最終更新時刻:2008年10月8日(水) 18時08分

Blogの祖、ハーバード大学研究員へ

Paul Festa(Staff Writer, CNET News.com)

2003/03/06 10:00  

 米国で最も古い高等教育機関であるHarvard大学では、インターネット界の最新トレンドを取りこもうとしている。同大学の学生や教員たちがBlog(ブログ)を使えるようにするため、その領域では教祖とも言えるソフトウェア開発者Dave Winerを大学に招いたのだ。

 Harvard大学では、同大学内で立ち上げる新しいBlogサイト"Weblogs At Harvard"の陣頭をとってもらおうと、UserLand Softwareの元代表であるDave WinerをHarvard大学法学大学院のBerkman Center for Internet and Societyに特別研究員として迎えた。Winerは、Tulane大学で数学を学び、Wisconsin大学でコンピュータサイエンスの修士号を取得。Harvard大学では学生や教員に対し、ウェブの内容を日々更新する上での技術面の指導を行う。

 もともとWinerはカリフォルニア州ミルブレエにある米UserLand Softwareの代表を務めていた。UserLand Softwareはコンテンツパブリッシングツールやサービスに特化したソフトウェア会社である。WinerはSOAP、 XML-RPC、RSSや、OPMLといった数々のプロトコルの仕様の開発に寄与しており、インターネット上で最も長く運営されているBlogの1つ、Scripting Newsを立ち上げた人物として、最もよく知られていることだろう。

 現在はマサチューセッツ州ケンブリッジにある事務所で、Harvard大学内に既設のBlogサイトを再編成している。その事務所でCNET News.comのインタビューに答えてくれた。

――初めて目にしたBlogはどのようなものでしたか?

 最初は、見たというよりも私が作ったという感じですね。きっかけは1996年2月、私がWiredの寄稿編集者だった頃、米国通信品位法(Communications Decency Act)に対抗するために24 Hours of Democracy Projectと言う企画を立ち上げたのですが、その時に発生した作業の一部が後にBlogとなったのです。私たちにはその頃スポンサーが付き始め、数々のオンラインサービスの企画が持ちこまれていました。そこで、それらを整理するために逆時系列順で並べてウェブに載せようと考えたのです。しかし始めてみて「これは使える。このプロジェクトが終ったら、この機能を形にできないか検討してみよう」と考えたわけです。

 当時はそれをBlogと呼んではいなかったのですが、ほぼ現在のBlogと同じものです。最初は、UserLand Softwareの製品であるFrontierの機能として作りました。当時、私はUserLandのCEOでしたからね。それから1年後の1997年4月、Scripting Newsというサイトを開設しました。このサイトは、おそらくインターネット上で最も長く運営されているBlogでしょう。少なくとも5本の指くらいには入ると思います。最も長いと言われていたものが実は違っていたという話は、インターネット上ではよくあることですから。

――どのようにしてBlogと呼ばれるようになったのですか?Blogという媒体、あるいはフォーマットはどのようにして進化したのでしょうか?

 毎年Blogは成長しています。この名前を思いついた人は、Robot Wisdomと呼ばれるBlogを運営しているJorn Bargerです。

 現在では多くの人がBlogサイトを開設していますし、私たちがBlogを作りやすくするツールの提供に取り組んでいるので、サイトもどんどん開設しやすくなってきています。また、インターネットも昔に比べて使いやすくなりました。Blogは最終的に電子メールや、文書作成ソフトのような基本的なスキルとなるでしょう。そのうち、作文などと同じになるはずです。だから私は今、大学にいるのです。学生と教員が皆使い方を学び、その人たちがまたその生徒に教えていく。ここでの仕事は、そういう長期的展望の下に準備しています。

――では、Harvard大学法学大学院に来ることになったきっかけは?

 きっかけといっても、あっという間に決まったことですから。私は何年も商業ベースのソフトウェア開発に携わってきていたので、この辺で何か違うことをしたいと思っていましたし、Harvard大学では学内の部門間で情報を共有することに大変興味を持っていました。昨年末、デジタル時代におけるHarvard大学のアイデンティティを確立しようと会議を開催した時にこの企画が持ちあがったようです。Harvard大学は、小さい核の部分と、経営・政治・文学など分散されたたくさんの学校の集合体という、とても大きな大学です。そう言った意味では各部署に分かれている企業と同じようなものなのです。いかに部署同士で共同作業を行い、そして無駄な労力を省くために情報を共有するかを企業は考えますよね。実はここの大学でも同じ問題を抱えていたのです。

 先の会議で挙がった解決策はBlogの持つ機能とほぼ同じでした。そのため、多くの人から「Daveに話を持ちかけてみるべきだ」と言われたそうです。一方で私はたまたまクリスマスシーズンに東海岸側にいましたので、そのままボストンへ行き、そこで特別研究員の話をもらいました。

――それにしても、Harvard大学でまだBlogが立ち上がっていないとは信じがたいですね。

 大学全体を見ればBlogサイトは10個程度ありますが、正直なところどれもまだ初歩的なものばかりです。大学で行われている様々な研究や、その成果をもっと組み込んだものでなければならないと思っています。私は大学全体を任されているのです。Blogへの参加を強制するつもりはなく、Blogをやってみたいと思っている人に参加してもらいたいと思っています。もし内容の充実したBlogサイトが100個できればとても満足だし、きっと大学の皆さんにとっても嬉しいことだと思います。

――Harvard大学ではどんな役割を?

 私はBlogという新しいコミュニケーションツールの伝道師であり、教育者であり、研究者であると思います。私が人に教えるだけでなく、学ぶこともできればいいかなと思っています。ここ何年もソフトウェア開発者としてやってきたので、ユーザー側とのコミュニケーションはほとんどありませんでした。その上、持ちあがる問題のほとんどが技術的なことばかり――これはどうやって動いているのか、このソフトの主な特徴は何か、ソフト同士の接続はどうなっているのか、といったことです。これからは開発者という枠を乗り越えて、ユーザーの反応を見たいと思っています。改善には何が必要なのか、そのための障害は何か、といったことです。その上で社会から学習したものを共有していきたいと考えています。あなた方も取材から学んだことを人々に伝えるということをしているでしょう?

――Webサービスに欠けているものはそれぞれの個性であって、商業アプリではないとおっしゃっていますね。

 企業の提供するWebサービスは、非常に充実していると言えます。お金を動かしたり、商品の売買にインターネットを利用することは何も間違ってはいません。ただ、インターネットの利用価値はそれだけではないですし、こういった使い方はあまり魅力あるものとはいえません。私が考えているWebサービスとは、充実したBlogサイトを開設するために、ライティングツールを使ってサーバアプリケーション同士を接続させる方法なのです。すでに世の中にはSOAP、XML-RPC、RSSやOPMLを使ったツールが出回っています。つまり今は、より多くの情報源から情報を読めるように、Blogやその集合体を作るための便利なライティングツールを作成している状況なのです。

――情報を共有する、という意味においてBlogはどのような影響があったのでしょう?特にジャーナリズムにおいて、どのように影響を与えたでしょうか。

 ある種の業界について、たとえば技術レポートなどがそうですが、報道のプロを大きく超えた感じがあります。

――それは、どういうことですか?

 10年ほど前までの状況を想像してみてください。その頃はまだ産業全体に対して出版物はほんの一握りしかありませんでした。それが今では、Blogを使ってお互いに情報交換をするようになりました。もちろん業界に詳しいプロのジャーナリストもいますが、その数は大幅に減りました。Blogがそのままジャーナリズムとなっているのです。大きな変化を与えたかと聞かれれば、全くそのとおり、と言えるでしょう。大きな事件が起こったとき、報道のプロが伝えることのすべてを信じる必要はありません。もし実際にその状況に関わっている人のBlogを見つけられたなら、私はそちらを読むようにしています。

 英国のニュース番組BBCでは、面白いことをしています。アマチュア写真家に写真を送るように呼びかけているのです。写真が送られてくる数は日に日に増えており、その潮流に乗っていこうとしています。たとえば、コロンビアで起きた大惨事の写真は、プロのジャーナリストが撮った写真ではなかったんですよ。

――プロのジャーナリスト達は、ニュースをわかりやすくするための価値ある情報や、状況、事実背景といった内容をもはや提供してはいないというのですか。

 典型的なニュースの構成は、インタビューで得られたコメントが大部分を占め、前後をうまくつなぎ合わせた上でそこに多少の事実内容を織り込ませたものになっています。もしレポーターなど間に人を挟まないで人々の発言を聞くことができたなら、と思います。ジャーナリズムは高尚な仕事とされていましたが、今となっては、ニュースに対する記者の意見を伝えているに過ぎません。これからはプロの人たちがBlogを使うようになり、さらにまたそこから広がって行くでしょう。

――Blogは教育においても同じように深く影響すると思いますか?また、それはHarvard大学から発信されると思いますか。

 そうですね。間違いないと思います。すでに、私たちのやろうとしていることを詳しく知りたいと言って、たくさんの教育機関から電子メールをいただいています。そしてその多くがBlogについてかなり知識を持っています。Harvard大は普通の大学とは違った、特別な意味をもった大学です。それは、とても影響力のある大学だということです。

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