10周年を迎えたヤフーの意気込みと憂い

別井貴志(編集部)2006年04月19日 10時00分

 ヤフーは、2006年4月1日でサービス開始から10周年を迎えた。サービスの拡大と共に業績も好調を続け、ポータルサイトとして日本を代表するインターネット企業の地位を確立してきた。しかし、近年はGoogleやマイクロソフトをはじめ、熾烈な競争にもさらされている。10周年を節目に、今後の戦略などについて、代表取締役社長の井上雅博氏に聞いた。

--米国の関連企業やアナリストらが、今後の検索連動広告市場は頭打ちになり、成長が期待できないのではないかという見方をしていますが。

 日本はだいたい2年遅れなんです。検索広告に関しても。いま現在までの日本の状況はわりと好調に伸びています。検索連動型広告は、小規模な広告主さんがたくさん出てくるといいですねという話でした。アメリカもそうですが、日本も意外とナショナルクライアントと呼ぶ大手が積極的に広告を買うようになっています。

 アメリカはきっと、そこが一段落したのではないかと思われます。日本はまだ小規模の広告主さんの数も増えてきていますし、大手も増えてきつつあります。ただし、本質的にこの検索連動型広告は、小さい広告主さんが100万件とか、そういう桁で買ってくれるのが一番目指しているところです。

 アメリカでは、どうしたらそういう小規模の広告主さんにもっと買ってもらえるだろうということについて、もう1回フォーカスをあてなおすということだろうと思います。まあ、日本のヤフーとしてはお得意ですが、アメリカがここをどうやって乗り切るのか、乗り切れないのかというところを見て、2年後に備えるということです。

--これまでヤフーは、魅力あるコンテンツを提供して、マス媒体として広告ビジネスを展開してきました。そのほかに、オークションなどの課金で新たな収益を生み出してきました。こうした展開はこれからも変わらないのでしょうか。

 既存のメディアに出ているような、コンテンツプロバイダが提供するいわゆるヘッドコンテンツと呼ばれるものと、普通の消費者、ユーザーたちが積極的に発信していく情報と、その両方を手がけていきたいですね。それぞれ、いいところと悪いところとがあるでしょう。ヘッドコンテンツだと、情報の内容への信頼性が比較的高い。ユーザーが作り出すコンテンツというのは、中には信頼性の高いものもあるでしょうが、一般的に言えば低い。

 ただし、こうしたいわゆるテールコンテンツではいろんな角度からの意見がたくさんでるでしょう。特に、“地域”など狭い分野に入っていくと、網羅性はより高くなっていく可能性があります。たとえば、「角のたばこ屋さんがコンビニに変わった」という情報は、たぶんヘッドコンテンツでは出てこないけれど、テールコンテンツには出てきて、その地域に住んでいる人にはすごく重要な情報かもしれない。

--新しい収益を見いだせるビジネス展開はどう考えていらっしゃいますか。あおぞら銀行とネットバンキング業務の合意を解消し、ジャパンネット銀行と資本提携しましたが。

 1つは、テールコンテンツが出てきたときに、これをどうやって収益機会にかえていくかを考えなければなりません。たとえば、銀行そのものをビジネスとするには、お金を貸さないと儲からないんです。普通預金や定期預金でお金を集めて、それをより高い金利で他の人に貸し出して、そのさやで儲けるというわけです。

 ヤフーが銀行の業務に興味があることは、Eコマースの市場がもっと大きくなっていくと考えていて、そうなると、物の流れとお金の流れが加速するでしょう。そこで、物の流れは自分でいまからやろうとしてトラックをいっぱい買っても大変。運転手を雇うのも大変。そのため、なかなか着手できませんが、インターネットでのお金の流れはなんとかできるだろうと。ネットのサービスはこれまで無料のものばかりでしたが、ショッピングやオークションだけではなく、今後有料のコンテンツも増えてくるでしょう。お金の流れと、Eコマース、コンテンツのオンライン販売をより密接に結びつけられれば、もっと市場自体が拡大していけると考えている。

 決済手数料は、もちろんコストに相当する分ぐらいはもらったりするだろうけど、それだけではきっと儲からないでしょう。この決済だけを考えれば、事業機会としてはあまりおもしろくないわけです。そんなことよりは、銀行の口座があることによってお金を支払うだけではなく、今度はお金をもらう方のいろんなサービスが出てきたり。アフィリエイトなどがそれに含まれるでしょう。オークションの売り手の人もそうでしょう。お金を払う方と受ける方と両方たぶん、いろんなビジネスチャンスが出てくるでしょう。

--楽天もライブドアも収益の多くを金融関連事業が占めていますが、そういう展開はとらないということですね。

 だから、それらの企業はインターネット企業ではないのです。うちはインターネット企業です。

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