--実に多くの人々が情報の創造に参加したいと考えているようですね。人々との関わりから、何を学びましたか。
正直なところ、とても励みになっています。大勢の人々が、しかもそれぞれに強固な信念を持った人々が、プロジェクトを成功させるために友好的に協力している。これは驚くべきことです。
私は長い間インターネットを利用してきました。メーリングリストやUsenetグループにも参加してきましたが、この種の環境では対話は論争に陥りがちです。あるとき、私ははたと気づきました。この面々と議論を繰り返すのではなく、もっと生産的なことをしていれば、今頃は本の3、4冊も書くことができていたのではないか、と。
私はこのとき、共同作業を支援してくれるソフトウェアがあればと思いました。たとえ相手と意見が合わなくても、お互いが持っている貴重な知識を、ほかの人の役に立つ形で提供できたらと。過去ログを探るのは、控えめにいっても骨の折れる作業ですからね。
驚くべきことに、wikiの仕組みはうまくいっています。張り合うのではなく、協力を促す仕組みをソフトウェアに加えることで、人々はすばらしい成果を達成することができるのです。
--Wikinewsプロジェクトも、現在のインターネットメディアを反映したものなのですか。
月並みな言い方ですが、インターネットは成熟しつつあり、その結果、これを実現するための探求や実験的な試みが登場しはじめているのだと思います。
古いブロードキャスト・モデル、つまり少数の選ばれた書き手が、自分のいいたいことを世界に配信するというモデルが完全になくなることはないでしょう。しかし、このモデルはより双方向的なモデルによって脅かされつつあります。新しいモデルでは、各コミュニティが力を合わせて、従来はメディアの領分と考えられてきたものを手がけることになります。
これをどう実現するかは難しい問題です。しかし、メディアがすでに「ブログ界」に対応する必要に迫られていることは確かです。重大なニュースがインターネットから飛び出すこともあれば、オンラインの住民が主流のメディアの記事を批判し、より突っ込んだ調査を行うこともある。これは伝統的なメディアが古くさい偏見にしばられてやろうとしなかったことであり、もっと多くの場合は、個々のニュースの取材に50人もの人間を割くことはできないという理由で実現できなかったことでもあります。従来のメディアではできないことが、ブログでは行われているのです。
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