最終更新時刻:2008年10月10日(金) 23時50分

創業社長が明かす、仮想歌手「初音ミク」にかける想い

島田昇(編集部)

2007/10/23 14:28  

自由は不自由

--「初音ミク」は発売から2カ月弱で1万5000本以上売れており、2万本の大台も見えています。前作と比べ、機能向上以外でヒットした理由を教えて下さい。

 まず、プロの音楽家は実際の人間の歌声と比べて利用するかどうかを判断されるので、当初からプロシューマたちに商品を訴求していくべきだと考えていたことが挙げられます。

 その具体策として、こうしたニッチな商品を効果的に認知してもらうためには、ネットを通じて商品を作っていく過程を出していく戦略がいいだろうと判断しました。前作のときと異なり、ブログも普及していたことから、当社のブログを通じて「人間があれこれ考えながら商品を作っている」ということを前面に出していったわけです。

 また、今回はきちんとキャラクター設定を行いました。なぜかというと、自由は不自由だと考えているからです。

 人間というのはある程度の制限を設けてあげないと、そこで何をしたらいいのか分からないと思うんです。例えば、砂漠に置き去りにされて「好きなところに行っていいよ」と言われるようなイメージです。目印がなければ、どこに行ったらいいか分からないですよね。

 ですから、見た目のイメージや年齢・体重などといったある程度のキャラクターの情報を提示することで、それが弊社のプロダクションと利用者のクリエイションがマッチするための目印になったと思うんです。この目印があったからこそ、歌を歌わせるのはもちろん、そこに画像や動画なども加わり、利用者たちの手によってキャラクターの深みが増し、さらにさまざまな歌を歌わせるという好循環に向かったのではないでしょうか。

 正直、コンピュータに歌を歌わせることがこれほど一般の人たちに響くというのは、新鮮に驚きです。ヴァーチャル・シンガーはヴァーチャル・インストゥルメントの延長線上にあるわけですが、一般の人たちを含めて、この分野がこれほどの興味を持って受け入れられたということはなかったと思います。

--成功のポイントはブログと利用者の協力ということですか。

 人間はそもそもプロシューマだと思うんです。原始時代から、自分たちでモノを作り、消費しているわけですから。しかし、個人ですべてを行うのは効率が悪いので、分業が進み、都市が形成され、経済システムが構築されました。

 ただ、この一連の人間社会の発展は、CGM(消費者生成メディア)の登場で折れ曲がったような印象を持っています。そもそもプロシューマだった人間が、生産者と消費者に分かれ、なぜかそこには大きな溝までできてしまっています。

 その違和感が顕在化し始めており、CGMの登場をきっかけとして、人類の歴史をさかのぼるというような動きが生まれているのではないでしょうか。例えば、著作権というテーマで考えれば、「クリエイティブコモンズ」のようなものができ、生産者と消費者の切り分けを気にせずに著作物を活用していこうというような流れです。

 こうした流れは都市の見直し、さらには経済システムの見直しというところまで進むのではないでしょうか。おそらくCGMの本質は、「みんなで何かを作って楽しいよね」というところにあるのではなく、社会全体の在り方を変えていくというところにあると、わたしは思っています。

「ネットの住人が勝った」

--今後の事業展開について教えて下さい。

 当社の立ち位置はメタクリエータだと考えています。つまり、クリエータとは絵を描く人も音楽を作る人も文章を書く人もすべてクリエータだと思うのですが、こうしたクリエータが創作しやすい環境を生み出すということです。

 「初音ミク」もそうですし、音楽家や声優などに向けて録音した楽曲や自分の声をブログに貼り付けたりQRコードにして名刺に貼り付けるサービス「VOON」もそうです。こうしたCGMの加速を後押しするサービスを提供していくことで、会社としての収益性向上ありきではなく、利用者に喜んでもらった結果、間接的に収益が付いてくるという「収穫を採る」という考え方でビジネス展開していきたいと考えています。

 また、音楽活動をしている人のほとんどは、本質的にはお金を儲けたいから音楽をしているわけではなく、音楽が好きで、自分が作った音楽を人に認めてもらいたいから音楽活動をしているんだと思うんです。ですから、儲かるか否かという評価軸のプロの音楽業界に是が非でも入ろうと考えるのではなく、ネット上でも音楽活動をする根っこの欲求は満たせるという環境を、作っていきたいという思いもあります。

--CGMを加速させていきたいという思いの一方で、東京放送(TBS)がバラエティー番組内で取り上げた「初音ミク」の放送は、批判とも誹謗中傷とも受け止められる内容でした。率直な感想をお聞かせ下さい。

 結局のところ、「ネットの住人が勝った」と感じています。たとえ影響力が高いテレビで報道されたとしても、偏見めいた内容はネットを通じた民意により調整しうるということを実感できたからです。

 今回の件を通じて、人は本質的に事実を知りたがっているだけではなく、伝えたがってもいるということも改めて分かりました。ネット社会においてはすでに、報道機関も政治家も、常にその行動の是非を問われる環境になったと思っています。

--すべてのCGMに言えることですが、著作権という問題があり、これを無視したコンテンツが多数見受けられるという、目下の課題もあります。

 確かに、そういった課題はあります。ただし、あるギタリストが著作権違反をしていたとしても、使われたギターのメーカーに罪が問われるということはありませんよね。「初音ミク」もそれと同じことだと思っています。後は使っていただく方のモラルの問題としか言えません。それと先ほど触れた、現行の著作権ビジネスが今の時流に合っているのかどうかという問題もあるかと思います。

 ただ、そういった問題の一方で、非常に質の高いオリジナル曲も多数、制作していただいております。こうした質の高いものがどんどん増えていき、それが新しい秩序を作り、モラルの問題を是正していくということも、CGMの世界では起こりうることだと考えています。

--直近では「初音ミク」を含め3キャラクターを発売する予定ですが、それぞれどのようなコンセプトで作られているのですか。

 それはちょっと(笑)。ただ、12月末に発売する次回作は11月の上旬から告知していく予定なので、それまでお待ちいただければ。

訂正

 TBSの「初音ミク」に関する放送内容に言及したくだりで、TBSが謝罪のコメントを発表したと記載しましたが、事実と異なるため削除しました。お詫びして訂正します。

追記

 改めてTBSに「初音ミク」の放送についてコメントを求めたところ、「謝罪のコメントを出す予定はない。具体的にどの辺が問題なのか指摘してもらいたい」とした。

 TBSは10月14日、「アッコにおまかせ」の放送の中で「初音ミク」を紹介。商品の内容よりも利用者の言動に注目し、番組終了間際には職業差別とも取れるTBS側のコメントがあったとして、ネット上で批判が相次いでいた。

 これを受けてクリプトン・フューチャー・メディアは10月15日、自社のブログで「10月14日のテレビ放映に関しましてご報告とお詫び」とのコメントを出していた。

特集

「ソーシャルメディアキャンペーン」の半数は失敗--アナリストが指摘する理由
多くの企業がソーシャルメディアキャンペーンを計画している。しかし、ガートナーによると、キャンペーンを始める理由が明確になっていなければ、失敗に終わることになるという。
人工知能による会話マーケティングの可能性
日産NOTEのウェブサイトがおもしろい。人工知能を用いて、ユーザーの質問にCMでおなじみのキャラが反応してくれる。裏側で実現しているのは、PtoPAが開発したソフトウェア「CAIWA」だ。同社はこれをウェブマーケティング分野でも活用しようとしている。

オピニオン

■インタビュー

Windows VistaにとってXPはライバルか?--マイクロソフト グローバルマーケティング担当Brad Brooks氏Windows VistaにとってXPはライバルか?--マイクロソフト グローバルマーケティング担当Brad Brooks氏
コンシューマー市場向けの取り組みを強化すると発表したマイクロソフト。日本におけるWindows VistaやWindows Media Centerの現状をどう見ているのか、コーポレートバイスプレジデントのブラッドブルックス氏に話を聞いた。
「iPodを日本で一番売りたい」--ビックカメラ有楽町店に聞く新iPodの魅力「iPodを日本で一番売りたい」--ビックカメラ有楽町店に聞く新iPodの魅力
発表後初の週末となった9月13日に、新iPodファミリーの店頭イベントを開催したビックカメラ有楽町店本館で、店長の石川勝芳氏に、iPodの販売状況と店内での取り組みについて伺った。

■コラム

進化するユーザビリティテスト〜「ユーザー行動観察調査」の効果・効能進化するユーザビリティテスト〜「ユーザー行動観察調査」の効果・効能
近年のウェブサイトリニューアルプロジェクトでは「ユーザビリティテスト」を実施することが当たり前になってきたようです。今回は、単なる「使いやすさ調査」を超えた「ユーザー行動観察調査」の効果・効能を紹介します。
“オトコの遊びゴコロ”をくすぐるロマンたっぷり「自動車ケータイ」“オトコの遊びゴコロ”をくすぐるロマンたっぷり「自動車ケータイ」
香港や中国のケータイショップでは、「おぉっ!こりゃかなりいける!」とワクワクしてしまう怪しいトンデモケータイに出会うことがある。そんな魅力あふれる製品の1つが、今回ご紹介するケータイである。
ソフトバンク株価の下落加速--iPhone一巡し資金繰りを懸念ソフトバンク株価の下落加速--iPhone一巡し資金繰りを懸念
日経平均が約4年10カ月ぶりに1万円の大台を割り込む中、ソフトバンクの株価が、全般相場の低迷にも増して下落が加速している。

企画特集

ネットと家電をつなぐチャレンジ「Life-X」
第一題:ライフログ・シェアリングサービス「Life-X」の第一印象は?
エンタメCGM「gooメーカー☆メーカー」エンタメCGM「gooメーカー☆メーカー」
【第2回】メーカー/占いのコンテンツを作ってみた!

ブログネットワーク

アルファブロガー

外資系エグゼクティブの日々I am Jamming!
外資系エグゼクティブの日々
クロサカタツヤの情報通信インサイトグッバイ、レバレッジ!(1)
クロサカタツヤの情報通信インサイト
末吉隆彦 ロケーションウェアの「空」と「実」9月イベントお知らせ
末吉隆彦 ロケーションウェアの「空」と「実」
ケータイ時代のスタンダードiPhonista Nightの事後報告
ケータイ時代のスタンダード
江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance新サービスをローンチしました
江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance
鈴木健の天命反転生活日記パラレルワールドとしての電脳コイル
鈴木健の天命反転生活日記

読者ブロガー

将来のPC業界パワーバランス変形マウス、Arc Mouseレビュー
将来のPC業界パワーバランス
IT業界(笑)最底辺層生活オトナになるということ
IT業界(笑)最底辺層生活
夢幻∞大のドリーミングメディア福祉国家の失敗〜40年前の「断絶の時代」を読む(3)
夢幻∞大のドリーミングメディア
Life with Mac and more.さあ来い!Silverlight 2
Life with Mac and more.
コミュニケンシュワ
コミュニケン

リサーチ

■リサーチコラム

薬事法規制の厳しい健康食品に代わり、増え続ける化粧品メーカー
薬事法規制が厳しくなる今、特に規制が厳しい健康食品にかわって化粧品を販売しようとする企業が増えている。そこで、覚えておきたい化粧品と薬事法の関係について簡単にまとめた。
携帯電話の待ち受けに関する調査--最も利用される画面は「自分で撮影した写真」
携帯電話の待ち受け画面に関する調査を実施したところ、10・20代は飽きやすく待ち受け画面を頻繁に変更する傾向にあり、30・40代は季節感や臨場感を重視することが明らかとなった。
電子マネーによるライフスタイルの変化に関する調査--電子マネーコアユーザーは、高所得者層
電子マネーによるライフスタイルの変化に関する調査したところ、電子マネーを活用するのは高所得者層に多く見られた。また、1度に1万円以上チャージするユーザーは10%強であることも明らかになった。

■調査レポートダウンロード

金融不安の市場に、IR活動は何を頼るか!?
CMS未導入企業300社へのアンケート 担当者のホンネを徹底追求

■調査発表

【ゲームクリエイターの方へ】攻めの開発体制を敷くAQインタラクティブ社の中途採用・求人情報をレポート
Alibaba JAPAN、カー用品店に関する調査 カー用品専門店の認知、利用ともトップは「オートバックス」
調査結果「携帯OS『Android』認知度調査、6割が『知らない』 〜ユーザー期待のメーカーは?」

CNET Japan セレクション

ココが変わった、新型「ニンテンドーDSi」--「ニンテンドーDS Lite」と比較
任天堂が11月1日に発売する新型ゲーム機「ニンテンドーDSi」はどんな点が新しいのか。既存のニンテンドーDS Liteと比較するとともに、新機能を紹介する。
フォトレポート:本体が分離するNTTドコモの「セパレートケータイ」の謎に迫る
NTTドコモは家電展示会「CEATEC JAPAN 2008」において、端末が2つに分離できる携帯電話「セパレートケータイ」を展示している。どのような仕組みなのか、何ができるのかを、写真で紹介する。
話題のスマートフォン、写真で見るBlackBerry Bold
RIM製スマートフォン「BlackBerry」の新モデル「BlackBerry Bold」を2008年度第4四半期にも発売すると発表したNTTドコモ。話題のBlackBerry Boldを写真で紹介する。
こんなものもありました--CEATECで見つけたオモシロ新技術たち
幕張メッセで開催されている展示会「CEATEC JAPAN 2008」では、幅広い分野の最新技術が一堂に会している。ここではその中でもユニークな新技術や展示を紹介する。
「iPhone 2.2」アップデートの概要が明らかに--App Storeのインターフェースなど変更
アップルは、新たな「iPhone 2.2」アップデートのリリースに向けて準備を進めている。Safariに加え、App Storeのインターフェース変更などが予定されている。
ケータイはまだまだ進化する--CEATECで見た未来の技術
幕張メッセで開催されているデジタル家電の展示会「CEATEC JAPAN 2008」では、携帯電話関連の新技術が数多く展示されている。その様子を写真で紹介する。

今日の見どころ

自動車の未来を垣間見る--2008年パリモーターショーのコンセプトカー

2008年度グッドデザイン賞が発表--環境を意識した新基準も

GMのハイブリッドカー「Chevrolet Volt」、パリモーターショーに登場

レビュー

今週の新製品総チェック:新PS3が登場!ニコンが発表した映像製品「UP」とは?
「東京ゲームショウ2008」が10月9日から開催され、新PS3やXboxの新作ゲームなど、ゲーム機の大型発表が相次
[レビュー]2011年画質を備えた高画質、多機能Blu-ray--ソニー「BDZ-X95」
ソニーのBlu-ray Discレコーダー新製品が登場した。2007年から引き継がれる「やりたいことから選ぶ」シリー
今週の新製品総チェック:よりモバイルPCとして進化した「Let's note」が登場
松下電器産業の「Let's note」、デルのデスクトップPCとPC新製品が数多く登場した。Let's noteは9時間駆動
今週の新製品総チェック:フルサイズCMOS搭載のキヤノン「EOS 5D Mark II」が登場
キヤノンからもフルサイズCMOSセンサを搭載した「EOS 5D Mark II」が登場した。合わせてコンパクトデジカメ
今週の新製品総チェック:第4世代iPod nano登場、ソニー「α」、松下「LUMIX」に新機種も

CNET_ID

メンバー限定サービスをご利用いただく場合、このページの上部からログイン、またはCNET_ID登録(無料)をしてください。