この結果、ブランドだけでなく、基幹業務も含めた見直しが必要だと判断。今夏には地域8社を本体に統合し、経営の効率化を図る。また、これまで部署ごとに設置されていたマーケティング部門も統合し、全社で統一したマーケティング戦略を策定、実行することに決めた。
「各部門が部分最適になってしまい、全体の最適化ができない上、意思決定が遅くなって機動力も下がっていた。これを打破して、顧客を基点としたバリューチェーンが作れるよう組織をフラットにし、マーケティングやプロモーション機能を集約する」(ドコモ コーポレートブランディング本部副本部長の荒木裕二氏)
魚谷氏も、「ドコモは顧客の声をとても聞いている。問題は、それを反映する仕組みが分散していたことだ」と指摘。急成長期には、スピードを重視するために各部門に分散していた機能を、一カ所に集約することで効率化を図ると共に、統一したメッセージを発信していく考えを示した。
ドコモは新規顧客の獲得から、既存顧客の慰留へと重点分野を移す。魚谷氏から見ると、ドコモが持つ5300万人という巨大な顧客基盤は非常に魅力的であり、既存顧客のニーズを掘り起こしていくことで成長余地は十分にあるという。
「(販売店の)ドコモショップには年間5500万人が訪れており、毎月5300万人の顧客に請求書を送っている。また、コールセンターには年間2000万件の電話があるという。日本の企業でこれだけの顧客と直接接点を持っている企業はほかにないのではないか。1つのまとまった方向に進めば、大変強いマーケティングパワーを持つことになる」(魚谷氏)
これは魚谷氏自身が、日本コカ・コーラで経験してきたことでもある。飲料業界では過去、自動販売機を数多く設置し、より良い場所に設置することが売り上げを伸ばす上で最重視されていた。「お金を払ってでも良い場所に自販機を置かせてもらうことが、かつては事業の主軸だった」(魚谷氏)
しかし、販売機の数が飽和状態を迎え、新たな戦略が必要になった。「1台あたりの売り上げを伸ばすために、商品開発を強化した。また、顧客を会員化して、データベースマーケティングを進めた。これはNTTドコモとコカ・コーラが組んだ理由でもある。もう1つはサプライチェーンマネジメント(SCM)によるコストダウンだ」(魚谷氏)。これらの経験から、ドコモでも今後はマーケティングを強化することで顧客1人あたりのサービス利用額を伸ばすとともに、コスト削減が不可欠になるとの見解を示した。
ドコモは7月より新しいブランドロゴを採用する。既存顧客を重視する「新生ドコモ」を印象付けたい考えだが、ブランドの再構築には時間がかかるとも魚谷氏は述べる。「既存顧客のさまざまなニーズに応え、不満を解消するという、基盤の強化がまずは必要だ。それがやがて、新たな新しいブレイクスルーとなる、高次元のサービスにつながる」(魚谷氏)
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