知らない人にも「ニコ動はすごい」と思わせたい--夏野氏が語る「iモード化」の真意

永井美智子(編集部)2008年12月19日 14時03分

 動画コミュニケーションサービス「ニコニコ動画」が12月12日にバージョンアップし、「ニコニコ動画(ββ)」(ダブルベータ)となった。著作権問題で一時は対立関係にあるともみられたテレビ局やゲーム会社、レコード会社など多くの著作権者がニコニコ動画に動画を提供し、「ニコニコチャンネル」という公式チャンネルを開設している。また、ユーザーが生放送できる仕組みなど、新たな機能も用意した。

 今回のバージョンアップについて、ドワンゴ顧問の夏野剛氏は「iモードのようにする」と宣言している。それは一体どのような意味なのか。今回のバージョンアップを通じて、ニコニコ動画はどう変わっていくのか。夏野氏に聞いた。

公式コンテンツ自体が品質保証になる

――ニコニコ動画(ββ)では、いろいろな新機能が追加されています。今回、最も力を入れたのはどれですか。

 一番というのはないんですけれども、1つはニコニコチャンネルのような一般化の動きですね。「(トップページを)iモードみたいにする」というのは象徴的に言っているんですが、ニコニコ動画の使い方をわかりきっているニコ中(ニコニコ中毒)の人は、ニコニコ動画の良さもわかっている。けれども、それがわからない人がニコニコ動画のトップページを見ると「何だかわからない」というのが大方の印象だった。それをもう少しわかりやすくしましょうということです。

 それに、テレビ局をはじめとしたあれだけの企業がこのプラットフォームを使っているということ、それ自体が「このプラットフォームが良いんだ」ということを語っています。

ニコニコ動画(ββ)のトップページ ニコニコ動画(ββ)のトップページ。レコード会社などから提供されている公式コンテンツが前面に紹介されている

 要は、今までのニコニコ動画は、すでに楽しんでいる人しかわからないサービスだった。それが、(ニコニコチャンネルを前面に押し出すことで)使ってない人にも「これはすごいんだな」と思っていただけるようになる。ニコニコチャンネルは一般化の切り札だったんです。

 ゼロの所から動画を探せと言われるとつらいんですよね。投稿する人が少ないうちは世界観というものがあるんだけれども、これだけユーザーが多くなると何でもかんでも出てくる。

 社内でもよくあるんですけど、「あの動画面白いよね、再生数すごい多いんだけど」という話をすると、僕以外誰も知らない。ここドワンゴじゃん!?ニコニコ動画のチームだろ?と思うんだけど、逆に「君は何が面白いと思うの」と聞くと、「これ」と言われて、「知らない……。」とかね。

 これはインターネットの状況を象徴していると思っていて。もったいないじゃないですか、それって。ちょっとガイダンスがあるだけで、面白いものがたくさん発見できる。

 著作権を持つコンテンツプロバイダーの人から「こういうのどう?」というのが提示される。ある一定の品質は担保されているから、それを見たいという人にとっては検索がしやすくなる。

 ニコニコ動画が、ちょっとしたガイダンスが欲しいくらいの規模になっちゃったということです。だけど、ガイダンスを要らない人は使わなければいいんです。今までの使い勝手に慣れている人を阻害しないけど、プラットフォームとしてガイドになるメニューをきちんと用意していく、というのが今回のコンセプトです。

――iモードはそういうメニューがあったから成功したということですか。

 iモードの公式サイトというのは、もともと1つのショーケースです。公式サイトでないものもたくさんあって、「インターネット上のどこにどんなiモードコンテンツがあるかわからない人は公式コンテンツで遊んでください。でもそれを発見できる人はそっちに行ってもらっても構いません」という構成ですよね。

 iモードの場合は、一般サイトをすごい大事にしてました。課金の方式を提供してくれないという人はいたけど、それは別に他の課金方式も山ほどあるわけだから。

 ニコニコチャンネルを見てもらえば一目瞭然ですが、月額課金からスタートして、メニューの区切りもわかりやすくした。チャンネルが増えてきたらメニューも細かく分けていきます。このiモードのやり方はほかのキャリアも追随したから、ポータルで普遍的に成功しているやり方なんでしょう。

――どうやって参加したコンテンツプロバイダーを口説いたんですか。

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