「ソフトバンクモバイルが(月額980円の)ホワイトプランと(端末割賦販売の)スーパーボーナスをやったのが、市場変化の大きな引き金になった」――KDDI代表取締役社長兼会長の小野寺正氏は9月17日に開催された定例会見において、携帯電話市場に大きな影響をもたらした想定外の出来事は何かという記者団の質問に対してこのように述べ、ソフトバンクモバイルの低価格攻勢が同社の事業計画に大きな影響を与えたことを認めた。
一方、ソフトバンクモバイルが7月に発売したAppleのiPhone 3Gについては、発売から2カ月経過し、売れ行きの勢いが衰えていることについて、「当初から特定の需要はあると思っていたし、(Appleが)マーケティングの上手な会社なので、一時的なブームになるだろうとは思っていた。ただ、Appleに関心がある人には魅力的な商品だが、一般ユーザーにとって本当に魅力的な端末かという点については疑問だった。だいたいこういう流れになるということは、予定されていたことではないか」とし、想定通りとの見方を示した。
ではなぜ、iPhoneは一般ユーザーを引きつけるに至らないのか。小野寺氏はiPhoneに限らず、Windows Mobileなどのスマートフォン全体の課題として、「(既存の)携帯電話のほうが使いやすい」と指摘する。
「携帯電話をある程度使いこなしている人からすると、テンキ−入力が当たり前。また、携帯電話の日本語変換機能が非常に良くなっている。スマートフォンに比べて、圧倒的に扱いも日本語入力も楽だ」
スマートフォンは企業内システムとの連携が可能として、システムインテグレーターや各キャリアが法人向けに積極的に売り込んでいる。ソフトバンクモバイルもiPhoneを法人向けに3カ月無料で提供すると打ち出したばかり。しかし小野寺氏は、「BREWアプリのような法人向けソリューションがスマートフォン上で開発されたという話はあまり聞かない。既存の携帯電話を上回るだけの機能や使い勝手、付加価値を提供できなければ意味がない。だからこそ、現状の法人市場は単なる価格競争になってしまっている」と断言した。
スマートフォンの分野では、Googleが開発した携帯電話向けOS「Android」を搭載した端末がまもなく発表される見込みだ。KDDIもAndroidに関する業界団体「Open Handset Alliance」に参加しているが、Androidについては「オープン化ですべてがうまくいくのかといえばそうでもない。世の中の携帯電話すべてがAndroid搭載端末になるとは思っていないし、自社の標準になるとも考えていない」とし、数ある選択肢の1つに過ぎないとした。
なお、今週冒頭から米大手会社であるLehman Brothersの経営破綻や、Bank of AmericaによるMerrill Lynchの買収、米保険大手のAmerican International Group(AIG)に対する米国政府の公的救済などが相次ぎ、株価が大きく下がるなど金融市場が混乱している。この影響については「直接的なものは影響はほとんどない」とした。景気後退の影響についても「携帯電話業界は景気の影響を受けにくいと言われてきた。端末の販売台数は昨年に比べて落ちてきており、前年比7〜8割になっているが、景気の影響ではない。また、景気悪くなったからトラフィックが少なくなるという相関関係も見えていない」とし、大きな問題はないとの認識を示した。
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