三井物産のベンチャー投資部門である三井ベンチャーズとティーガイアが共同で開催した、次世代携帯電話向けのアイデアプランコンテスト「i*deal Competition 2010」の最終審査会が3月10日に開催され、最優秀賞が決まった。受賞したのは、電子書籍上に透明なレイヤー(層)を重ねることで新たな読書の形を提案するProject LRの「Layered Reading」と、SNSやECサイト、実店舗などにおけるユーザーの行動履歴を集約し、新たなビジネスにつなげるグレップファインドの「FICCLe」の2つだ。なお、Layered ReadingはT-GAIA賞も同時に受賞している。
Layered Readingは、電子書籍の上にさまざまなレイヤーをかぶせて、機能や情報を追加できるサービス。著者やほかのユーザーが書いたコメントや解説が見られるほか、友達が何ページ目まで読んだかを知ることができる。電子書籍上で友人とコミュニケーションしたり、雑誌などで紹介されている商品を買ったりすることも可能だ。描かれた絵をタッチすると絵が変化する、という仕掛け絵本を作ることもできる。
収入源は出版社からのソフトウェア使用料、書籍を通じて商品が売れた場合の決済手数料、ユーザーから寄せられたコメントなどのデータ販売料を想定している。iPad向けのアプリケーションから展開する考えで、すでに電子書籍市場が形成されている米国での展開を目指すとのことだ。特許出願についても検討中という。
課題として、同一性保持権などを含む著作者人格権が、書籍にレイヤーを重ねることで侵害される恐れがあるという点を挙げたが、「顧問弁護士に確認したところ、文章を邪魔しない範囲であればレイヤーを重ねることに問題はないということだった」(Project LR)とした。
FICCLeはネット上の行動と現実社会での行動を、位置情報を活用しながら連携させ、新たなサービスを提供できるようにしようというもの。たとえばあるユーザーがレストランに行き、携帯電話でFICCLeにアクセス。自分の位置情報や行動を通知するように設定すると、店舗側がそれを把握し、そのユーザーの過去の行動履歴やSNSでのコメントから、お勧めの商品などを紹介できる。また、同じようにECサイトでも、そのユーザーがアクセスすると、過去の行動からお勧めの商品を表示できる。
ユーザーにとっては、サービスをまたがった自分の嗜好(しこう)データベースを構築でき、その情報を提供するかどうかは自分の意志で決められるというメリットがある。事業者にとっては、ユーザーの好みに応じたサービスを提供でき、売り上げの増加が見込める。
FICCLeはHTML5環境を前提としており、JavaScriptを活用している。ブラウザ上で動くウェブアプリケーションのため、企業が導入する敷居は低いとのことだ。ただし、ECサイトにはFICCLeのライブラリを採用してもらう必要があるため、事業パートナーの開拓がサービスの鍵になりそうだ。グレップファインド代表取締役の斎藤幸士氏によると、2010年夏のローンチを目指しているという。
このほかi*deal Competition 2010では、Googleの音声検索、翻訳、音声読み上げ機能を組み合わることで、電話でしゃべった言葉をそのまま外国語に翻訳して伝えるiplatform.orgの「セカイフォン(仮称)」、ユーザーが欲しい商品の条件をつぶやくと、店舗側がそれに合った商品を推薦してくれるNeighborsの「Smart Shopping」、色の組み合わせにより大量のデータを印刷できるContent Idea of ASIAのカラーコード「3D PM-Code」が最終選考に勝ち進んでいた。
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