運命の夏、というのだろうか。
マサチューセッツ工科大学(MIT)の学生だったColin Angleは、Rodney Brooks教授の研究室の横を通りがかった。教授は夏に計画していたロボットプロジェクトの助手をAngleに頼んだ。1990年の夏のプロジェクトから生まれたのは、カニのような姿をした歩行ロボットGenghisだった。このプロジェクトはBrooks教授に終身在職権をもたらし、Angleには大学院への扉を開いた。
しかし、Angleは大学院に進む代わりに、Brooks教授と会社を立ち上げた。ここにHelen Grenierが加わり、誕生したのがiRobot社である。iRobotは成長が期待される自律ロボット市場の初期の成功例となった。300ドル前後で売られている同社の掃除ロボット「Roomba」は、すでに120万台の販売実績がある。同社はPackBotという名の軍事ロボットも開発した。現在は草刈り機のトップメーカーであるJohn Deereと共に、偵察用車両を開発している。年内にはモップがけをこなす新ロボット、Scoobaもお目見えする予定だ。
iRobotのCEOを務めるAngleは先ごろ、CNET News.comのインタビューに答え、次期バージョンのRoombaのデモを披露し、ロボット市場の未来について語った。
--1年前にNews.comのインタビューに登場していただいたときは、ロボット工学はまだ色物扱いされていました。しかし、今は熱い視線が注がれています。ロボット市場はついに動き出したのでしょうか。
産業としては、まだひよっこの段階にあると思います。実用ロボット、つまり人型以外のロボットや、実用本位のロボットに関しては、5つか6つのメーカーが芝刈り機を開発していますし、掃除機のメーカーもおそらく十数社あります。しかし、Roombaに匹敵する成功を収めた企業は、まだひとつもありません。ロボット市場の可能性については、多くの業界アナリストがきわめて楽観的な見方を示しています。
国連が発表したロボット工学に関する報告書では、ロボットの市場は2004年から2007年までに7倍になると予測されています。また、日本の研究者は、2010年までに約3900万台の家事ロボットが登場すると見込んでいます。当社はこれまでに120万台のRoombaを販売しました。
--iRobotが業界首位の企業だとすれば、第2位はどこですか。
Electroluxは約4万台を販売したといわれていますが、第2位の企業はまだ定まっていません。しかし、この市場に対する関心が飛躍的に高まっていることは確かです。私は多くのベンチャーファンドがロボット向けの投資資金を確保し、有望な投資先を探していることを知っています。ロボット市場に優れた経営チームが登場するのは時間の問題でしょう。
--御社のライバルは大学の研究室から生まれるのでしょうか。それとも、既存の企業の中から現れるのでしょうか。
これからは、当社とまったく同じことをしても、統合システムを構築し、全国規模のブランドと流通プラットフォームを確立することは難しくなるでしょう。しかし、当社が築いたプラットフォームに「相乗り」することは可能です。Roombaにはシリアルポートが搭載されていますが、われわれはまもなく、Roomba用のAPIを提供する予定です。このAPIを利用すれば、Roomba用のアクセサリを開発することができます。つまり、Roombaの100万人のユーザーを相手に、ビジネスを展開することができるのです。
また、PackBotには多彩なアドオンが用意されています。(網状の)アームはペイロードで、必要に応じて接続されます。光ファイバースプーラも同様です。他にもさまざまなセンサーヘッドが用意されています。われわれは化学/生化学センサーを積み込み、PackBotに接続できるようにしました。戦地では、ときに非常に危険な場所を探査しなければなりません。こうした場所には、敵の侵入を防ぐために、有毒化学物質や生物兵器、ときには核兵器が仕掛けられていることがあり、ひとつ間違えば、大惨事に発展する恐れがあります。そこで、どのような脅威が潜んでいるのかを調べるために、ロボットが利用されるようになりました。
--Roombaのアドオンとしては、どのようなものが考えられますか。
Roomba部門は現在、このロボットをアバターとして利用する方法を真剣に検討しています。いずれはウェブページにログインして、Roombaのセンサーが捉えた画像を見たり、Roombaを通して周囲の音を聞いたり、遠隔操作したりすることが可能になるかもしれません。
今後、この種の関心はどんどん高まっていくでしょう。それがどのくらいのペースで、経済的意味を持つ水準に達するかは分かりません。まずはAPIを提供し、人々の関心を喚起していくつもりです。
--iRobotは消費者向け製品と軍事・企業向け製品の両方を扱っていますが、収益に占める割合ではどちらが大きいのでしょうか。
規模でも、スタッフの数でも、両者は同等です。どちらも収益に大きく貢献していますし、どちらも急速に成長しています。違いがあるとすれば、アーム付きのPackBotは1台当たり約12万ドルもすることくらいでしょう。イラクでは200台のPackBotが活躍しています。
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