63歳の世界的デザイナーが挑む、新しきウェブデザインの世界 - (page 2)

永井美智子(編集部)2007年05月14日 15時00分

――デザインの中に線があるのを嫌ったのはなぜですか。

 線というのは、囲ってしまうとその中だけの世界になっちゃうんですよ。白というのは空間がある。広がりがある。毎日画面を見ているんだから、この画面だけでもつらいのに、その中の世界をもっと小さくしてしまうとね。

 線がすべて悪いわけはないんですが、線でデザインされているとモザイクみたいな雰囲気になる。逆に線がなくなると気持ちにもビジュアルにも広がりがある。

 だから、空間というか、日本人がずっと持っていた間(ま)というんですかね。時空とも言いますが、その間(ま)が白の世界の中に、線を取った世界の中にあるんじゃないかと思います。

 特に、デザイナーというのは線を入れたがるものなんです。線を入れるなら、その線があることで逆にグラフィックがアクティブになるとか、意味があるならいい。僕は広がりが欲しいんですよ。だから、白にすればバックが生きてくる。

 線があると技術が前に出てきちゃっているという感じがするんですよ。野菜にしたら引っこ抜いてきたままであって、料理されていない。料理にはお皿も重要で、あまりデコレーションが多いと乗っている料理が分からない。白の中にあれば芋の煮たものでも何でもそれが映える。

 ただ、格好いいだけじゃなくて「文字を入れるんだからやっぱり白バックで、文字は黒である程度の大きさがないとダメ」というのはあります。

――サービスの中で一番大事なものだけを絞って目立たせ、逆に不要なものは徹底的に排除しようとしているということですね。

Katsuji Asada氏 ZINGAの大森氏は「Asadaさんがフォントのサイズや空き幅まで全部細かく言ってくることに驚いた」と話す。サービスローンチぎりぎりまでデザインの調整は続いた

 企業がものを使ってもらう人たちに優しくないとね。作って、売ってしまった後は「もう知りません」というのではなくて、もう少し優しいとか、親切とか。

 「優しさや親切ってどう表現するんですか」と訊かれるんですが、真剣にものを作って努力したら優しさはそこに生まれるんです。優しさを人に売る人なんているわけがないでしょう。優しさなんていうのは相手が感じることで、こっちが一生懸命努力すればするほど、それを味わってくれる人は優しさとか思いやりとか親切を感じるんじゃないですか。

 マラソンを一生懸命走っている人を見て怒る人がいますか。黙っていても涙が出る。なんで足が壊れてもこうやって走るのかと、ぼわっと泣けてしまう。

 だから、どんなものを作る人も、努力するとか一生懸命やるという中に、本当の思いやりや優しさは生まれるんじゃないかと思っているんです。

 フォーカスがないのはだめですね。人がどんなことでも情熱や気持ちをすべてを費やせば、それほど美しいものはないというぐらい、自然と優しさとか思いやりが生まれるんじゃないかな。これがすべてだと思っています。

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