数ある官僚機構のなかでも、一目置かれる古株といえば、国際電気通信連合(ITU)だ。1865年に電報通信の円滑化を目的に設立されたこの組織は、その役割を拡大し続け、現在では無線通信や電話関連の業務もこなすようになっている。
そのITUも、インターネットに関しては事実上、何の影響力も持っていない。インターネットは依然として、ICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)、IETF(Internet Engineering Task Force)、W3C(World Wide Web Consortium)、そして各ドメインを管理する地域レジストリといった専門機関の領域となっている。
国連の関連機関であるITUは、この状況を変えたいと考えている。ITUのHoulin Zhao電気通信標準化局長は昨年、「インターネット統治には新しいあり方が求められている。現在の状況が続くことは、人々の望むところではない」と述べた。Zhaoは中国郵政省を経て、1999年から現職を務めている。
Zhaoは露骨な表現を避けているが、ITUがインターネットへの関心を強めていることは間違いない。この動きはITU、ICANN、そして場合によっては米国政府を巻き込んだ権力闘争に発展する可能性がある。ICANNに対する監督権限を持つ米国政府は、現在の構造に満足しているように見受けられるからだ。
Zhaoはこの一年、セキュリティやスパムといった問題からIPアドレスの割り当てまで、あらゆる業務にITUが関与する可能性を示唆してきた。また、最近ではVoIP(voice over Internet Protocol)通信にも食指を伸ばしている。
Zhaoは12月に発表した文書の中でこう書いている。「スパム対策はインターネットを保護するさまざまな方法のひとつにすぎない。緊急時の可用性を確保することや、公安組織/法執行機関を支援することも、そうした方法のひとつである」。彼はこうも述べている。「(ITUは)インターネットエクスチェンジ、相互接続課金システム、国家のプライバシー法に準拠した認証ディレクトリの導入といった業務にも対応できる」
CNET News.comはZhaoにインタビューを行い、ITUがインターネットへの関心を強めていることについて、また今年11月にチュニジアで開催される国連「世界情報社会サミット」とその準備会合への取り組みなどについて話を聞いた。
--ITUは今後数年で、インターネット統治に関与するようになるのでしょうか。
ご存じの通り、インターネット統治は世界情報社会サミットの第1段階で積み残された2つの重要課題のひとつです。残念なことに、前回の会議ではインターネット統治とは何かを明確に定義することはできませんでした。この問題は現在、国連のKofi Annan事務総長が設立した作業部会で検討されています。
インターネットの今後の発展に関する問題は、インターネット統治の問題と切り離せないものとなるでしょう。インターネット統治の守備範囲は実に広い。ここには技術やサービスの革新だけでなく、政策、主権、セキュリティ、プライバシーなど、ほとんどの問題が含まれます。
ITUの定義によれば、「電気通信」はほとんどすべての事柄を網羅しています。そのため、ITUの弁護士は、インターネットも電気通信媒体のひとつだと考えていますが、「電気通信」という表現はあまりにも適用範囲が広く、インターネットは含まれないと主張する人々もいます。
--あなたはどうですか。ITUはインターネット統治に関与するべきだと思いますか。
もちろんです。ITUはインターネット統治に参加するべきです。しかし、ITUだけですべてに対応できるわけではありません。
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