携帯電話で顧客をいかに店舗へ向かわせるか--小売チェーン3社の試み

 モバイル市場における企業のマーケティング活動にフォーカスした「モバイル・ビジネス・サミット2007 マーケティング・エディション」が12月7日に開催された。

 「店舗(小売)が顧客を囲い込むモバイル戦略」と題したパネルディスカッションでは、日経MJ編集長の為定明雄氏がモデレーターを務め、国内で大規模チェーン店を展開する、am/pm、ローソン、カメラのキタムラの3社でモバイルビジネスに携わる担当者を招いて、携帯電話を活用して顧客をいかに実店舗へ向かわせるかの事例と戦略が各々に明かされた。

 エーエム・ピーエム・ジャパンの代表取締役社長、相澤利彦氏は「現在、業界全体として既存店の売上が落ちている。小売業は従来と違うことをしなければならない」と明かした。

エーエム・ピーエム・ジャパンの代表取締役社長、相澤利彦氏 エーエム・ピーエム・ジャパンの代表取締役社長、相澤利彦氏

 同社が展開するコンビニエンスストアのam/pmでは、顧客の囲い込みに携帯電話を積極的に活用している。相澤氏曰く「商品の選択肢が多いなか、顧客側の選択をいかに補助するか。提案が必要」。小売業の生き残りは情報発信がカギだと説明する。

 特に都心に集中的に出店するam/pmの場合、顧客の情報感度が高く、商品やサービス情報をより詳しく求める傾向にあると分析し、情報発信ツールとして携帯電話に目が付けられた。

 また、am/pmではDVDレンタルや書籍販売などのサービスを提供する新業態のコンビニエンス・ストア「ap enta!(エーピー・エンタ)」を展開している。相澤氏によると、こうした業態は顧客にとってはワンストップの利便性がある一方で、店舗側としては“集客力”“来店頻度”“客単価”を同時に上げることができ、ひとつのインフラで3つの収入源を確保できるため、力を入れる価値のあるビジネスモデルだという。

 さらに相澤氏は、「この新業態の書籍・雑誌やDVDというのは新刊・新作のお知らせの手段が重要なビジネス」と述べ、モバイルでのアプローチが必須の手段であることを付け加えた。

 同じく、コンビニチェーンを展開するローソンでもモバイルとローソンの店舗を連動させるサービスを提供している。パネルディスカッションに祭壇した三菱商事メディア・コンシューマー事業本部メディア・コマース事業ユニット課長の福田朗也氏は、2007年5月までローソンと三菱商事の合弁会社で、ローソンのモバイルコマース&マーケティングサービスを手掛ける、アイ・コンビニエスの代表取締役社長を務めていた。

三菱商事メディア・コンシューマー事業本部メディア・コマース事業ユニット課長の福田朗也氏 三菱商事メディア・コンシューマー事業本部メディア・コマース事業ユニット課長の福田朗也氏

 ローソンでは、メール配信などの情報発信を行うためのツールとして携帯電話を活用するだけでなく、ポイント制度にも特に力を入れているという。ローソンはポイントカードを顧客囲い込みツールの軸と考えており、今後は益々ポイントカードの機能と連動させたケータイサービスを充実させてゆく方向性だ。

 「小売業におけるモバイルマーケティングの成功事例は単発のキャンペーンレベルに留まっていることが多いが、今後はチェーン全体の売上に継続的に貢献できるCRM的な成功事例をつくってゆくタイミングに来ている。ポイントカードとモバイルの連携によってそれがより実現しやすくなったのではないか」と福田氏は述べる。

 すでに優良会員の離反率の抑制などに成果が出始めているという。あとは会員規模の一層の拡大が鍵だ。

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