インタビュー:西田隆一(編集部)
文:木原美芽、写真:津島隆雄
2005/04/01 17:18
国産ERPパッケージソフトのトップベンダー、ワークスアプリケーションズが、若い起業家志望者に向けてユニークな試みを発表した。「一人シリコンバレー創業プロジェクト」がそれである。
これはソフトウエア事業・サービス事業の新プランの募集で、審査に通れば、100万円から最高で1億円の出資を受けられるというもの。参加者に資金リスクは一切発生しない。創業後のCEOには応募者自身が就任し、一切の経営責任を委ねられる。
主催のワークスアプリケーションズは参加者(またはチーム)に対し、経営的なアドバイスを行い、共催のグロービス・キャピタル・パートナーズなどのベンチャーキャピタルが出資を行う。経営者たる参加者に与えられた期間は3年間。この期間に事業を拡大成長させ、EXITさせることが命題だ。期日を越えた後は、株式公開を目指すことも事業を売却することも可能だ。もちろん、成功すれば与えられたストックオプションをもとにキャピタルゲインが得られる。
ワークスアプリケーションズは「創業から5年でIPO」を宣言し、実現させた企業。同社がこのプロジェクトをスタートさせた背景、狙い、経営者に求められるものについて、代表取締役CEOの牧野正幸氏に聞いた。
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ワークスアプリケーションズを上場させて以来3年が経ちますが、その間、M&A(合併・買収)や資本提携の機会を通して、数多くのベンチャー経営者に会ってきました。その中で強烈に感じたことがあります。それは、「経営のプロとしての意識が低い」経営者の多さです。多くのベンチャー経営者たちは、非常に「オーナー意識」が強い。そしてオーナーとしての権限を失うことが最も恐ろしいことと捉えているのです。
よく「経営権」という言葉が使われますが、もともと経営者に「経営権」はありません。経営者は株主から依頼されて企業経営を行うのです。逆に言えば、株主が誰に変わったとしても、自分がパフォーマンスを出してさえいれば、経営者として企業に関わることはできるのです。
しかしオーナーであれば、究極的なことを言えば、顧客以外のステークホルダーを無視した経営も成り立ちます。特に株主に対する説明責任がないので、自らのパフォーマンスを判断される場が実質的にはありません。社員に対しては、彼らが納得できるマネージメントをしていなかったとしても、最終的に権限で抑え込んでしまう傾向がある。
このような、オーナー意識の強い経営者は、株主が変わることで自らの立場が危うくなると考えてしまう場合が多い。「オーナーであり続けたい」という権限欲が強く出てしまうのです。「オーナーでなければ、自分はリーダーシップを発揮できなくなってしまうのではないか」と、ね。
しかし考えてもみて下さい。ほとんどすべての経営者は、オーナーであるからリーダーシップを発揮できているのではありません。「経営のプロ」は、株主、社員、顧客が納得できるリーダーシップを発揮できる人のこと。そこに、オーナーであるかどうか、という点は関係ないのです。
われわれがM&Aを行うにあたり、問題になるのが、この「オーナー意識」です。シナジー効果を最大限に引きだすためのM&Aの条件を提示しているにも関わらず、オーナー経営者たちは、プロでないが故に不安ばかりが大きく、正確な判断ができない。それゆえに、薄っぺらな提携ばかりを臨むようになるのです。これでは、良い結果が出るわけがありません。
ひとつは、「経営のプロ」を大量に育成し、世の中に輩出すること。そしてもうひとつは、弊社にとっての将来のM&A候補企業を育てることです。
前者についは、先ほど申し上げたことが背景にあります。後者については、弊社が必要とする事業領域を持つ企業を探し出し、M&Aすることの難しさを痛感したことが理由にあります。
そんな状況の中では、一本釣りで探していくよりも、必要なフィールド内で養殖する方が合理的です。そのため、今回の募集では、われわれの事業領域に近いプラン、または少し次のステップにあるプランを募集しています。「経営のプロ」を育てるという社会的側面がある一方で、われわれは慈善団体ではありませんから、育った企業・事業を市場価格で買い取ることで、ワークスアプリケーションズをより強力な企業体にしていく目的を持っています。
このプロジェクトでは、参加者である経営者は1円の資金負担もしません。ワークスアプリケーションズは種まきを行い、参加者にフィールドを与えます。資本リスクはベンチャーキャピタルが負う形をとります。参加者はリスクゼロで起業ができ、また一方でわれわれも人材、経営資源を割かずに、将来的に必要な事業領域を持つ企業を育てることができる。非常にプラスの展開が望めるのです。
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