日本の音楽業界を変えるか--Last.fmが日本進出 - (page 2)

インタビュー:永井美智子(編集部)
文:出雲井亨
2006年07月11日 18時14分

--なぜ日本展開を決めたですか。

 日本は、本当に多くの音楽ファンがいる国です。また優れたアーティストやレコードレーベルがたくさんあり、大きな市場があります。我々のサービスを展開するのにぴったりの国だと思いました。英語以外のサービスは、日本が初めてです。

 音楽は、言葉の壁を越えて通じる「国際言語」ですから、日本進出に当たってLast.fmのシステム自体を変える必要はないと思っています。インターフェースの言語さえ変えれば、そのまま使っていただけるはずです。

 Last.fmには、世界中、もしかしたら国際連合の加盟国よりも多いくらいたくさんの国のユーザーがいます。例えば、私と音楽の趣味が同じユーザーは、それこそ南米、インド、アフリカなど、世界中にいるわけです。そういった世界中の人と、音楽を通じて出会えたら素晴らしいと思いませんか。そういった出会いを実現するサービスにしたいですね。

--日本ではどのように展開していく予定ですか。

 まずはSNS機能の提供から始めます。ラジオサービスの開始は先になる予定です。

--楽曲再生ソフトウェアのソースを開示しているほか、非商用に限って音楽再生履歴データをクリエイティブ・コモンズのライセンスに沿って公開していますね。これはどういった考えに基づくものなのでしょうか。

 我々のサービスはユーザーに支えられています。ですから、できる限りユーザーにもメリットを還元していきたいと思っています。

--今後、追加を予定している機能はありますか。

 ひとつ考えているのは、コンサートのリコメンド機能です。新しい街を訪れたとき、Last.fmでその街のおすすめコンサートを見られたら良いと思いませんか。さらに、同じ趣味の人を誘って一緒にコンサートに行けるかも知れません。

 ほかにもアイデアはたくさんあるんですが、ちょっと話せないな(笑)。

--Last.fmはユーザーの音楽の好みを自動的に学習する点が大きな特徴の1つとなっています。これはどういった仕組みですか。

 Last.fmではWindows Media PlayerやiTunes、Winampといったプレーヤーソフト向けに「Audioscrobbler」というプラグインを提供しています。これをインストールしたら、あとは、いつも通り曲を再生するだけ。Audioscrobblerが再生した曲のデータを自動的にLast.fmにアップロードしてくれます。しばらくしてからLast.fmの自分のページを見れば、再生した曲やアーティスト名の履歴がずらりと並んでいるはずです。

 Last.fm製ではないんですが、iPodの再生履歴をアップロードするソフトまでありますよ。

--アップロードした再生履歴はどのように使われるんですか。

 再生履歴は、その人の音楽の趣味を表します。再生履歴が貯まってくると、Last.fmが履歴を分析し、同じ趣味の人を「ネイバー(neighbor、隣人)」としてリストアップします。ネイバーの再生履歴を見れば、趣味が同じですから気に入った音楽と出会える可能性も高い、というわけです。

 またLast.fmは再生履歴からユーザーの好みに合いそうなアーティストを抽出し、レコメンド(推薦)します。これは、「このアーティストが好きなユーザーはこの曲も好き」といった履歴データから自動的に選出するので、人の手は一切入っていません。雑誌やテレビなどの音楽情報は、どうしても売れているアーティストに偏ってしまうものですが、Last.fmはそういった偏りのない、純粋にユーザー履歴から導き出したレコメンドを提供しています。

 ほかにもアーティスト情報を投稿したり、友達に推薦したり、曲にタグをつけたり、コミュニティがあったり、新しい音楽と出会うための仕掛けをたくさん用意しています。

--ちなみに、Martinさんはどんな音楽を聞くんですか?

 もうありとあらゆる音楽を聞いていますよ。生粋の音楽ファンですから(笑)。ほら、(Last.fmの再生履歴を見せながら)このBOREDOMSは日本のアーティストですよね。こういったテクノやノイズ系など、実験的な音楽も大好きです。

--以前、eHubというサイトのインタビューで、今インターネットで起きている進化を「パンクからニューウェーブへの変化のようなもの」と例えていましたね。

 あれは、半分ジョークですけど(笑)。以前のインターネットは、企業が発信する情報が一方的に掲載された、カタログみたいな場所でした。でも、それが今では本当のユーザーの声が聞ける、ユーザー主導型の場所になっていると感じます。それを、荒々しく生々しいパンクから洗練されたニューウェーブへの変化に例えたんです。決してニューウェーブがパンクより良い、という意味じゃないですよ(笑)。

Martin Stiksel氏

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