ボストン発--Novell最高経営責任者のJack Messmanにとって、昨年は目まぐるしい1年だった。
Messmanは2003年に、Linuxを採用して同社製品の一新を図るという思い切った動きに出た。同社は翌年SuSE Linuxを買収し、衰退の道をたどるNetWare OSに代わる製品として、そのオープンソースOSを提供し始めた。それ以来、同社はSuSE Linuxの新規バージョンをリリースし、販売方法を見直し、副社長を解雇し、Linuxとの統合を図ったNetWareの新バージョンであるOpen Enterprise Serverの準備に着手した。
Messmanも認めている通り、こうしたLinux推進の動きは概ね成功しているものの、すべてが予定どおりに運んでいるわけでもない。なかでも、ライバルのRed Hatの後塵を拝している北米市場では、同社はまだ望んでいたような成功を収めていない。
Messmanは、北米地区での伸び悩みを認めているものの、同時に状況は改善されつつあるとしている。証券会社のSG Cowenが、北米のIT企業440社の情報技術部門責任者を対象に実施した調査でも、Messmanのそうした評価を裏付ける結果が出ている。各種Linuxパッケージのインストール実績を比較すると、Red Hatが86%(2003年)から72%(2003年11月〜2005年1月)に低下しているのに対して、Novellのシェアは21%から33%に上昇している。
Messman(64歳)は、NetWareの最盛期だった1985年からNovellの取締役を務めていたが、2001年に同氏が経営していたCambridge Technology PartnersがNovellに買収されたのを期に、Novellの社長兼CEOに就任した。
先月ボストンで開催されたLinuxWorld Conference and Expoで、基調講演を終えた同氏に話を聞いた。
--NovellはLinux化を図ったわけですが、その結果をどう評価されていますか。
われわれがCambridge Technology PartnersとSilverstreamを買収したとき、社員には会社の戦略が見えていませんでした。彼らはマイクロソフトからNetWareを守るという姿勢を頑として崩しませんでした。しかし、われわれがLinuxに注力するようになると、社員たちはそれを理解するようになりました。われわれは、1年もかからずにスタッフ全員を教育しました。彼らはこの戦略を受け入れました。彼らは、NetWareをあきらめずにLinuxを推進していく方法があると理解したのです。彼らは、Open Enterprise Serverの投入を評価しています。全社の士気も向上しています。経営側に対しても、防御的ではなく、積極的に意見を言うようになりました。
われわれはXimianとSuSEから少しずつ遺伝子をもらいましたが、この遺伝子は会社全体に浸透しました。いまは異種交配を始めています。われわれは少し前に、2つの相対するGUIであるKDEおよびGNOMEと感情的な争いをしていましたが、これも両方をNovellのデスクトップに採用し、選択は顧客に委ねるという方法で解決しました。
--つまり、文化的な面と技術的な面では成功しているということですね。ビジネス的な側面はどうでしょうか。
われわれはかつて、自社の業務内容をなかなか顧客に認知してもらえませんでした。LinuxはNovellという企業を照らす電灯のような役割を果たしてくれました。Linuxを採用したことで、皆がNovellに注目するようになったのです。Linuxの話をすることで、今までやってきたこと--たとえばID管理製品などについて話す機会も得られました。「Novellがそんなことをやっていたなんて知りませんでした」というコメントをよく耳にしたものです。今では、われわれが何をしようとしているかについて、顧客が前よりもずっとよく理解しています。以前は、ID管理について話をしても、なかなか理解してもらえませんでした。われわれは当初、ID管理製品をディレクトリとして販売しようとしていましたが、顧客からは「ディレクトリって一体何だ」という反応が返ってきたものです。これについても、ID管理という言い方できちんと説明すると、顧客は理解してくれます。
--売り上げのほうはどうですか。
そもそもLinuxビジネスに参入した最大の理由は、NetWareのシェア低下に対して何か策を講じるためでした。この戦略がうまくいっているかどうかは、今月Open Enterprise Server(OES)製品が出荷された時点ではっきりするでしょう。われわれは、OESでNetWareのシェア低下に歯止めがかかることを願っていますし、実際そうなると予測しています。売り上げについては、2〜3%程度増加していますが、ただしこのなかには昨年10〜15%減少したNetWareの売り上げも含まれています。したがって、NetWareを除いた場合は売上が10%程度成長していることになります。
--SuSEを買収した目的の1つは、Novellの北米でのマーケティング力とSuSEの技術を統合してRed Hatに追いつくことでした。SuSE製品は北米ではどの程度受け入れられていますか。
Red Hatは、7年から8年分先を行っています。OSというインフラ製品市場で、ユーザが簡単に他社製品に乗り換えるとは思えません。われわれの推進したLinux化の効果はようやく市場に反映され始めたところです。SuSEを買収してまだ13ヶ月しか経っていないのですから。
SuSE Linuxの買収は、われわれが昨年行った最高の宣伝になりました。今年は、他社製品との差別化を図る時期です。Linuxのカーネルはどの製品でも同じものですから、どこで差別化を図るかが問題になります。Novellは世界的なサービス網を持ち、コンサルティング部門も持っています。またファイル、プリント、メッセージング、ディレクトリといったソフトウェアスタックもあります。さらに、かつて独自のUnix(UnixWare)を所有していた強みがあるので、Red Hatが提供できない安心感をユーザに提供できます。また、Red Hatにはない特許ポートフォリオも持っています。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス