アクションビデオゲームが成人の視力向上に役立つ可能性があることが、米国時間3月29日に発表された研究結果で明らかになった。
Nature Neuroscienceで掲載された研究によると、ビデオゲームを使ったトレーニングプログラムを受けた人々のコントラスト感度、つまり白と黒が混ざった部分で微妙な違いを感知する能力が向上したという。このトレーニングは、弱視の人や、車の夜間運転中にものが見づらい人に有益である可能性があるという。
ロチェスター大学の脳および認知科学を専門とするDaphne Bavelier教授は声明で、「通常、コントラスト感度を上げる場合、眼鏡の着用や眼の手術により、眼の光学を変化させる」とした上で、「しかし、アクションビデオゲームをプレーすることにより、脳が訓練されて既存の視覚情報のより効率的な処理が可能となり、その効果はゲームをプレーしなくなった後も数カ月間持続することが分かった」と語った。
同研究では、2つのグループが9週間に計50時間ビデオゲームをプレーした。1つのグループは「Call of Duty 2」や「Unreal Tournament 2004」などのアクションゲームをプレーし、もう1つのグループは、標的を狙って打つなどの正確かつ視覚的に誘導された行動を必要としない「Sims 2」などの非アクションゲームをプレーした。その結果、アクションゲームをプレーしたグループはコントラスト感度が43〜58%向上したが、非アクションゲームをプレーしたグループには測定可能な改善は見られなかった。
Bavelier氏は、「われわれの知る限り、これはコントラスト感度が単純なトレーニングで向上することを明らかにした初めての実証である」と述べ、「人々はアクションゲームをプレーする際、視覚処理を司る脳の経路を変えている。これらのゲームをプレーすることにより、人の視覚系は限界に達し、脳がそれに適応する。そして、このプラス効果はトレーニング終了後2年間持続することが分かった」と語った。
2007年に行われた研究でも、1カ月にわたり1日2、3時間アクションビデオゲームをプレーした人々の空間分解脳がおよそ20%向上したということが明らかになっている。今回の研究結果は、この2007年の研究によく似た結果となったようだ。
研究者らは、ビデオゲームを使ったトレーニングの効果は数年間持続する可能性もあり、視力向上に通常利用される眼鏡、コンタクトレンズ、外科手術といった他の視力矯正手段を補完する有効な方法となることもあり得ると述べている。しかし、全てのアクションゲームが視覚障害者にそのようなプラス効果を発揮するとは限らないという。このたびの研究は、米国立眼研究所と米海軍研究所が資金援助している。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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