たとえば、ECサイトでPCを販売する際に、液晶の大きさやCPUの性能などのスペックを掲載しますよね。でも、新しい会社がそれまでとはまったく違う特性を持った製品を出した場合、そのスペックが既存のデータベースに入らないんです。こうなると、新しい属性を追加しないといけなくなり、関連するシステムすべてを変更する必要が出てきます。
商品データベースであればまだましなほうで、鳥インフルエンザのデータのように、数分おきに全世界の研究者から新しい属性を加えてくれという要望が上がってくると、データベースそのものが作れないんです。今はエキスパートの人間が手書きの表でまとめている。これではリアルタイム性も低いし、管理も大変になります。
そこで、私が注目しているのはこういったアンストラクチャードデータを扱えるインデックスファブリック(IFX)という理論です。
編集部注:インデックスファブリック理論は2001年9月、Brian F. Cooper、Neal Sample、Michael J. Franklin、Gisli R. Hjaltason、Moshe Shadmonの5名がデータベース関連の会議「VLDB(Very Large DataBase)カンファレンス」において発表したもの。ツリー型の構造を採ることで、セミストラクチャードデータと呼ばれる不規則もしくは構造が随時変わるようなデータを扱える点が特徴。
IFXで狙っているのは、例えばDNAの解析分野ですね。人間の遺伝子の地図情報は判明しましたが、たんぱく質の構造についての情報はアンストラクチャードデータですので、その構造解析をするためのデータベースが作れないという問題があります。
このほかバイオマーカー(健康状態を把握するための指標。糖尿病の場合、血糖値がバイオマーカーになる)にIFXを適用すれば、がん治療に役立てることができます。がん治療の薬として抗がん剤がありますが、実際に効く人は全体のごく一部で、逆に副作用が命を縮めることもあります。がんのバイオマーカーをIFXによって解析できれば、その薬が誰に効いて誰に効かないかが分かるようになります。
PUCはハードウェアとソフトウェアが融合する必要があります。ソフトウェアの性能を最大化するにはハードウェアの設計が重要になる。逆もまた真です。ハードウェアに関して現在世界で最も精密なテクノロジーを持つ国は日本です。ですから、PUCのソフトウェアを開発する企業は日本に来ざるを得ない。
ベンチャーが技術開発をする上ではテクノロジーリスクとマーケットリスクという2つのリスクがあります。テクノロジーリスクは、想定した技術が実用化するリスク、マーケットリスクはその製品が市場に受け入れられるリスクです。このうち、テクノロジーリスクは特に大きいものです。
こういったテクノロジーリスクを持つ企業を傘下に抱えると帳簿上は大きな赤字がでるので、経営が失敗しているように見えてしまう。短期的な利益を求めるファンドにとって、こういった企業への投資は避けたい。そのためいま米国では、こういった企業に投資できる人がいなくなっているんです。
PUC関連の起業家は世界中にいます。だから、研究開発はどこでやってもいいが、PUC企業の法人籍は日本に置くようにさせたいと思っています。そしてリスクキャピタルに資金を供出する場合には税制控除をする仕組みが日本にできればいい。
政府はいまこういった産業振興に補助金を出していますが、それでうまくいった例は少ない。この仕組みであれば民間の資金で賄えるので、政府の歳出削減にもつながります。
ヘッジファンドに違和感を持っている人は多いと思います。ただ、その理由を理路整然といえる人がいないというのが現状ではないでしょうか。
いま、奴隷商人を格好良いと思う人はいないでしょう。しかし、当時は最先端のビジネスでした。黒人を連れてくるというのは、ほとんど原価がかからないし、当時は法律にも触れていなかった。非常に利益率の高いビジネスだったんです。ただ、一般の人たちは当時から変だと思っていました。そしていまや、人権面から見て非合法だということで統一見解が取れています。
ヘッジファンド、特にアクティビストと呼ばれる人たちの活動はこの状況に近いといえます。
ヘッジファンドの市場が小さいときには、彼らの活動にも経済合理性があります。例えば1000億円規模の市場があったときに、50億円程度のファンドであれば、ほかの人たちをあおって株価を上げて自分たちが売り抜けるということが可能です。しかし、市場の800億円もヘッジファンドやアクティビストが占めてしまうと、自分たちが株式を売ろうとすると株価が下がる。逆に残りの株式を買おうとすると株価が上がってしまう。ある一定以上の規模になると、このビジネスモデルは破綻してしまうんです。
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