Operaが奏でるPCと家電のブラウザ協奏曲

インタビュー:永井美智子(編集部)
文:林信行
2006年07月15日 00時22分

 ウィルコムの人気端末「W-ZERO3」に続いて、間もなく任天堂の携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」でも採用されるノルウェー、Opera SoftwareのOperaブラウザ。パソコン用ブラウザとして誕生したこのブラウザは、バージョンアップを続けながら、同時にプラットフォームを携帯電話やデジタル家電へと広げている。この素早いクロスプラットフォーム対応の秘密をCEOのJon von Tetzchner(ジョン・フォン・テツヒナー)氏に聞いた。

Operaが目指す機能と速度のバランス

--最近リリースしたOpera9の新機能の1つにBitTorrentの採用がありますね。日本ではPtoP技術に付いてはどうしても悪いイメージがつきまとうのですが、なぜ採用を決めたのですか。

 悪い使われ方はありますが、PtoP技術そのものが悪いわけではありません。BitTorrentは、非常に効率的なファイル転送手段として大きな注目を集めています。これまでのFTPなどのファイル転送はユーザーが増えると、転送効率が下がってしまっていましたが、BitTorrentでは逆にユーザーが多いほど効率があがるのです。現在、この技術はハリウッドの映画会社や宇宙開発事業団(NASA)などにも使われています。

--Operaというと、機能以上に動作速度を重視したウェブブラウザというイメージがあるのですが、最新版のOpera 9ではウィジェット機能やBitTorrentを使ったファイル転送など、かなりいろいろな機能を追加しているようですね。高機能化と高速化のバランスはどのように取っているのですか。

 我々は駆動スピードのために機能をおろそかにしてきたことはありません。これまでのOperaにしてもメールクライアント、チャットクライアント、ニュースクライアントといった機能もあればSVG(Scalable Vector Graphics)表示機能など、今日のウェブブラウザに期待されるような機能は一通り揃えています。それにも関わらず、OperaはFirefoxの基本バイナリよりも1Mバイト近く小さいのです。

 我々が他社と違うとしたら、それは常にこれら多彩な機能をよりコンパクトなコードで実現することに重点を置いてきたことでしょう。

--どうして、そんなにファイルサイズを小さくできるのでしょう。

 それは12年間、ずっとプログラムを小さく保つことに重点を置いてきたからです。新しいコードを書くたびに、「もっと小さくできるんじゃないか」、「もっと速くできるんじゃないか」と自問し、それができて初めて「もっと、機能を追加できるんじゃないか」と考えているのです。

 我々のブラウザは、常に「10年前のパソコンでも動く」ことを念頭に設計してきました。この目標を達成するためには、プログラムのコードをコンパクトかつ効率的なものにしなければなりません。

 こうした美徳は最近のプログラマー達の間では忘れられがちですが、実は携帯電話やモバイル機器用のソフトを開発する際には、最も重要になります。

--最近、Opera搭載携帯電話が増えていますが、Operaのモバイル市場での強みは、そのファイルサイズの小ささにあるとお考えですか。

 我々がモバイル用だけでなく、パソコン用ブラウザをつくっていることも大きな強みだと思います。

 我々はパソコン用ブラウザで、MicrosoftのInternet ExplorerやFirefoxと対等に張り合いながら、今日のウェブを扱うのに十分な能力を持つブラウザであることを実証してきました。その上で、同じコードでつくられた携帯電話用のブラウザをつくったわけです。

 これに対して他の多くの会社は携帯電話用のウェブブラウザしかつくっていません。最初から携帯電話用としてつくられたウェブブラウザにちょっとずつ機能を付け加えて、今日のウェブに対応させようとしているのです。

--そうしたライバルの中に日本のACCESSがありますね。

 そうですね。我々は競合を歓迎していますし、ACCESSはいいライバルだと思っています。彼らは我々とはまったく別のアプローチで製品を開発しています。

 ブラウザの横にいろいろなアプリケーションを用意して連携を強め、さらにはPalmSourceを買収してOSまで含めた完全パッケージで製品を提供しようというアプローチです。

 我々はウェブブラウザだけにフォーカスして、その分、ブラウジング機能で他の追随を許さないように頑張っています。

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