--The Simsが大成功を収めた1つの要因は、ユーザーが作成したコンテンツをサポートしたことでした。そして、これはビジネス面でも大変優れた判断だったといえます。つまり、顧客に継続的な開発と試験をやってもらうということです。このような極めて巧妙なねらいがあったのですか。
あれは大変計画的なものでした。我々はSims 1を可能な限りカスタマイズ可能なものにするために、恐らく1年は費やしたと思います。この件に取り組まなければ、発売時期を大幅に早めることができたでしょう。我々は危険な賭けをしました。というのは、我々にはSims 1がどの程度成功するかまったく予測がつかなかったからです。もしゲームが大ヒットすれば、ゲームに拡張性を持たせることは将来的に大きな利点となるでしょう。しかし、もしそのゲームを誰もやらなければ、それはすべて無駄な努力になってしまいます。
当時、私はQuakeのコミュニティを見ていたのですが、プレイヤーがモデレータと共に行っていることに大変感銘を受けました。しかし、それはあくまで熱烈なゲーマーがつくる、ごく小規模なグループ内のことです。私は、普通の人よりもやや創造的指向が強く、またゲームを競争手段としてだけでなく他の目的にも使っている人々が構成する幅広いコミュニティに、このダイナミズムを持ち込んだらどうなるだろうかと考えました。しかし、Sims 1を中心にこれほど巨大なコミュニティが形成されるとは夢にも思いませんでした。私は、ユーザーがSims 1のカスタマイズ機能を使って行うことに、ずっと圧倒され続けています。
--ユーザーが作成したコンテンツの中で、何か気に入ったものはありますか。
たくさんあります。なかには大変素晴らしいストーリーもあります。特に大変個人的な内容の作品が素晴らしいですね。大変専門的なサイトも数多く存在します。例えば、キリスト教徒のSimのサイトや14世紀のSimのサイトなど、想像可能なありとあらゆる種類の風変わりな専門分野のサイトです。一例として「7 Deadly Sims(7人の罪深いSimたち)」という大変面白いサイトがあります。そのサイトのコンテンツは全て「7つの大罪」をベースに作られており、暴飲暴食用の台所用品や怠け者用の座り心地の良いソファなどがあります。
--ゲーム産業は娯楽ビジネスのあらゆる分野と同様に模倣されやすいものですが、Simsの類似品は全く出回っていません。その理由をどのようにお考えですか。
私も少し驚いています。今頃はもっと多くの類似品が出回っていると予想していました。多少は存在しますが、The Simsほど洗練された詳細な内容のものはありません。我々はThe Simsを簡単に遊べるようにするために多大な努力を重ねてきました。しかし、遊びやすさの裏には複雑極まりないゲーム構造が存在するのです。
第1作目のThe Simsを開発する上で最も難しかったのは、行動エンジンが様々な状況に対処できるようにすることと、数多くの複雑な行動を極めて簡単なインターフェースを通して利用できるようにすることでした。我々はThe Simsを誰もが遊べるゲームにしたかったのです。行動について膨大な数の可能性をシミュレートする緊急シミュレーションの構築に関しても、これは依然として非常に困難な技術的問題です。よって、我々は競合他社よりも数年は先んじているといえるでしょう。ただし、現時点でより多くの類似ゲームが存在していて欲しかったというのが私の考えです。というのは、より多くの社会志向型ゲームが市場に出回っていた方が、このカテゴリーのゲーム全体の利益になると考えるからです。
--The Simsは、女性ゲーマーの人気を集めたり、ふだんはあまりゲームをしないようなプレイヤーを取り込むなど、ゲーム業界が目指している多くの目標を達成しました。業界はThe Simsの成功から何かを学んだのでしょうか。
たとえば、ある会社が創造的かつ斬新なアイデアを発表しそれが成功したら、他社は「より創造的かつ冒険的なプロジェクトを考案しよう」と考えるべきだと私は思います。しかし、各社はThe Simsの成功を目にしても、そこから離れて何か別の物を創ろうとはせず、「よし、『The Sims』の我々独自のバージョンを作ろう」と言っています。
--The Sims Onlineの経験からどんな教訓を得ましたか。
The Sims OnlineとThe Simsは外見的には大変良く似ていますが、実際プレイしてみると2つはまったく異なります。The Sims Onlineの各プレイヤーは永続的世界の構築に関与します。つまり、プレイヤーは時間を早めることができませんし、1つのアバターしか与えられません。したがって、The Sims Onlineはオフライン版のThe Simsに比べ、創造的エクスペリエンスは遙かに劣ります。
私が学んだ最も重要なことは恐らく、オンラインゲーム向けの別のビジネスモデルを見出す必要があるという点でしょう。私はかなり熱狂的なゲーマーですが、通常、1つのオンラインゲームに加入しても月10ドルは払いません。生涯で恐らく1種類のゲームでしか遊んだ経験のない人たちに、月額10ドルの料金を支払わせるのは至難の業です。ですから私は、加入手続きを要求せず、さらに永続的世界よりも自由度の高い、オンラインゲームのための新しいビジネスモデルが必要だと考えます。
--インターネットの世界で現在行われているような取り締まりや規制が必要になると予想していましたか。
私には他のゲームについて学んだ知識がありますので、現在の状況にはさほど驚いてはいません。ゲームの世界にもインターネットが一般に抱えている問題と非常によく似た問題が存在します。たとえば、プレイヤー同士のつくるコミュニティがあると、そのシステムを試したり、不正侵入を試みたり、あるいはプレイヤーたちの邪魔をするグループが必ず現れます。我々はそのような連中を「グリーファー」と呼んでいます。グリーファーの問題は、オンラインゲームが開始された当初から存在しました。問題は彼らに対する対処法です。上からの警察国家的手法か、あるいはコミュニティに自警させるかです。
--今後の予定は?「Sims 3」は開発されるのでしょうか。次回作にはダーウィンの進化論が導入されるのでは?
我々は現在Sims 2の拡張に取り組んでいます。Sims 2はSims 1に比べ、拡張性が向上しています。しかし私は、さらに次世代が生まれると確信しています。The SimsやSimCityのような人気シリーズを開発したら、さらに新しい作品を作ろうと努力し続けることが重要です。よって、われわれも新作の開発に取り組んでいきます。我々は常に、これまでの作品にとらわれない独創的な作品作りに努めています。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」