文:Daniel Terdiman(CNET News.com)
翻訳校正:尾本香里(編集部)
2006/07/20 08:00
ここ1年間で、赤いペーパークリップ1個でできることの意味が大きく様変わりした。
モントリオールに暮らす気さくな青年Kyle MacDonald氏は、自らのブログ「one red paperclip」への2005年7月12日付けの投稿をきっかけに世界から注目されることになった。何の変哲もない赤いペーパークリップ1個を手始めに物々交換を重ね、一軒家を手に入れようという試みだ。
無謀な試みだと思うかもしれないが、MacDonald氏は1年を通して14回の物々交換を重ね、宣言通り目的を達成した。米国時間7月12日、カナダ・サスカチェワン州のキプリングに到着した彼は、この試みのクライマックスを迎えた。キプリングが、地味ながらも2階建ての一軒家と、MacDonald氏が直前の物々交換で手に入れたゴール一歩手前のアイテム、Corbin Bernsen氏の映画に出演する権利との交換を申し出たのである。
同氏はこれまでに、ペン、ドアノブ、発電機、小型トラック、フェニックスにある住宅の賃貸契約(1年間)、有名ロック歌手Alice Cooper氏と午後を過ごせる権利などを手に入れては、次なるものと交換してきた。途中、ロックバンド「KISS」のスノーグローブ(容器の中に水を満たし、白粉が雪のように舞う置物)といった奇妙なアイテムを手に入れたりしながら、一軒家との交換に一歩ずつ近づいていったのである。
キプリングはMacDonald氏を一日名誉市長に任命するなど、町をあげて同氏を歓迎している。いまや、MacDonald氏は有名人となった。同氏の名声は留まるところを知らず、世界中のメディアが同氏の試みに興味を持ち、世間から到底不可能だと思われていたことを、根気強さとブログの力を持って成し遂げたと報道している。
MacDonald氏は初めてのブログ投稿からちょうど1周年で一軒家との交換を成立させ、目標に到達したというから驚きだ。誰からも成功を認められた今をどのように感じているか、CNET News.comはMacDonald氏に電話でインタビューした。
正直なところ、思いもかけなかった事態に非常に喜んでいます。というのは、この数日でウェブサイトへ大勢の人々がアクセスしてくれて、さらにはお祝いの電話がひっきりになりしかかってくるからです。とても気分がいいですし、ほっとしています。数カ月前までは、試みがこんなにもうまく行くとは思ってもいませんでしたし、自分が大ばか者と思われているのではないかとさえ考えました。赤いペーパークリップ1個から始めて一軒家を手に入れると宣言したはいいけど、結局実行できなかった人と思われるのではないかと。家を手に入れることができて本当によかったです。
この試みは旅のようなものでした。一軒家(という目標を掲げたこと)は単にマーケティングの道具に過ぎないという風になるべく考えてきました。
Corbin Bernsen氏の映画出演権と交換できたわけですから、結果的にスノーグローブが私の切り札になりました。誰にも言わなかったことですが、スノーグローブを手に入れた本当の理由は、皆のリアクションが見てみたかっただけです。
最初にこの考えを披露するときには勇気が要りました。周囲から「気が狂っている」と言われるのではないかと、どうしようか悩みました。ゆっくりとプールに入ろうとしている時に、周りから「飛び込め、飛び込め」と言われるような感覚に襲われたものです。結局、私は飛び込むように、一軒家を手に入れて見せると宣言しました。しかし、そのおかげで目標を周りに理解してもらえて、やりやすくなりました。
物々交換の経緯を細かく見てみると、弱気になっていた時期が何回かあるように思います。
やる気がなくなったわけではありませんが、疲れてしまったときは確かにありました。一生懸命に取り組んできましたが、うまく行かないときもありました。なので、もし目標を周囲に知られていなかったら、早々に諦めて、今ごろは何も残っていなかったでしょう。しかし、実際は目標を宣言してしまっていたので、ここで逃げ出したら愚か者扱いされると思いました。この点においては、周囲の目に助けられました。
この試みは旅のようなものでした。一軒家は単にマーケティングの道具に過ぎませんでした。物々交換を行ったのは14回。つまり14人の人々と共同でこの試みを達成したようなものです。みんながそれぞれに何かを提供してくれました。これは、ペーパークリップとか家とか、私個人とかに関するストーリーではありません。全部をひっくるめて1つのストーリーなのです。私は途中過程において、誰とどういう理由で作業するのかを選択しただけです。これは人々に関するドラマでもあります。物々交換だけがこのドラマの中心テーマになっているわけではありません。多くの人々と協力してさまざまな要素を結びつけ、なにか良いものを作り上げようとしました。Alice Cooperさんや赤いペーパークリップ、私自身、そして多くの支持者達が、ウェブサイトを使ってコラボレーションしたのです。その結果、このすばらしいビデオになりました。1個のペーパークリップから始めるには、ある意味器用でなければなりません。
もしもう一度同じことをやるとしたら、今回の経験とは少し異なる方法で挑むかもしれません。小さく初めて、大きく考え、楽しむように、とアドバイスします。小規模でうまく行くものは、規模が大きくなっても理論的にはうまく行くだろうと、私はよく考えるのです。私は赤いペーパークリップ1個を1本のペンを交換しました。それならば家1軒をアパート1棟と交換することも可能かもしれません。実は人はこうした交換を頻繁に行っているのです。例えば、Craigslistにまつわる素敵な話は、きっとたくさんあることでしょう。きっと、私の試みよりも素敵な話があるのでしょうが、あまり多くの人に語られてこなかっただけです。
難しい質問ですね。おそらく、子供のやるゲームのような感覚で相手に接近していって、物事がシンプルになるよう心がけたからではないでしょうか。わたしは「funtential」という言葉をつくりました。funtentialとは「fun」(楽しみ)と「potential」(可能性)をくっつけた単語です。交換するときはいつも、funtentialを基本に考えてきました。最もfuntentialだと思うものと交換してきました。例えば、Alice Cooperさんと午後を一緒に過ごせる権利は、大金の入った封筒と交換するよりもずっとfuntentialなことなんです。
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