まず、HD(高品位映像)対応という点でいくと、PS3とXbox 360は似てくるのだと思います。これらは過去のプラットフォームの正当な進化形です。一方、Wiiはアプローチが全く違う。PSPとニンテンドーDSが違うユーザーをとらえ、それぞれ市場を開拓したのと同じことが起こるでしょう。
過去の延長であるPS3とXbox 360は、市場が若干縮退傾向にあるとはいえ、それでも大きな市場規模を確保していく。やはりこれがメインストリームであることは変わらないと思いますね。
たしかに高精細になるというのはそれなりの負担がある。これはテレビドラマがハイビジョン化したときに、役者の化粧を工夫しないといけないとか、アニメの作画品質をあげていかないといけないのと同じ理屈です。
ただ、困難さという部分に関していえば違う。最初のリリース時は確かに困難な仕事だとは思いますが、一度システムなどができあがってしまえばそう大したことはないはずだと思っています。
今まではスペックの制約があったために、いろいろな要素を絞り込まなければならなかったが、次世代機ではもっと自由に表現できるようになる。一見大変そうに見えますが、正直なところあまり変わらないのではないでしょうか。今まで表現として省略せざるを得なかったものが、今度はそのまま動くわけですから。コンピュータグラフィックスの表現に関して言えばむしろ楽になっているでしょう。
プログラムでいっても、物理演算のような新しい仕掛けはでてくるにせよ、ゲームであることにおいてはロジックが大幅に変わるわけではない。次世代機だからといって大幅にプログラムの難易度が上がったかといえば、そんなことはないんじゃないかと思いますね。
例えば「リッジレーサー7」に関していえば、昨年末に発売したXbox 360用の「リッジレーサー6」のスタッフが引き続き制作を担当している。開発に何年もかけているわけないじゃない。かといって決して単純な移植というわけではなく、コースも造り直し、新規要素も相当入っている。
一方、バンダイとしてPS3の発売と同時に出す「機動戦士ガンダム Target in Sight」は開発に2年半かかっている。ナムコの出すタイトルは十分熟成させて、バンダイは納期優先で出すと思われがちだが、ここでは全く逆のことが起こっているわけです。
ネットワーク対応という観点では、携帯型ゲーム機であるPSPとDSですでに動きが起こっていますよね。例えばPSPでいえばカプコンの「モンスターハンター ポータブル」だけが群を抜けて売れている。これはやっぱりアドホック通信を使って、みんなで協力して敵を倒していくというところが中高生に受けたのでしょう。スタンドアローンであれば、ここまで飛び抜けて売れるソフトではなかったと思うんです。インターネットを使うかどうかは別にして、立派にネットワークゲームとして成立している。
任天堂の「おいでよ どうぶつの森」や「ポケットモンスター ダイヤモンド/パール」にしても、完全にネットワークを使いこなしている。「どうぶつの森」なんか、ひとりでやっていたら、単に借金を返していくだけのゲームなんだから(笑)(編集部注:どうぶつの森はゲーム開始時に借金を負い、ゲーム中に集めたアイテムを売るなどして借金を返していく)。しかし、他人とのコミュニケーションツールとしては、とても優秀に仕上がっている。
「ポケットモンスター」にしても、今までは専用ケーブルをつないでポケモンを交換してたのが、今やWi-Fiでできる。ネットワークゲームってのはここからが始まりなんだと思いますね。「ファイナルファンタジーXI」のような大人数参加型のロールプレイングゲームが火付け役ではなかったんじゃないか、と。
電子メールだってパソコンじゃなくて、携帯電話で使えるようになってから爆発的に普及した。オンラインゲームもネットワーク前提のPCゲームから普及していくという考え方は誤りで、ゲームの一機能としてオンラインがあるという感覚から普及が始まった。今、ようやくみんながオンラインゲームのおもしろさに気がつき始めた段階だと言えるでしょう。
もちろん、こうした考え方に据え置き型ゲーム機も乗っかっていくことになると思う。ここに気がついたクリエーターが、次世代機のネットワークゲームでも勝利を手にするんだと思います。
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