ここ数年でゲーム業界の勢力図はすっかり様変わりした。以前は業務用ゲーム機、つまりゲームセンターのゲームが最先端で、家庭用ゲーム機はその移植プラットフォームという構図だった。しかし、プレイステーションの登場で、最先端の座は家庭用ゲーム機に奪われた。
今では、PCや携帯電話といった「非ゲーム機」もゲームのプラットフォームとして注目を浴びるほか、間もなく次世代ゲーム機が市場に勢ぞろいすることもあり、業界構造はますます複雑になってきている。
こうした中、業務用から続いてきた老舗ゲームメーカーはどう戦っていくのか。創業約40年を経たゲームソフトメーカー「テクモ」の安田善巳代表取締役社長は、日本興業銀行の大蔵省証券局の担当(MOF担)として金融業の事業戦略転換に取り組んだ経歴を持つ一方で、ゲーム雑誌にコラムを連載していた経験を持つなど、ゲームと産業の両方に明るい希有な人物だ。今後の展望を聞いた。
我々ゲームメーカーがこの5年間にしなくてはならないことは、「デジタルコンバージェンス(デジタル技術や通信技術の発達により異なるメディアが統合されること)」に適合していくということだと思います。ふつうデジタルコンバージェンスというと、放送のような既存メディアと、インターネットのような新しいメディアとの間で言われていたことです。既存産業の垣根が消失し、新しい産業が生まれていく。実は我々コンテンツ産業も同じような環境変化を受けているのです。
具体的にゲームビジネスを見ると、まずアタリや任天堂が築いてきた、いわゆる「ファミコンのビジネスモデル」があります。ゲームソフトのメーカーは、ハードウェアのメーカーにライセンス料を支払って、ソフトを供給するというもので、これはプレイステーションでも、Xboxでも基本は同じです。「企業がルールを決めるビジネスモデル」といってもいいでしょう。
一方、元々ゲームとしての利用を想定していないPCや携帯電話といったハードが登場してきた。こうした機械は一般のユーザーが日常的に使う道具です。この世界ではゲーム機とは違ったルールで市場が動いています。「市場がルールを決めるビジネスモデル」です。この新しい市場は、従来のゲーム機の市場と違い、非常に変化が激しい。この市場にどうやって適合していくのかが、現在の私どものテーマとなっています。
おそらく今後5年間を見るならば、併存していくと思います。規模として比較すれば、著しい成長をとげるのは、PCや携帯電話といった新しい市場でしょう。しかし、米国や欧州での動きを見る限り、従来のゲーム機の市場も安定成長を遂げていくと見ています。
今後、従来のゲーム機があまり普及していなかったBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)をはじめ、ゲーム機市場の形成を経ることがなかった市場が伸びてくると見ています。実際、中国で当社の「DEAD OR ALIVE」シリーズは高い人気を誇っています。そうした新興市場では、PCや携帯電話といった市場がルールを決めるビジネスモデルで動いています。 もちろん旧来のゲーム機市場も伸びていくとは思いますが、次世代ゲーム機が持っている「強み」は、まず日本、米国、欧州のような市場で大きく発揮される。こうした従来市場の新陳代謝といった形で伸びていく。この伸び率は緩やかなものになると考えています。
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