PDFでも急成長するアドビの日本戦略、次の一手は - (page 2)

別井貴志(編集部)2005年04月19日 21時18分

--エンタープライズ向けAcrobatの進化はどう進めるのか

 Acrobatとポリシーサーバを連携させることで、例えば一度受け取ったPDFを開いたあと二度と開けなくするなど、非常に細かいPDFのアクセス権を個別に設定できる。電子署名も古くから導入しており、ダイナミックなセキュリティ管理が可能なため、4月1日の個人情報保護法の施行が動機付けになり、商談がここに来て非常に多い。

 個人はPDF作成が主だが、企業や組織ではそれは一般化している。そのため、企業では次のニーズが生まれている。複数の人たちで共有したり、人から人へPDFが渡り歩きそれがビジネスをサポートしたりという場合に、どのような管理方法が適しているのかといったことなどだ。Acrobatの上位版には、複数人にPDFを渡してコメントを書いてもらって集め、そのコメントだけを大元のPDFに集約させる「レビュートラッカー」という機能などを搭載しているが、こうしたレビューや承認、認証などの機能を強化isテイクことになるだろう。

--これまではIllustratorやPhotoshopに代表されるように、どちらかといえばクリエイター色の強い企業だったと思うが、Acrobatによって一気にビジネス色も強まった。こうした中で、両面に通じる部分もあるウェブアプリケーションや企業ウェブの構築などの分野は手がけないのか。

 「ウェブ」という分野で見れば、確かに重なる面はあるだろう。アドビはクリエイティブな部分を根幹にしてきたが、これをどこまで広げるかということになると思う。これについては、印刷物やウェブ、電子ドキュメントなど、メディアの違いにとらわれずにクリエイティブなコンテンツを手がけていくという確固たる方針を持っている。この方針でいけば、ウェブについてはウェブオーサリングツールは提供していくが、ウェブアプリケーションやウェブ構築ツールまでを提供するかどうかは非常に微妙な話になる。

 ウェブサイトの見栄えについてはアドビのツールで完全にサポートする。片や企業内のウェブについてはデータトランザクションのユーザーインターフェイスとしてのウェブページは必要とされている。ただし、そこでは見栄えよりも、どういうデータのやり取りを行うかの方が重要だ。

 ブラウザーを通じた画面だけを見れば、両方ともオーバーラップするように映るかもしれないが、その裏をアドビ的にひもとけば、クリエイティブなオーサリングに集約される部分と、ビジネスに対するトランザクションに集約される部分とに分かれる。

 そのかぎりにおいて、企業のウェブサイトの構築までを、私たちが新規に参入して直接手がけることはないだろう。ビジネストランザクションという面では、ポータルを構築するツールはすでにたくさんあるし、仮に手がけるとしてもそうしたところと連携するのが、アドビにとっても顧客にとっても一番いいのではないか。

--それでは、競合はどこだと捉えているのか

 個別の製品単位での競合はあるが、企業として常に売り上げやシェアを争っている競合他社はいないと考えている。アドビは他者があまり手がけていない分野を狙って事業化し、その市場を大きくしていくというのが戦略の根本だ。すでにある程度できあがっている市場に新規参入して、相当な労力を使ってシェアを獲得するというよりは、時間はかかるだろうが自ら新規分野を開拓して育てていき、結果的にその市場でトップになっているということだ。こうした意味で、企業として真っ向からぶつかるところはない。

 アドビがずっと念頭においているのは、人であれ企業であれ、コミュニケーションの質を向上させていくことに携わるということだ。世の中のコミュニケーションの質は向上してきていると思う。これは、個人の動画を利用したコミュニケーションでも、ビジネスのためのセキュアなコミュニケーションでもなんでもいい。そうしたコミュニケーションに、およそアドビが貢献していない部分はないというようにしていきたい。

--コミュニケーションという意味では、携帯電話の分野とは縁が薄い気がするが

 まだ、そのとおり遅れている。あまりにも日本の携帯電話やモバイルの進化が早すぎることがその背景の1つだが、アドビも対応の遅れは気がついており対応を強化している。その1つの例が、NTTドコモの今後の端末にPDFビューワが搭載されることになったことだ。ただし、単純にビューワを搭載するだけに甘んじているわけではない。携帯電話を含んだモバイル分野にフォーカスした研究開発グループを独立させ、次の世代の技術開発を進めている。

--最後に、米国で4月4日に「Creative Suite 2」が発表され、5月に発売される見込みだが、日本での予定は

 日本で発売するのは当然だが、まだ内容や時期は未定だ。ただ、アドビでは米国で提供された後に可能な限り早期に世界展開することを目指しており、実際にそのタイムラグは短くなってきている。昔は半年かかったり、1世代スキップして提供するようなこともあったが、最近は1カ月半から2カ月で日本でも発売されている。

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