2006年のソニーは、多くのニュースに登場したが、ほとんどの場合は嫌な役回りだった。
エレクトロニクス界の大手企業であるソニーは、大量のノートPC用バッテリーをリコールする羽目に陥った。待望のPLAYSTATION 3(PS3)も発売されたが、初期出荷台数は予定を大幅に下回った。Blu-ray DiscとHD DVDの戦いは、次世代高品位プレイヤーの売り上げを阻害している。ソニーはフラットパネルテレビ市場では弾みをつけているが、業界全体が激しい価格競争を経験している状況だ。
ソニーの最高経営責任者(CEO)であり、イギリスの叙勲制度でKnights Bachelorというナイトの称号を持つHoward Stringer氏は、手一杯の状況だ。しかし、テレビ局のCBSでキャリアを積んだ経験をもつ同氏は、2007年1月にラスベガスで開催されたConsumer Electronics Showで、CNET News.comのMichael Kanellosや他の記者から取材を受けた際にも、依然として活力に溢れていた。Stringer氏と、最高財務責任者(CFO)であるRob Wiesenthal氏、Sony ElectronicsのプレジデントであるStan Glasgow氏は、2007年のソニー製品のラインアップ、OLEDテレビなどの未来の製品、PS3およびソニーの次の計画について話してくれた。
Stringer氏:私は1年半前(2005年6月)に、エレクトロニクス事業を立て直すと約束してCEOに就任しました。それは、ソニーのエレクトロニクス事業が初めて損失を出した時だったのを覚えておられるでしょう。現在では、エレクトロニクス事業で4%の利益率を上げるようになりましたが、これは大変な成功です。プレイステーション事業の費用が、約束した連結決算の数字を達成に困難を与えていますが、わが社は目標を達成する方法を見つけなくてはなりません。連結営業利益率5%を達成する方法を見つけるというのが、向こう数カ月間、わが社が取り組む仕事です。
プレイステーション事業の遅れについては、みなさんが思慮深く、上品かつあまり親切ではない形で報道してくださったので、よく知られています。しかし今では、最初の約束である、北米で(2006年内に)100万台のPS3の出荷を達成しました。
今では、PS3の研究プログラムはうまく進んでいますが、ある研究者が最近、PS3をゲームプレイヤーのメルセデスベンツだと評しました。その理由はわかるでしょう。100万台というのはPS2の出荷台数よりも多く、これはいい兆候です。心配されていたにもかかわらず、私はPS3は問題なく目標を達成すると考えています。
Stringer:第1四半期の終わりまでに、世界で600万台を出荷します。それから、春には欧州でもPS3を発売する予定で、これはわが社には重要な意味があります(編集者注:欧州では3月23日の発売が決まっている)。発表されているゲームの数は20ほどです。この数は増えていくと考えています。
どさくさに紛れてあまり知られていませんが、現在発表されているゲームは、性能の20%から25%しか使っていません。ゲームメーカーへの刺激が一定のレベルに達して、より多くの性能を引き出せるようになれば、より素晴らしいゲームが作られるようになるでしょう。
第2に、今では100万台のBlu-rayプレイヤーが市場に出回っているという事実があり、米国で出荷されたものには、全て1枚のBlu-rayディスクが付属しています。これは、われわれが「Talladega Nights」を同梱したためです。おそらく、PS3の所有者の90%は、PS3でTalladega Nightsかその他のBlu-rayディスクを再生したことがあるでしょう。一部のレポートに書かれていることとは食い違いますが、PS3はよいBlu-rayプレイヤーです。Blu-rayを欲しがる人と、PS3で遊ぶ人は重なっています。これはちょうど、PS2で遊んだ人が初期のDVDフォーマットを支持していたのと同じであり、DVDフォーマットはこうして普及しました。
私はHD DVDを支持する記事をみな読みましたが、HD DVDプレイヤーはまだ6万台しか売れていないのに対し、こちらは100万台のBlu-rayプレイヤーを販売しています(編集者注:Stringerは当初6万枚のHD DVDディスクと発言したが、後日ソニーがこれはプレイヤーの数を意味していたと訂正した)。このように、Blu-rayフォーマットは強いフォーマットなのです。Blu-rayを見るためには、高品位テレビが必要であり、HDMI接続が必要です。しかし、PS3でBlu-rayディスクをかけ、PS3に接続されているテレビセットでそれを再生すれば、非常に素晴らしい映像が見られます。
Stringer:もちろんです。高すぎるコストについて心配する声も聞かれますが、PS3の全体の目的は、将来の機会を作ることにあります。初期の心配は、Cellチップが家電アプリケーションには高すぎるのではないかというものです。しかし、価格は下がりますし、数カ月間ぶりにCellチップグループがCellアプリケーションを考え出し始めていることも素晴らしいことです。私は、スタンフォードのスーパーコンピュータ(のようなアプリケーション)だけを言っているのではなく、それ以上の話をしています。明らかに、ハイパワープロセッサが勢いを得る段階にきています。
クリスマス前に、ある人物が「しかし、これはリスクが高すぎるのではないか」と言いました。一方には、わが社にはイノベーションが足らないという人たちがおり、一方にはあまり革新的だとリスクが大きいという人たちがいるのです。PS3は見事なバランスを持っています。短期的には、リスクが大きいと言えます。しかし、潜在能力の大きさと、人間との相互作用や、動画や3Dの面でまだ使われていない性能がどれだけあるかということを考えれば、払う価値はある値段です。
Stringer:確か、久夛良木さん(ソニー・コンピュータエンタテインメントの代表取締役 会長兼グループCEOの久夛良木健氏)は2007年の終わりに損益分岐点に達すると言っていたと思います。PS2は最初の年は黒字になりませんでした。コストはコンテンツが勢いを得るに従って、コンテンツからのライセンス料などで埋め合わせられる予定です。ただ、現在は2007年末に損益分岐点に達するという理解です。
Wiesenthal:わが社はアナリストに、2年目にはPS3は黒字になると言っており、これはPS2の時と同じです。わが社がPS3に期待している収益を前提とすると、われわれが今置かれている企業環境で目標の収益を達成するには、他にやらなくてはならないことがあります。現在それを評価しているところです。
Stringer:2カ月から3カ月かけて議論をし、みなさんに約束した目標を達成する方法を見つけ出します。
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