いくらIT投資を継続しても成果が出ていなければ、IT投資は無意味なものになる。むしろ投資分だけ、かえって損失になるはずだ。さらに足もとでは、4月以降は、中小企業を取り巻く環境が一層厳しくなるという不安要素を大原氏は指摘する。
「この2年ほどは、金融機関に対し、中小企業からの返済について負担軽減を求めている、金融円滑化法が適用されてきました。特例処置の間に、金融機関が少しずつ損失処理をして、問題が先送りされているに過ぎない、いわば対症療法です。ただ同法は、この3月で期限切れになります。以降は各企業に個別に再生計画を立てさせることになりますが、現状はシステム投資どころではない、深刻な状態に陥っている企業もあるでしょう。経営者が賢くならなければ、企業淘汰の波は一気に広がっていきます」と大原氏。
「問題なのは、中小企業は、ITを導入しても、その効果測定をしていないところがほとんどだということです。
IT導入で売上を拡大できるということは、きちんとシミュレーションができていて、IT導入しなかったら、これほど売上はなかった、というような分析ができるということ。相当にレベルの高い企業でなければ、こうした測定というのは難しいことなのです。
それができるためには、ビジネスだけでなくITも、ある程度分かっている人材が鍵になります。ただ、スペシャリストである必要はなく、もちろん、プログラムが書けなくてもかまいません。しかし、少なくともこの双方を理解できていなければならないのは社長でしょう。システム導入などが不可欠ではなかった時期には、そうは言えませんでしたが、いまは状況が違います」(大原氏)
だが現実には、経営トップがITの重要性を理解していないため、結果として、「とっくに保守期限の切れているパッケージの会計ソフトを、いつまでも使い続けているような話も多い」という。「大手の例になりますが、グループ全体でSAPのERPを導入しようということになったものの、資本関係が緩く、すべてSAPにすることができない。あげく財務部門だけSAPを用い、業務システムにはレガシーが存続するという、普通では考えられない事態も耳に入っています」
では、こうした状況を、どうすれば打開できるのだろうか。そのために大原氏が提示する思い切ったチャレンジへのキーワードは、”自社の既存のフローへの固執”だ。この真意については、後編で語ることとしたい。
記事は後編に続く。ダイジェストは以下の通りだ。
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