NHKが12月1日から、過去のNHKの番組をインターネット上で再配信するサービス「NHKオンデマンド」を開始した。映像コンテンツのインターネット配信を展開する上で、常に議論の的になるのが著作権処理の問題だが、NHKオンデマンドではいかにこの大きな壁を越えたのだろうか。NHKオンデマンド室部長の小原正光氏に聞いた。
正確な数値は出ていませんが、まずは順調に滑り出したという印象です(※編集部注:テレビ向け動画配信サービス「アクトビラ」において12月23日に映像が配信できない事態が起きたが、インタビューはその前に行った)。放送で視聴率が高くなくてもネットでは人気だという番組もあり、「NHK番組への接触率をあげる」という当初の狙いどおりの展開です。
1週間のみ配信する「見逃し番組」では、連続テレビ小説「だんだん」が常に上位ランクインしているほか、報道系の「経済最前線」、教育テレビ「将棋の時間」など、放送コンテンツとしては視聴率の高くない番組がトップ10に入ることもあります。その他、NHKスペシャルやBS特集など、番組時間の長いコンテンツもよく見られているようです。
報道の街頭インタビューに応じたり、あるいは街を歩いているところがテレビカメラにおさまってしまったりした一般の方がテレビ画面上に登場してしまうケースは多々あります。通常、一般の方がテレビ放送によって人権を侵害されたと感じた場合は放送倫理・番組向上機構(BPO)へ訴え出て、放送事業者はその指導に応じて何らかの対応策を講じることになる。では、本サービスのように放送コンテンツをインターネットなどの通信系メディアへ転用する場合はどのように対応すればよいのか。事前に様々な議論を重ねました。
一般の方については基本的に、事前に権利処理をするのではなく、クレームが来たら対応するというスタンスです。日本の実定法ではありませんが、感覚的にはフェアユースに近いと思います。また、そのクレーム対応も当初、BPOに依頼しましたが実務上の折り合いがつかず、現状はNHKが対応しています。
いえ。多数の出演者が存在するドラマなどの番組において、権利処理作業中に行方不明だった出演者が「許諾をしていない」と訴え出た場合の対応、あるいは他の全員が許諾した状態の中でお1人だけが「ネット配信はNGだ」と訴えた場合の調停などをBPOにお願いしています。文化庁を通じて法的な手続きを取ると作業に半年以上費やすことになり、スピード感を求められるネット事業には不向きと考えられるため、BPOに対応してもらえるよう現在も働きかけているところです。
基本的には放送の判断に従うことになります。放送上問題なければ、ネット配信も問題ないとして実施するということです。
多少はありますが、現在はユーザー数も少ないのでそれほどではありません。これが、ユーザーが100万人単位になると、視聴率1%相当の人数になりますから、大変な反応が来る可能性があります。また、現状でも「放送は許可するがネットは拒絶」というケースが目立ちます。ブログや掲示板の炎上といった、ネットに対するマイナスのイメージをお持ちの方が少なからずいるということでしょう。
現在も交渉はしています。しかし、これまで「写真1枚でもインターネットには出せない」という発想をお持ちだった事務所が、コペルニクス的転回はできません。ある程度ルールを定めて、合意への道を模索することになるでしょう。
否定も肯定もできませんが、少なくとも起用していれば(過去の人気番組を配信する)「特選ライブラリー」に大河ドラマを持ってくることはできなかったでしょう。
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