この1年間でLinuxに対する訴訟の懸念が高まっている。同OSが特定のソフトウェア特許を侵害しているという主張がこのような脅威の原因となっている。
今のところLinuxに対する訴訟は起きていないが、この問題が極めて深刻であることから、いくつかの企業では自社の特許ポートフォリオを使ってLinuxを提訴するようなことはしないと公約している。
Linuxの普及促進を目指す非営利団体Open Source Development Lab(OSDL)は、このプロセスの調整を行なうことを決めた。OSDLは先ごろ、企業がLinuxに対する訴訟攻撃の材料にしないと公約している特許を確認できる開発者向けのウェブサイト「Patent Commons」を開設した。このサイトには現在500件以上の特許が登録されているが、これだけではこの問題に大きな影響を及ぼすことはできないだろう。
しかし活動家の中には、特許を訴訟の材料にしないことを企業が公約するという考え方は間違っていると主張する者もいる。ZDNet UKはOSDLのCEO、Stuart Cohenにインタビューを行ない、このプロジェクトのより広範な目的について尋ねた。
--Patent Commonsを立ち上げた理由をお聞かせください。
Cohen:過去1年の間に、いくつかの企業が特許を材料にした訴訟は起こさないと公約しました。これらの企業は、さまざまなやり方でオープンソースコミュニティを支持していることを示したのです。われわれは8月に、Patent Commonsを開設すると発表しました。そして今回は一般向けにサイトを立ち上げ、パートナー企業の名前を明らかにしました。
--Patent Commonsではどのようなサービスを提供しているのですか。
このサイトは、企業がLinuxに対する訴訟攻撃の材料にしないと公約している特許をIT分野の専門家やベンダーが確認できる唯一の場所です。彼らは、このサイトを見た上で付加価値を付けるかどうかを決断できるわけです。
--しかし開発者らは依然として、公開されていない特許に関しては、自分がそれを侵害しないという確信は持てない状態ですね。
その通りです。世の中には膨大な数の特許が存在しますから、侵害する可能性はあります。これはあくまで最初の一歩です。
--Patent Commonsを支持している企業を挙げていただけますか。
われわれは、Intel、IBM、Sun、Computer Associates、Nokia、Ericsson、Red Hatの支持を得ています。これらの企業は全て支持を公約しています。
--もっと多くの支持は必要ですか。
われわれは、これらの企業がいずれより多くの特許を提供し、さらにより多くの企業が後に続くことを願っています。
--Patent Commonsを支持する企業の数がこれだけの数に留まっているのはなぜですか。
それは啓蒙と認知の問題です。
--あなたが是非この活動に参加してもらいたいと考えている企業はありますか。
Microsoftには、保有特許の一部を提供してもらいたいと考えています。Microsoftは依然として、オープンソースやオープンスタンダードが同社の戦略に適合する分野を見極めている段階です。同社には、多くの顧客からサーバに関するWindowsとLinuxとの相互運用性を求める声が寄せられています。
--Microsoftは巨大な敵ではないですか。仮に何者かが特許侵害容疑でLinuxに対する訴訟を提起するとしたら・・・
多くの特許を保有する大勢の人々がこの問題について考えてきましたが、何の結果も得られませんでした。今やこれは、開発者の生産性を向上させるにはどうすればいいかという問題です。
--Linuxが知的財産侵害訴訟の標的になる懸念はないのですね。
以前は持っていましたが、今は持っていません。
--Open Source Risk Managementが昨年、Linuxには200件以上の特許を侵害している可能性があると主張していましたが、それらの特許は全てCommonsに掲載されていますか。
分かりません。それらの特許の具体的な名前が公表されたことはありませんから、それらがどの特許を指しているのかは誰にも分かりません。
--Linuxが安全だとの確信を今でもお持ちですか。
それらの特許の一部をMicrosoftが保有しているのではないか、との疑念は常にありました。Microsoftはオープンソースコミュニティに自社の特許を公開すると公約していませんから、これが問題になる可能性はあります。しかし、われわれのカスタマーアドバイザーは、WindowsとLinuxの両方を使用している主要顧客など多くの人々から話を聞きました。そして、彼らはその点は問題ではないと言っています。
--Microsoft以外でCommonsに参加してもらいたい企業はありますか。
何社かあります。たとえば、HPやOracle、SAP、NECなどがそうです。しかし、Commonsが開設され、企業が訴訟の材料にしないと公約している特許を確認できる唯一の場所となった今では、どの企業でもこのサイトを支持しないわけにはいきません。
--企業にとって、このような公約を行なう動機付けは何ですか。
特許を攻撃の材料にしないと公約することで、Linuxを使ったソフトウェアやハードウェア、サービスを開発する機会が増えることです。
--Patent CommonsとOpen Innovation Networkの違いは何ですか。
この2つは相補的な関係にありますが、全く別のものです。Open Innovation Networkは特許を取得し、それらを無料で提供しています。一方、Patent Commonsでは、2、3件の特許を取得する可能性はありますが、基本的に参加企業は自社の特許を保有し続けます。
どちらもLinuxの普及促進を目的としています。ただし、Open Innovation NetworkがLinuxだけを対象としているのに対し、われわれはLinuxとオープンソースの両方をサポートしています。両者は大変良好な協力関係にあります。
--両者の活動に重複する部分はありませんか。
ありません。しかし、Open Innovation Networkが保有特許をPatent Commonsに提供する可能性はあります。
--そうなることを希望しますか。
そうなることを期待しますが、実際にどうなるかは分かりません。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」