グラフィックスの世界では、もはやデファクトとなった「Adobe Photoshop」「Adobe Illustrator」のほか、リッチなドキュメントを作成・閲覧する「Adobe Acrobatファミリー」を通じてエンタープライズ向けソリューションを提供しているアドビシステムズ。デザインとエンタープライズという2つの事業が好調で、2004年度の売り上げも前年比29%増と大きく伸びている。そんな同社が、Flashを提供するマクロメディアの買収を発表したのは2005年4月18日のことだ。両社の統合により、アドビは今後どのような戦略を打ち出すのだろうか。米アドビシステムズの社長兼COOのシャンタヌ・ナラヤン氏に聞いた。
--マクロメディア買収の発表には大変驚きました。これまでアドビにとってマクロメディアは大きなライバルだったと思いますが、この買収によってどのような戦略を描いているのですか。
たしかにウェブ制作ツールでいうと、当社は「GoLive」を提供していますし、マクロメディアは「Dreamweaver」を提供しています。しかしユーザー層で見ると、アドビはデザイナー向け、マクロメディアは開発者向けということで棲み分けができていたのです。これまではデザイナーと開発者で別々の製品技術を使っていたわけですが、今回の買収により、デジタルコンテンツ制作の現場でビジネスプロセスを革新できるようになります。
また、最大のメリットは当社のPDF技術とマクロメディアのFlashの融合でしょう。PDFは静的なドキュメントにさまざまな機能を持たせ、ドキュメント中心の業務プロセスを効率化する技術ですが、そこにFlashを加えることで、より豊かな表現力を持つようになります。
--具体的に、エンドユーザーにはどのようなメリットがもたらされるのですか。
Flashはムービー制作だけでなく、ウェブのユーザビリティ向上のためのさまざまな動作を可能にします。Flashによりウェブの表現力が豊かになりますが、一方で印刷に弱いというデメリットもありました。まだ構想段階なので詳しくは言えませんが、たとえばFlashで表現されたウェブの情報を、PDFできれいに印刷できれば、その後の情報活用の範囲がより高まります。
特にエンタープライズ分野でいえば、FlashとPDFにより、ナレッジワーカーの共同作業や情報共有をより強固なものにできると考えています。マクロメディアのプレゼンテーションサーバ「Macromedia Breeze」とPDFを組み合わせ、同期・非同期環境における最適なプレゼンテーションのソリューションを実現したり、またFlashの開発者向け環境「Macromedia Flex」と、当社のIntelligent Document Platform製品群とを組み合わせることで、表現力豊かなフォームベースのビジネスソリューションを開発できます。それもWindowsのほか、MacやLinux、モバイルなど、特定の環境を問わず、あらゆるOS、マシンの上で動作できるようになるのです。
FlashとPDFだけではなく、両社の製品はさまざまな融合が考えられます。たとえば、Flash Videoの技術と「Premier Pro」や「After Effects」を活用することにより、ビデオ制作のワークフローを完結させることができます。
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