日本進出が決まった中国最大の検索サービス「百度」の実態

永井美智子( 編集部) 西田隆一(編集部)2006年12月06日 01時17分

 インターネットのサービスの中で中国で最大、世界で第4位(Alexaのデータによる)の訪問者数を誇る「百度」(Baidu、バイドゥ)が、2007年に日本語版サービスを開始するという。バイドゥはご存じのとおり、中国国内ではグーグルをはるかにしのぐ、中国語の検索サービスだ。だが、日本でも名前は知られているものの、その実態は不確かである。

日本展開も視野に入れたバイドゥとは、どういったサービスを展開する企業で、いかにして中国最大の名を冠するまでになったのか。バイドゥの会長兼CEOであるRobin Li氏に話を聞いた(このインタビューは11月22日に行われた)。

--バイドゥについては日本でもマスコミで取り上げられることがありますが、まだ情報が少ないです。さらに、中国のインターネットのマーケットについてもあまりは知られていません。まずはバイドゥという会社について教えてください。

 バイドゥは、中国語の漢字で「百度」と書きます。それは100回という意味で、中国古来の詩に由来します。大切なものを探すときに、100回ぐらいいろいろな場所を探しますが、意外な場所から発見をするということだそうです。

 1999年に検索サービスを開始して、2003年末には中国で最大の検索エンジンとなりました。2005年8月には米国のNASDAQ市場に上場し、時価総額は38億米ドル(2006年12月6日時点)。訪問者数は世界で4番目、アジアでは最大です。検索エンジン、ウェブサーチ、ニュースサーチ、画像サーチ、MP3サーチなどを手がけていて、従業員は2700人います。

--なぜ1999年に検索サービスを始めようと思ったのですか。

会長兼CEOのRobin Li氏

 1991年に北京大学を卒業して、その後アメリカに渡りました。ニューヨーク州立大学バッファロー校で情報科学の修士号取得して、アメリカのインターネット業界で6年間働きました。その6年間は、検索に特化した事業に携わり、ウォール・ストリート・ジャーナルの金融関連ニュース専門の検索エンジンを開発しました。また、1997年の夏にはシリコンバレーで、第2世代のインフォシークの検索エンジンを開発しました。

 6年間、検索にかかわる仕事を通して、検索というものが消費者の中に根本的な需要として存在していると感じました。その当時、中国のインターネット市場が拡大していまして、そこで検索エンジンの需要も大きくなるだろうと考え、中国に一度戻ることを決断しました。

--そのとき、中国では主要な検索サービスはなかったのですか。

 まだ、中国語で正確に検索できる強いサービスはありませんでした。2000年に我々が第一弾の検索サービスを開始したときに500万のウェブページが登録されていましたが、それがその当時最大のものでした。現在は30億のウェブページが登録されています。大きな数字だと理解していただけましたか。

--2000年当時はGoogleもまだそれほど強大ではなくて、検索ビジネスそのものもあまり注目されていないときだったと思います。

 Googleは、2000年9月に日本でサービスを開始し、同じタイミングで中国でもサービスを開始しました。それから徐々に認知度も上がり、利用されるようになりました。その当時は、ユーザー指向な検索エンジンというよりは、ポータルとして技術を追求するという役割もありました。

--検索をしてその結果を返すだけ、検索の技術を提供している会社だったということですね。

 Googleがサービスを開始した1年後の2001年9月に、私たちバイドゥが検索サービスを提供することになりました。中国語の検索エンジンとしてページビューはトップではありませんでしたが、すぐに追い付けました。

--それはなぜでしょうか。つまり、どこがユーザーに支持されてナンバーワンになったのですか。

 まず、検索を専門に特化して展開していたということと、エンジニアのやりたいことを提供するのではなくてユーザーから求められているものを提供する姿勢を持っていたことがあったからだと思います。

--今の「エンジニアのやりたいこと」ではなくて、ユーザー指向でサービスを提供しているというのは、裏を返すとGoogleはエンジニアがやりたいことを製品化しているということを暗に対照的に言っているのでしょうか。

 そういうことも言えますが。

--一度、Googleから投資を受けていると思いますが、それはどういう経緯なのでしょうか。たしか、2006年になってGoogleがその株を売却していると思いますが。

 Googleが利益を得たのはもちろんですが、バイドゥにとってもGoogleが投資してくれたことによって、投資の世界の中で認知度が高まるというメリットがありました。今、焦点となってくるのは、どこと競合するかというより、中国市場をこれからどのように成熟化させていくかということです。やはり検索サービスについて認知度を上げることと、ユーザーの検索に関する教育が必要で、どのように成熟させていくかがこれからの課題です。

--Googleとは資本関係は一時期あったけれども、そのほかに例えば人材や技術的な交流だとか、あるいは技術的に何か供与するだとかはなかったのでしょうか。

 特にそういった交流はありませんでした。

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