最終更新時刻:2008年7月7日(月) 11時00分

ネット企業は技術志向の経営を--梅田望夫氏が語るウェブの進化

西田隆一(編集部)

2006/02/08 14:19  

 その深い洞察力でITやインターネットがもたらす時代のうねりを的確にとらえ、CNET Japan ブログに毎日書き続けた梅田望夫氏が、雑誌の連載やブログにつづった内容をもとに『ウェブ進化論』(筑摩書房刊)を上梓した。氏はこの本の中で、「チープ革命」と「インターネット」そして「オープンソース」が次の10年の三大潮流だと定義し、その潮流によって生まれる「不特定多数無限大」の影響力をグーグルやWeb 2.0、ブログを引き合いにしながら解説している。この本に描かれた世界を元に、梅田氏にウェブ社会の変化やグーグルについて話をうかがった。

--『ウェブ進化論』ではインターネット上の社会の変化を書いていますが、インターネット上の知識産業だとか、あるいはコンテンツ産業だとか、そういうもののあり方が変わっていくことだととらえてもよろしいですか。

 産業論としてはそうですね。ただ人間の生活の局面全部を含んでいます。産業論というのは、ものすごく小さいでしょう。人間が生きていくには、どういう情報と接していくのかということがあるから、情報というのは、いまや人生そのものみたいなところがありますから。

ウェブ進化論--本当の大変化はこれから始まる
梅田望夫著
筑摩書房刊
定価777円

 ただ産業論だけで言えば、やはりコンテンツ、メディア、あるいはITの影響が一番大きい。ただ、本で書いたようにITといってもコンピュータ産業の影響は大きくはあるのだけれど、そんなには大きいというわけではないです。なぜなら、日本の大手IT関連のベンダーは、インターネットのコンテンツやメディアということとあまり関係ないことをやっているからです。むしろ中国の問題のほうが、彼らにとっては大きいですよね。

--検索をしたりブログを書いたりするような能動的に知的活動をする人たちがたくさん出てきましたが、インターネットはその人たちだけの社会であって、その社会からドロップアウトしてしまう人が出てくるのではないかと本を読んでいて思ったのですが。

 僕はあまりそういう見方をしていないんですよ。というのは、既存メディアがどういう方向にいくかということとすごく密接な関係にあると思っています。インターネット上に確かに知が集約されていて、Googleを初めとする会社がインターネット上で情報の整理をしつくすわけですね。

 ところが、それを直接、インターネットにアクセスして自分でGoogleを使い、自分で能動的に相当な時間をかけて知的活動をする人というのは、人口のマスにはならないかもしれない。だから、逆にメディア産業に携わる人たちがどういう役割を果たしているかというと、テレビも雑誌も本も要するに受動的な読者が対象になります。それは知的レベルが高い低いは関係なく、時間がないとかいろんな理由がありますよね。インターネットを使って、自分から積極的に能動的に何かをする人以外の人の中に、お年寄りも含めて知的レベルの非常に高い人もたくさんいるわけですよ。

 そういう人たちに対してパッケージをする。新聞はパッケージだし、雑誌もパッケージですよね。インターネットの知みたいなものをきちんと使って、上手なパッケージングをしていくことをやっていくとすれば、既存のメディアはどちらかというと受動的な人たちに向けてのメディアになって、インターネットは能動的な人のメディアという分かれ方をしてきて、この二つは侵食し合うというよりは共存していくのではないかなと思います。

 というのは、やはり忙しさというのが一番問題ですよ。インターネットが大好きで面白くて、こういう世界に興奮して素晴らしいと思ってこの世界が全部になってしまう人がいる。サービスを提供している人はそう思うかもしれないけど、やはり社会人になって大企業に勤めたり、自分で会社を始めたり、フリーで何かやったりといったら、生きていくのにかける時間が必要になる。家族ができ、子どもがいてとなったらなおさらです。

 そうすると、どれだけ短い時間に自分にとって必要な情報を得られるか、そういうゲームにだんだんとなってくるんですね。これは30代、40代、50代の働き盛りの人たちはみんなそうですよ。新聞だったら日経を読むとか、雑誌だったら何を読むとか、メディアってそういうものですよね。例えば、週刊文春を読んでおけば、300円ぐらい払えばなんとなく世の中の裏を読めるということです。

 だから、ネットで何かできる人=勝ち組だとか知的なレベルがものすごくあって、そうではない人は落ちこぼれというのは全く嘘であろうと思いますね。

--時間という観点からすると、パッケージ化してくれたり、ある決まった瞬間に自動で情報を提供してくれたりするのは、能動的に探すのとは違う価値があるというのはわかりやすいです。

 あと、能動的であるからレベルが高いかっていうのも、すごく難しい。能動的ということは自分の関心の外には関心がいかない。自分の関心があることについては、ものすごく深堀ができるけれど、それ以外の世の中で起こっていることというのは自分の中で概念のマップがないから、自分で探しにいくことができないですよね。その部分は何かに頼らなければならないです。

 そうすると自分の専門領域、大好きなことをどんどん深堀していくには、インターネットというのは素晴らしいメディアだけど、「世の中全体で何が起きているんだろう」とか、「自分は全然この分野に興味はないけれど、最低限、読んでおかなければいけないものは何だろう」といったことには向いていません。インターネットというのは、果たしてこれからそういうところに訴求するメディアになるのだろうかということですよね。

 10年、20年というレンジでいくと、インターネットはそういうメディアになっていくと思うのですが、でもそういう分野は既存メディアのノウハウとか人材の厚みが圧倒的にある。だから、そこは相当長い間、住み分けていくのではないかなという気がしますね。

--本の中ではGoogleが非常にとても素晴らしい会社だということを指摘していますが、一方で楽天やヤフーという会社はいわゆる「1.0」的だとしています。

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