国内最大規模級の無料ソーシャルネットワーキングサービス「GREE」に、MSNが共鳴──。マイクロソフトは、来る9月12日(日)に行われる「GREE Night 2.0」へ協賛する旨を発表した。同日、会場ではMSNメッセンジャーに関するニュースも発表されるという。
一会社員である田中良和氏が趣味として開発・運営を手がけるサービスにMSNが関心を寄せる理由とは。マイクロソフト MSN事業部 サービス部 コミュニケーションサービスグループディレクターの丸岩幸恵氏に話を聞いた。
GREEに気づかせてもらったこと
現在、MSNメッセンジャーのユーザー数は約450万人。シェアは国内1位をキープしているものの、米国での広がりを考えるとまだまだ盛り上がりが足りないとマイクロソフトは考えている。この理由のひとつとして、「メッセンジャーとメール、まったく性質が異なるものを同じようにマーケティングしてきたことに失敗があった」と丸岩氏は語った。
知らない人や大勢の人へ気楽にメッセージを送れるメールに対し、メッセンジャーはお互いをリストに登録する作業から始まる。これはユーザーからすれば「半永久的なつき合いを約束した」という感覚につながり、一過性のつき合いが成り立つメールとは明らかに使い方が異なるのだ。
MSNメッセンジャーのユーザーインタビューによると、オンラインでしか知り得ていない人をメッセンジャーに登録するケースはほとんどなかったという。仕事やサークル、友人関係でメールを頻繁に交換し合ううちに、メッセンジャーの方が便利だからと移行し、「友達と常につながっているのが楽しい」という感覚へ発展していくことがわかった。つまり、当初マイクロソフトが考えていたように「メッセンジャーが友人関係を作っていく」のではなく、「関係をより密なものにしたいから、メッセンジャーを使う」ことにユーザーは価値を見いだしていることになる。
そこで注目したのがGREEのコミュニティと、その中で行われているコミュニケーションのあり方だ。特に、知人/友人というリアルな関係の上に成り立ち、オンラインだけでなくオフラインの時間も共有する親和性--オンラインでつながっている人とはオフラインでも会いたくなるし、つながりたくなる--この循環が、メッセンジャーのユーザーシナリオと共通しているのではないかということに丸岩氏は気づいた。
「コミュニケーションサービスはまずオフラインの関係があって、オンラインの関係を持つことでさらに親密になる可能性も大きくなる。マイクロソフトは、これまでそこをあえて掘り起こしていなかったように思います。メッセンジャーだけでは関係が作れませんよね。これは、GREEから気づかせてもらったことのひとつなんです」
コミュニティを対象としたマーケティングも必要
丸岩氏は、Blogに関しても「リアルな友人同士のコミュニケーション手段として成り立つのがBlogの持つ最大のパワーだ」と考える。広い範囲へ発信するよりは、ある一定のコミュニティに入った方が書き手の数が増えるためだ。友人がBlogをやっているのを見て自分も真似したくなり、自分も書き込んでみる。書き込むことそのものが既にコミュニケーションとしての役割を果たす。国内の若いユーザー層へのインタビューでは、「Blogはコミュニケーション。誰かに会う前にBlogに目を通しておくのは普通でしょう。むしろ、見ていないのは失礼に当たるのでは」という発言が目立った。
「GREEではいわゆる名刺交換をした後、オンラインではメッセンジャーやメールでコミュニケーションが発生するでしょう。その人を知るにはGREEに書き込んであるBlogを読めばいい、というのが今の文化に合っていると思う。ネットワーキングサービスはキッカケだし、そこからどうコミュニケーションを発達させていくか。そこにコミュニケーションツールがぽんとあると親切ですよね。そこに、GREEとMSN、両方へのメリットを見いだしました」
では、なぜソーシャルネットワーキングサービスの中でもGREEを選ぶに至ったのか。それは、「何と言っても、作り手である田中さんの顔が見えること」に尽きるという。作り手が見えれば参加者は安心し、管理者に協力したいという動きすら見えてくる。
GREEの「顔を見せたマーケティング手法」を見習い、マイクロソフトは9月1日より、同社執行役 最高技術責任者の古川享氏によるBlog「古川 享 ブログ」と、「窓拭き職人」である「Windows君」の「Windowsな生活」をスタートさせた。いずれも反響が多く、評判は上々だという。
MSNとしては、ブロードなマスマーケティングは従来通り続けていく。「しかし、それに加えてネットワークもしくはコミュニティを対象としたマーケティングにも、より力を入れていきたい」と丸岩氏は語った。
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