まずシリコンバレーでバズを作れ--アレン・マイナー氏が日本のベンチャーに望むこと

岩本有平 (編集部)2011年06月21日 11時00分

 投資事業やソリューション事業、コンサルティング事業などで企業の成長を支援するサンブリッジ。これまでマクロミル、ガイアックス、オウケイウェイヴ、アイティメディア、米Salesforce.comなどの投資先のIPOを実現したほか、スタートアップ企業の支援などを手がけてきた。

 そんなサンブリッジの創業者で代表取締役であるAllen Miner氏は2010年12月、文字通りに会社を一新。創業時同様、スタートアップ企業への支援体制を整えた。2010年末から米クラウドサービスの日本進出を支援しているほか、5月からは起業家向けのネットワークイベントも定期開催。創業期の起業家との交流も積極的だという。日本のITベンチャーを黎明期から見てきたMiner氏は、現在ベンチャー企業を取り巻く環境をどのように見ているのだろうか。

--2010年末以降、スタートアップ企業の支援事業を更に推進しています。どうしてこのタイミングだったのでしょうか?

Allen Miner氏 サンブリッジの創業者で代表取締役であるAllen Miner氏

Miner氏:2008年に拠点を米国に戻してから、シリコンバレーで日本のベンチャーが入りやすいコミュニティを作ってきました。そしてある程度その流れができました。そこで日本側でも、サンブリッジの創業期と同じように、スタートアップ企業と付き合っていきたいと考えるようになりました。

 かつてはTwitterも「140文字のコミュニケーションで何ができる?」、Salesforce.comも「クラウドを信じているというのはバカではないか?」と言われ、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)もクラウドも否定される雰囲気でした。しかし今ではクラウドのサービスも、それを扱うスマートフォンやタブレットが続々登場しています。ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)にもリーディングプレーヤーが出てきた。90年代にエンタープライズの世界で言われていた「Anywhere」「Anytime」「Anyplace」「Anydata」といったことは実現しつつあります。

 そんな時代になっても、日本の若いベンチャーでシリコンバレーに来るのはわずか一部。また、いざ「シリコンバレーに行く」と言う企業があっても、IPO直前だったりします。そのような会社は増収増益を求められ、海外展開など後になってしまいます。

 ですが最近、会社を興す段階で“世界に通用する”と思う技術があるのであれば、シリコンバレーから発信しないといけないと気付きました。これは非常に悔しいことですが。

 よく「日本のベンチャーはダメだ」と言われますが、そうではありません。たとえ米国で流行しているサービスと同種のサービス、もしくはさらに面白いサービスを作っていても、各国の言語に対応しても、日本で流行すれば結局日本のメディアが書き、日本の中で普及するサービスになります。ですが海外では知られないままです。

 シリコンバレーのアドバンテージは、世界中の人が「おもしいろことが生まれる場所」という思い込みがあることです。世界に広げたいなら、まずシリコンバレーのメディアでもバズ(話題)を作らないといけないと思います。そのお手伝いができないかと思いました。

 もう1つ理由があります。我々が投資した米Salesforce.comの日本法人である、セールスフォース・ドットコムが成功しました。それが米国でも評価されており、アジアへ進出したいクラウドベンダーが我々とコンタクトを取るようになってきました。

 そこで、日本でクラウド事業を展開したい若い企業が集まる場を作りたいということもあります。クラウドで人材管理ソリューションを提供するシルクロード テクノロジーや出張経費管理ソリューションを提供するコンカーがその例です。

 我々は、クラウドソリューションをシングルベンダーで提供するのは難しいと考えています。CRMはセールスフォース、人材はシルクロード テクノロジーといったように、クラウドソリューションをベストオブブリードで提供していきたいと考えています。

 ベストなソリューションというのは、マーケットによっても違います。米国でトップの企業であることが大切なのでなく、それぞれの分野で日本のニーズにフィットする企業、日本のビジネス文化に理解のある経営陣と組んでいきたいと考えています。

--創業期のITベンチャーと出会う機会を増やしたいということですが、ここ数年の日本のベンチャー市場についてどのように見ているのでしょうか?

Miner氏:かつてSalesforce.comは、60億円以上を調達し、そのうちの30億円でデータセンターを作りました。しかし今はMac1台でiPhoneアプリを作り、App Storeに出すだけで世界展開できます。ITで大きな成功を手に入るために、それほど資本がかからなくなっているということです。

 そういう中で米国ではY Combinatorが出てきたり、日本でもネットエイジの西川(潔氏)さんのようにスタートアップ企業に少額の投資をする投資家が出てきました。数カ月の生活費で商品が作れるようになった今、発想力や行動力が今まで以上に重要になっています。

 日本のベンチャーが持つイノベーション、経営能力は高く、決して米国に負けていません。しかし、前述のとおり、シリコンバレーに世界が注目しているのは否めないことです。なのでシリコンバレーでバズを作らなければいけません。

 我々はPlug and Play Tech Center(シリコンバレーにあるインキュベーション施設)に3年前から席を用意し、日本企業がシリコンバレーに入っていけるようさまざまなイベントなどを行っています。

 同施設では自分の事業をアピールする場として「iExpo」というイベントがあるのですが、日本からネットオフやパンカク、モルフォ、フィジオスといった企業を紹介しました。イベントでWinnerやFinalistに選ばれ、シリコンバレーでの評価を得た結果、帰国後に資金調達をスムーズに行えたという企業もあります。

--日本では、米国のような大規模な買収劇もなく、IPOするIT企業はここ数年きわめて少ない状況です。起業家は何をゴールととらえるべきでしょうか?

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