Texas Instruments(TI)と聞くと、ほとんどの人は今でも計算機や教育玩具を思い浮かべるかもしれない。このチップ業界の巨人は、この20年間、主に舞台裏で活動してきたからだ。
TIはPC市場でこそ敗北を喫したものの、携帯電話革命では中心的な役割を果たしてきた。同社のDSP(digital signal processors)は、世界の携帯電話のおよそ半数に搭載されている。同社は、デジタルテレビ市場でもDLP(digital light processing)技術を武器に大きなシェアを勝ち取った--鏡をデジタル制御するこの技術は、すでにSamsungやその他のメーカーのテレビに採用されている。また同社は現在ハリウッドの映画会社と協力して、映画館のデジタル化に取り組んでいる。9月8日には、重要な発表が行われると見られている。
昨年TIのCEOに就任したRichard Templetonは、1980年に大学を卒業して以来、同社で働いてきた生え抜きの社員である。Templetonは先頃、CNET News.comのインタビューに応じ、Intelとの競争、エレクトロニクスの未来、そして高機能な携帯電話が求められる理由について語った。
--エンターテインメントの領域では、すでに音楽業界がデジタルに移行しました。その他の業界のデジタル化はどこまで進んでいるのでしょうか。
ホームシアターとデジタルシネマに関しては、技術的な問題はほぼ解決されました。DLP技術を採用した映画館では、従来よりも鮮明な映像を映し出すことができるようになっています。デジタルフィルムは傷がつく心配がありません。フィルムが劣化しないため、100度目の上映でも、公開初日と同じ鮮明な映像を楽しむことができます。
デジタルシネマの導入にあたっては、必要な設備コストを関係者が押しつけ合う状況が続いていました。しかし、状況は徐々に改善されており、映画館と配給会社が合意に至るケースが増えています。デジタルシネマは米国よりも先に、外国市場で拡大すると考えています。
--映画館以外では、DLPはどのような用途に利用されているのですか。
テレビは身近な製品なので、その話を求められることが多いのですが、当社のDLP事業の60%を占めているのは、依然としてプロジェクタです。これまでのプロジェクタは、会議室で使うようなものがほとんどでした。しかし、1000ドルを切る製品が登場したことにより、プロジェクタにDVDプレイヤーやXbox、PlayStationsをつないで、週末に自宅で楽しむという人も増えています。
Hewlett-PackardやRadio Shackからは「Home theater in a box」と呼ばれる製品が発売されています。これはDVDプレイヤーやDLPプロジェクタ、オーディオシステムをセットにしたもので、このセットを自宅に持ち帰り、リビングルームのテーブルに設置して、DVDを挿入すれば、特別な工事をしなくても、リビングルームの壁面を利用して、ホームシアターを実現することができます。まるで「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の世界です。ある程度の年齢の人なら、テーブルの上にKodak Carouselを置いた感じを想像してもらえばいいと思います。
当社の技術を利用した携帯プロジェクタも2社から発売されています。文字通り、手の平サイズのプロジェクタです。重量は2ポンドもなく、バッテリなしで稼働します。このプロジェクタに携帯電話をつなげば、携帯電話で撮影した画像を20〜30インチの壁面スクリーンに映し出すことができます。
--DLPテレビの問題のひとつはサイズです。小型のDLPテレビが登場する予定はありますか。
今後は2つのことをやっていきます。その1つは、40インチ以上のテレビへのDLPの採用を促進することです。DLPは基本的に半導体技術なので、40インチを超えると利益率が飛躍的に高まります。今後、チップがさらに小型化すれば、価格も下がるでしょう。画面サイズが大きくなるほど、コスト効率は高まります。画質と安定性が向上することはいうまでもありません。
プラズマの場合は、画面サイズが大きくなるほど、コストは上がります。LCDも同様です。これはDLPならではの優位性です。しかし36インチのテレビでも、生産台数を2500万台程度に引き上げることができれば、40インチ以上のテレビを800万台から1000万台生産するのとそう変わらなくなります。この当たりは非常に弾力性があります。
--それでも、外国市場での見通しは厳しいかもしれません。DLPテレビのなかには、中国の一般的な集合住宅には入らないものもあります。外国市場ではサイズが障害になるのではありませんか。
中国は世界で2番目に大きな大画面テレビの市場です・・・2008年に開催される北京オリンピックの影響を過小評価することはできません。世界の注目を集めるようになれば、中国はインフラだけでなく、国内のすべてのものが世界水準と目されることを望むでしょう・・・当社が高品位テレビ(HDTV)に期待をかけているのはそのためです。しかし、これは10年以上をかけて進む変化であり、今はその端緒に付いたばかりです。
--米国政府はブロードバンド政策を的確に推進していると思いますか。
政府のやり方に文句をつけることは簡単です。政府に関して、当社が最も重視しているのは、大学の基礎物理分野の研究開発に、もっと多くの資金が割り当てられるようにすることです。競争力のあるブロードバンドインフラとワイヤレスインフラを整備することは国家の重要課題です。40年前、50年前に道路網とハイウェイを整備したように、今はこれらのインフラを整備することが求められているのです。
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