「市場の支配」を夢見るFirefoxの若き開発リーダー

Paul Festa(CNET News.com)2004年10月21日 10時00分

 Netscapeブラウザが初めて世に出た1994年には、まだ14歳だったBen Goodgerが、いまや同ブラウザの遺産を保存する重要な取り組みで中心的役割を果たしている。

 ニュージーランドのオークランドで生まれ育ったGoodgerは、過去4年間の大半をAOLのNetscape部門と、2003年にAOLから独立したMozilla Foundationで過ごし、MozillaやFirefoxといったオープンソースのウェブブラウザの開発プロジェクトを指揮してきた。

 Netscapeブラウザの初公開から10年目を迎えたいま、GoodgerはFirefoxの開発責任者となっている。Firefoxは、これまでMozillaから出たなかで最高のブラウザとの呼び声が高く、市場で圧倒的シェアを誇るMicrosoftのInternet Explorer(IE)に代わるブラウザとして、ますます人気が高まっている。

--Netscapeに関わるようになったきっかけを教えてください。

 Netscapeの開発に関わる以前に、Mozillaオープンソースプロジェクトに参加していました。私の仕事ぶりがNetscapeの何人かの社員の目に留まり、彼らが私なら十分に仕事を任せられると思ってくれたのです。

--当時はどのような仕事をなさっていたのですか。

 Netscapeは、より多くの標準に準拠したGeckoレイアウトエンジンを使用するためブラウザの再設計を決断し、その後さらにユーザーインターフェース(UI)の作り直しにも着手していました。1999年当時、Mozillaブラウザにはごく基本的な機能しかありませんでした。ウェブページを閲覧するには十分でしたが、さほど洗練されてはいなかったのです。当時は、基本機能を動作させることにエネルギーの大半が注がれていましたが、私はまず最初の自発的な取り組みとしてUIの開発にフォーカスし、またその作業を通じて使われているUIのプログラミング技術を学びました。ですが、結局は新機能を設計することになったのです。

--Mozillaの歴史に疎い我々のために教えていただきたいのですが、Netscapeは1999年にブラウザをどうに設計し直したのですか。

 Netscapeは、「世界中にいる何万人ものオープンソースプログラマーの力を活用するため」に、1998年にCommunicatorのソースコードを公開しました。

 しかし、当時開発中だった製品(Communicator 5.0)が完成に近づいた時、Web Standards Projectと呼ばれるウェブ開発者のグループがNetscapeに対して、旧式の、準拠している標準の数も少ないレイアウトエンジン(4.0に使用され、5.0用に改良された「Mariner」と呼ばれるエンジン)の開発を中止し、もっと新しい、多くの標準に準拠しているGeckoと呼ばれるエンジンを開発するよう働きかけました。そして、Netscapeは熟慮の末、MarinerからGeckoへの切り替えを決断しました。

 しかし不幸なことに、古いレイアウトエンジンと古いブラウザUIとの間で、コードが明確に分離されていなかったため、Geckoに移行するには、ブラウザを完全に書き換える必要がありました。多くの場合、基礎から作り直さなければならず、そのまま流用できたのはJavaScriptなど、ごく一部だけでした。

 (MarinerからGeckoへの)変更は1998年10月26日に実施されました。当時、NetscapeでCommunicator 5.0の開発に携わっていた人々は全員新しいXPFE(Cross Platform Front End)に移行し、XUL(Extensible User Interface Language)が誕生し、Netscape 6への長い道のりが始まり、そしてその後はご存知の通りです。

--XULを使用すると、どういった点でブラウザの開発がやりやすくなるのですか。

 XULはXMLでUIを記述するための1つの方法です。HTMLタグを使ってウェブページを作成するのと同様に、XULタグを使ってメニュー、ツールバー、ボタンなどを書くことで、Mozillaベースのアプリケーションを作ることができます。そのため、ほとんどの場合、一度XULファイルを作成すれば、どのプラットフォームでも同じように見えることになります。

--アプリケーション開発に関しては、おそらくこれらのウェブマークアップ言語が、本格的ななコンピュータプログラミング言語に取って代わるだろうというお考えだったわけですね。それはどの程度まで進んでいますか。

 全般的に見て、これは良い考えだったようです。

 Microsoftは明らかにそう考えています。同社はLonghorn の中心部分をXAMLで記述しています。XAML(Extensible Application Markup Language)はクロムを生み出すためのXMLマークアップであるという点でXULに似ていますが、その方法がXULとは若干異なります。

--Longhornが登場した場合、Mozillaはどう張り合っていきますか。

 現時点では、GNOME OS統合が以前よりもうまくいっています。Firefoxはかつてないほど、GNOME(GNU Network Object Model Environment)デスクトップにうまく適合しています。ほかにもネイティブのルック・アンド・フィール・メニュー、デフォルトのブラウザとしての統合などいろいろとあります

--しかし、現在GNOMEとMozillaとの間に協調関係は存在するのですか。

 現時点では、GNOMEとMozillaとの間に協調関係はありません。現在あるのは、GNOMEがGeckoレイアウトエンジン自体を組み込んだり、我々の側では組込みAPI(application program interface)を管理して、GNOMEがそれを利用できるようにしておくといったレベルの協力関係です。

--Longhornと張り合うのに、それで十分でしょうか。あちらはオペレーティングシステム(OS)とブラウザの統合という壮大な計画を進めていますが。

 我々は(Longhornに)太刀打ちできると考えています。我々は、例えばハードウェア・アクセラレーションや、新しい機能を有効に活用するために、グラフィックシステムを作り直しています。

--あなたはLonghornにほとんど無頓着なようですが、それはLonghornの開発がスケジュールよりも大幅に遅れているからですか。それとも、Longhornの登場後もスタンドアロンのブラウザが優位を保つと考えているからですか。

 LonghornはMicrosoftにとって販売しづらい商品になるでしょう。Longhornは古いタイプのハードウェア上ではうまく動作しませんが、企業にはそのような古いマシンがたくさんあります。企業に対して、これこれの費用をかけてWindowsを最新バージョンにアップデートする必要がある、またハードウェアも一緒にアップグレードしなくてはならないと言っても、顧客の側では手持ちのアプリケーションの新バージョンが動かせるようになるだけですから、これは高くつくことでしょう。

--それでも、Longhornの影響が出始めるのは、それほど先のことではないはずです。いまでさえ、XAMLを使ってアプリケーションを開発している企業があるくらいですから。

 XAMLアプリを開発している企業の数とウェブアプリを開発している企業の数には、かなりの開きがあります。Mozillaを創設したエンジニアのBrendan Eichの言葉を借りれば、「ブラウザは復活する。ウェブアプリの世界ではLonghornは重要ではない」ということになります。

--Microsoftが今後スタンドアロンのIEをリリースしないと決断したことによって、Mozillaにはどのような影響がありますか。

 ユーザーがウェブブラウザを通じて得る経験を大いに改善したいと考えた時に、Microsoftをあてにはできないということがはっきりしました。我々(のブラウザ)はIEに代わる選択肢の1つです。我々はブラウザを無料で提供していますが、そのことも有利に働いています。

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