多様性に対応できるものだけが生き残る--スクウェア・エニックスの危機感

永井美智子(編集部)2006年09月22日 03時27分

 「生き残るのは最も強いものでも、最も賢いものでもない。変化に対応できるものだ」--進化論で有名なチャールズ・ダーウィンのこの言葉を、今最もかみしめているのはこの人かもしれない。

 スクウェア・エニックスの代表取締役社長である和田洋一氏は、ソニー・コンピュータエンタテインメントのPLAYSTATION 3と任天堂のWiiという2つの次世代ゲーム機の登場を前に、ゲーム業界が新たなステージに入ったと感じている。それは、ファミリーコンピュータやPlayStationといった1つの強力なゲーム機上での競争から、PCや携帯電話を含む複数のプラットフォーム上での争いに変わったというものだ。

 スクウェア・エニックスはこの変化にどう対応し、どのような姿を目指すのだろうか。和田氏に聞いた。

--今のゲーム業界をどう見ますか。

 国内の家庭用ゲーム機向けソフト市場を見れば縮小傾向にあります。しかし、ゲーム業界全体を見ると、ゲームで遊んでいる人が減っているわけでもなく、ゲームを作る側が経営的に大変になっているわけでもありません。

 例えば海外市場は非常に伸びています。ほかにも新しい市場が出てきていて、PCのオンラインゲーム市場は2、3年前から急速に広がっています。さらに、携帯電話向けのゲーム市場も爆発的に伸びている。ゲーム産業としては地域的にも層としてもユーザーが拡大している状態です。

--ゲーム市場が縮小しているのは国内の既存市場だけということですか。

 もしゲーム業界が本当に危機なら、いまごろは大手が何社か潰れているはずです。ただ、これまでとビジネスのやり方を変える必要はあります。同じやり方をしていてもだめですね。

--具体的に、どんな点が今までとは違ってくるのでしょう。

 まずユーザー層が広がっているので、いわゆるゲーマーではない層、例えば女性やシニア層が対象市場として登場してきています。これまでの中高生の男の子を中心とした層とは好みもライフスタイルも違うので、違うゲームデザインが求められる。そのためには、ゲームの概念自体を広げて考えないといけません。

 それから、ビジネスモデルも多様になってきます。ゲーム専用機のビジネスモデルというのは、プログラムを作って、ゲーム機メーカーにロイヤリティを支払い、世界中にあるゲーム機用ソフトの売り場で売ってもらうというものでした。しかし、オンラインゲームであればダウンロード課金のほか、月額課金やアイテム課金、遊んでいただけるほどお金をもらえる従量課金など、多様な課金方法が出てきます。

--次世代ゲーム機もネットワーク対応になりますね。しかし、Xbox 360、PLAYSTATION 3、Wiiの3機種はそれぞれ目指す方向が異なるように思います。

 そもそも、多様になってくるという方向性は今までのゲーム業界にはなかったんです。これまではグラフィックが2次元(2D)から3次元(3D)になるとか、映像がきれいになるとか、レスポンスが早くなるといったような1つのベクトル上での進化があって、ゲーム会社はそこにいかに早く追いつけるかを競っていました。

 しかし、いまは競争の土壌が広がっています。これからは多様性に対応できる会社とできない会社に分かれてきます。

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