インタフェースの技術:クエリーフリー、可視化、検索入力支援、近傍検索
検索のインタフェースでは世界中で様々な実験が行われている。検索結果を二次元の地図のように出力するKartooや、多彩なグラフやチャート図に可視化するInxightのVizServerのような事例がある。リストとして検索結果を見せる以外の手法が、検索の種類によっては遥かに有効になる。
入力インタフェースの革新では、よく使う語句が少ないキータッチで入力できる予測入力や、一文字入力するごとにそれに近い入力結果を表示更新するインクリメンタルサーチも、検索にもっと広く導入される余地があるだろう。例えばinterfaceと入力する過程で、int3文字の段階でinternet、intranet、interface、interactionが候補に表示され、interfまで入れるとinterfaceに絞込み確定される具合である。
これらの検索入力手法は、断続的コネクションを使うWebでは技術的に困難があった。一文字入力するたびにサーバに問い合わせを送り画面を更新する必要があるから負荷が高すぎる。OS上で動くインターナルサーチならば、技術的にも実装しやすい。
また、ローカル文書にはWebのようなハイパーリンクがないから、PageRankが使えない。どのようにレリバント(関連度の高い)なコンテンツを探せばいいのだろうか。ひとつの回答を日本の研究者、産業総合研究所の増井俊之氏が近傍検索として示している。
近傍検索とはユーザが着目中の要素に近い情報を芋づる式に取り出すアルゴリズムであり、インタフェースである。例えば、1970年10月14日に私(橋本)は生まれたという事実に着目すると、1年前の1969年10月14日だとか、翌日の10月15日だとか、同じ橋本姓の人間だとか、その日付前後に撮影された写真だとか、受信したメールなどが”近傍”なのである。だから、こうした情報をひとつにまとめて表示する。
「CNETで検索技術の原稿について打ち合わせ」というスケジューラの記録に着目するならば、ここ数年分のCNET関係の打ち合わせや、書いた原稿、担当者の名前、原稿料の情報などを一覧できる。意味がリンクになるということだ。インターナル検索では、PageRank以上の効果を近傍検索は発揮するのではないか。
アフターサーチの技術:サーチエージェント、文書への取り込み、ナレッジベース構築
さて、検索自体の技術を大きく3つに分類してみたが、もうひとつ検索と密接に関わる技術にアフターサーチの技術がある。
検索した後、その結果をどう利用するかに関わる技術のことだ。
例えばライブドアのブログ検索エンジン「未来検索」では、予め登録したキーワードにマッチするブログサイトが見つかると、ユーザにメールでアラートが行われる。める?くる!ブックナビでは、キーワードにマッチする新刊書籍が発売されるとメールが飛んでくるし、OnTVJapanではテレビ番組で同様のことができる。検索はアラート機能と組み合わさることでサーチエージェント化していく。
また、MS Wordの中からAmazonの書籍検索を利用でき、結果を作成文書に取り込めるAmazonリサーチサービス。Microsoft OneNoteのような、検索結果を再利用するための文書作成アプリケーションといった道具のインテリジェント化も期待できそうだ。結局、私たちは最後はこうしたアウトプットを作成するために検索をしているのだから。
アフターサーチの技術競争においては、範囲が多彩で、検索エンジン企業が自社開発するのでは間に合わない。APIの公開によって外部のデベロッパーの協力をどこまで引き出せるかが、鍵となるだろう。
また、インターナルサーチが普及すると、インターナルの世界をいかに充実させるか、がユーザにとっての課題ともなってくる。自分のナレッジベース(知識データベース)を充実させ、使えば使うほど便利なコンピュータに育てていくことが、新たな時代のユーザリテラシーとなるだろう。
検索は原始時代、無限に広がる技術とニーズ
以上、検索の未来を考えるに当たって、4つの技術分野と各先端事例を要約してみた。
要素技術は、
の4つであり、
A×B×C×D=次世代の検索の可能性
である。
勝利の必要条件は最大のインデックスを持つこと。その上で、この掛け算をどう最大化するか、が当面の課題になる。Microsoftはインターナルでは技術的に最大規模を取りえる特権的位置にいる。
次世代のWindows Longhornでは、ファイルシステムにSQLデータベースエンジンを使うことが予告されている。今回発表されたインターナルサーチ以上に、強力で安定した検索ができるようになると考えられている。いますぐインターナルを独占せずとも、Windowsのアップグレードと共に、インターナル検索はデファクトスタンダードを握ることもできるはずだ。
インターナルを梃子にMSNは日本の検索市場でも40%というシェアを取ることができるだろうか。それには、インターナル(デスクトップ)とエクスターナル(Web)の統合による便利の掛け算を成立させるための、何らかの機能を必要としていると私は考えている。インターナル検索はMS、エクスターナル検索はGoogle、Yahooとユーザの棲み分けが起きるようなら、MSNサーチは先行2社を検索全体の市場で追い抜くには至らないだろう。
この記事では、検索にはまだまだ未踏の技術分野とニーズが広がっていることを俯瞰した。MicrosoftのChin氏が言うように、検索はまだまだ原始時代なのである。完成された姿になるには、長い時間と激しい市場競争を経る必要があるだろう。掛け算を最大化する次の一手はどこから登場するのだろう。今、検索技術市場は目が離せない。
|
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス