて、「第3世代の普及に当たっては、いくつかの施策を講じることで対処できる」と自信を見せた。
クラーク氏は、「業務改革計画は順調に進んでおり、業務プロセス改善や販売チャネル強化などの施策は向上している。このタイミングで津田氏を新社長として迎えたことで、さらに強力な体制を築いていける」と述べる。
NTTドコモから新しい“血”を入れたことで、ボーダフォンは生まれ変わるか。今後の戦略に注目したい。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス