ロシアのセキュリティベンダーKaspersky Labの最高経営責任者、Eugene V. Kaspersky氏が来日した。Microsoftの新OS「Windows 7」や無料アンチウイルスソフト「Microsoft Security Essentials」の評価、日本のITセキュリティ市場の特殊性について聞いた。
世界的に経済状況が良くないなか、IPOするメリットがあまり見出せない。おかげさまで利益は維持し続けているので、いますぐどうしても外からの資金を必要としているわけではない。
人員も順調に増やし続けていて、開発拠点はいままでモスクワ1カ所だったが、ロシア国内に2カ所、サンクトペテルブルグとノボシビルスクに開設した。あとは米国にも開発拠点をオープンする予定だ。
あと我々にとって都合のいいことに、ソフトウェアベンダーがなかなか苦しい状況にあり、人員を大きく削減している。我々が必要としている人員を雇用するいい機会になっている。
実は不況がいい具合に我々に影響しているのは今回が2回目。1回目は1998年、ロシア国内で不況があったが、そのときは我々はすでに輸出に頼ったビジネスをしていた。なので、ロシア国内の不況はまさにルーブルの貨幣価値が下がっていくなか、我々の資本はドルであったり、ポンドであったりしたので、いい具合に不況が影響した。
同時に、やはり国内のソフトウェア企業から流出してきた人材を多数当社に抱え込むこともできた。
個人、法人ともにITセキュリティへの投資はかなり制限を受けている。以前なら500人規模の会社だと予備のために550ライセンス買うパターンもあったが、それがいまは余分なものは買ってくれない。そういう締め付けは当然ある。
不況に関連してサイバー犯罪が増えた、減ったということはまったくない。サイバー犯罪は去年より今年の方が増えているし、一昨年よりも去年の方が増えている。それが増え続けることによって、IT投資が増えるということもない。
それは仮にいまのような状況になる前、仮に2000年としよう、その時期にすでに「いやいやながらもITセキュリティにある程度投資するしかない」というレベルを超えてしまっているので、各社はITセキュリティに投資するのが当たり前になっている。そこから犯罪が増え続けたからさらに投資が増えたかというと、それもない。
個人情報保護法のように、企業が対応しなければいけない法律が増えた場合には投資は増えるが、それはサイバー犯罪の増減とは関係ないと我々は考えている。不況であっても不況でなくても、たとえば会社に出社しなければいけない限り、そこにかかるコストは変わらない。
ユーザーの観点からすると、ハードウェアがそれほど高性能でなくてもいいとか、起動時間が速くなったとかの変化はあると思うが、Windows 7に搭載されたセキュリティ機能というのはそれほど革新的なものではないと我々は考えている。
オートランを制御する機能などはあるが、もちろんそれは問題解決のためのほんの一部分でしかないので、Windows 7の登場によってアンチウイルス購入の喚起になるかというともちろんそうではないし、Windows 7が登場したから必要ないかというと、そういうこともない。
皮肉なことにマイクロソフト製のOSは非常に人気だ。人気であるというのはそれを使うユーザーが多く、そこで使えるソフトウェアが多いということだ。それは逆にマルウェアの作者やそこで活動しようとしている犯罪者にとっても同じことで、そのOSで動かせるソフトが多い、そのOSを使っているユーザーが多いということはそれだけ、それを悪用する側にとっても有利な面がある。
マイクロソフトのWindows 7が人気であればあるほど、セキュリティリスクは逆に高くなってしまう。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」