--あなたは、IBMがG5プロセッサの採用を求めてAppleと交渉していた場に居合わせたのではありませんか。
当時私はIBMの半導体部門を統括する立場にありましたから、Appleとの関係で言えば両面を知っていることになります。Steve(Jobs)が最初にIntelチップへの移行を検討していたとき、彼にG5を売り込んだのが私でした。
--5年前ですね。
ええ、私がG5を売り込んだのはその頃です。まずIBMにその必要性を訴え、次にAppleにG5はすばらしいチップであり、デスクトップ向けのPowerPCロードマップで次に来るものだと言いました。説得はうまくいきましたが、最終的にはIBMはG5をラップトップに搭載することをあきらめ、チップ事業の照準をゲーム機に絞りました。
--PC市場に進化の余地はないと判断したからでしょうか。
PCには先がないということではありません。PC市場は今でも巨大なビジネスです。
今後はおそらく、PowerPCの再活性化に取り組むことになるでしょう。PowerPCという名称も存続するかどうかわかりません。PowerPCのアーキテクチャと開発状況については、多くの人が疑問を呈してきました。当社はIBMとともに、「PowerPCアーキテクチャは多くの用途に利用されており、今も、そして今後も健在だ。世界ではIBMのPowerアーキテクチャチップより以外にもたくさんのPowerPCチップの販売されていることを忘れないでほしい」というメッセージを、明確に打ち出す必要があるでしょう。
PCは身近な存在なので、プロセッサというとPCを思い浮かべがちですが、人々が気づいていないだけで、実際には何百とまではいかないものの何十というプロセッサが身近な製品に利用されています。しかも、こうしたプロセッサの性能は急速に高まっています。
驚かれると思いますが、PowerPCは自動車のエンジン制御や駆動系の用途に使われています。2006年には、世界の車(種)の50%にPowerPCが搭載されるようになるでしょう。
--自動車の燃料噴射を制御するにしては十分すぎる処理能力だと思えますが、ほんとうにPowerPCのようなマイクロプロセッサが必要なのですか。
必要です。
--なぜですか。
一部の自動車システムでは、すでに数十万行に及ぶ膨大なプログラムが動いています。知られていないだけで、今日の自動車は実に複雑な機械になっているのです。
--具体例を挙げてください。
例えば、6気筒エンジンを積んだ「BMW 7」シリーズの車には、16ビットのPowerPCチップが搭載されています。
--来年には32ビットに移行するのですか。
はい、32ビットになります。
--BMWを分解し、すべての半導体製品を取り出したら、Freescale製チップをいくつ見つけることができるでしょうか。
7シリーズと5シリーズには52個のFreescale製チップが搭載されています。
--これらのチップは何を制御しているのですか。
エアバッグの展開やシートの移動、駆動系、テレマティック装置、衛星経由情報サービス「OnStar」、エンターテインメントシステム、変速機などです。
--PCはその前に座って操作するものではなく、運転するものになっていると。
その通りです。
--FreescaleはMotorolaから分社し、独立企業として新たなスタートを切りました。Freescaleにとって、Motorolaから離れたことはプラスだったのでしょうか。それとも障害となっているのでしょうか。Freescaleの知名度は高くありませんが。
確かにMotorolaは非常に強力なブランドで、Motorolaにルーツを持つことはわれわれの誇りです。しかし、当社の顧客は消費者ではありません。当社の顧客は製品を設計している人々であり、こうした顧客層の間ではFreescaleという名前はすでに広く認知されていると確信しています。
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